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#映画感想文201『非常宣言』(2021)

映画『非常宣言(原題:Emergency Declaration)』を映画館で観てきた。

監督・脚本がハン・ジェリム、出演はソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン、キム・ナギル、イム・シワンという豪華なキャストが揃っている。それもそのはず、第74回カンヌ国際映画祭正式出品なので、韓国代表という意図で作られた作品なのだと思われる。

2021年製作、141分、韓国映画である。

リュ・ジンソク(イム・ジワン)は、冒頭から、あまり話の通じないヤバい人で、自分が乗るべき飛行機を物色している。なるべく多くの人が乗る便をチョイスしたい。ウィルステロの被害者に適した人を探し回っている。不穏で不気味で気持ちが悪い。シングルファーザーのパク・ジェヒョク(イ・ビョンホン)は、運悪く彼にスーツケースのタグを見られ、ハワイに行くことを知られてしまう。

近所のヤバいおじさんが、英語でテロ予告動画をアップしたと子どもたちからの通報を受け、ク刑事(ソン・ガンホ)は、子どもたちのもとに行く。今日から妻は2週間のハワイ旅行に出掛けてしまうので、ちょっと寂しいなという中年のお父さんである。

というわけで、飛行機の中はイ・ビョンホン、地上はソン・ガンホという役割分担のもと、物語は進んでいく。

リュ・ジンソクが作ったウィルスは、感染すると、水疱ができ、体が少し痒くなり、吐血してしまう。粉状のもので、空気感染する。つまり、飛行機に乗っている人は、パイロットを含め、全員陽性者なのである。

前半は、飛行機の中で全員が陽性者になるまでの過程が描かれ、後半はこの飛行機がどこに着陸できるかが問題になってくる。燃料の問題もある。本来の行き先であるハワイのホノルルはアメリカ政府に着陸を拒否され、飛行機は仁川空港に戻ることになる。

そして、某○本の航空自衛隊が、成田上空でガンガン威嚇射撃するので、ちょっと笑ってしまった。未知のウィルスが乗っている飛行機ではあるが、民間の航空機にそこまでするか、と。しかし、パイロットの顔が真っ黒で表情がわからないところが、何とも憎い演出であった。これも、粛々と仕事をする公務員の一人である、という描写なのだと思われる。

本作では、韓国の国土交通大臣が女性で、チョン・ドヨンが演じているのだが、その瞬間瞬間で決断をしなければならず、何度も窮地に陥る。三番目の主人公とも言える。彼女は、「公務員は責任を取るためにいるのだ」という信念があり、自国民を救うためにどうすべきかと真摯に向き合っている。自分の保身や立場を優先する人ではない、という描かれ方で、これは政治家に「こうあってほしい」という願いが込められているように感じた。

そして、身内すら敵になる、というSNS描写はリアルだった。韓国に限らず、どこの国でも、あのような主張をする人たちは出てくるだろう。

大味なんだけれど、いい映画だった。

ソン・ガンホは、やりすぎお父さんで、イ・ビョンホンは途中からトム・クルーズ感が出ていた。元国土交通大臣になってしまったチョ・ドヨンが、海辺でしゃがんでカモメを眺めるシーンが強く印象に残っている。

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