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#映画感想文217『劇場版センキョナンデス』(2023)

映画『センキョナンデス』(2023)を映画館で観てきた。

監督と出演はダースレイダーとプチ鹿島。

2023年製作、109分、日本のドキュメンタリー映画である。

『なぜ君は総理大臣になれないのか』の大島新監督がプロデュースしている。

2021年の衆議院議員選挙では香川1区の自民党のデジタル担当大臣であった平井卓也議員と立憲民主党の小川淳也議員を追う。

ただ、平井陣営に取材をするも、反応は悪い。街宣シーンを撮影しているとマスクに旭日旗のバッジをつけている、いわゆるあちらの人に威嚇される。「平井は一般の人間とは違うじゃろがい」と撮影するなと制止される。しかし、公道での選挙の街宣を撮影するなと言うのは、そもそもおかしな話ではないか。嫌なら外で演説なんかするなよ。

一方の小川議員の選挙事務所はオープンで文化祭のような雰囲気があった。結局、小川議員はゼロ打ちで当選。小選挙区で勝利する。プチ鹿島さんは、平井一族が経営する四国新聞の報道姿勢に疑問を持ち、記者を捕まえて質問をするのだが、「会社の代表としては答えらない」の一点張りで、「一人のジャーナリストとしてどう考えるのか」と問い詰めても何も答えない。日本のジャーナリズムって本当に弱い。これでは全体主義国家と何も変わらない。さらにその様子をスマートフォンで撮り続けていた四国新聞の女性記者がいたのだが、それがかなりのホラーであった。単なるYouTuberと馬鹿にしながらも、きっちり監視していたのだ。

後半は、2022年の参議院議員選挙で、維新の会が大阪で幅を利かせる不思議に迫っている。そして、安倍晋三元首相の銃撃事件が発生し、選挙の雰囲気が一変する。そこで、二人は民主主義とは何かについて言葉を交わしていく。政権批判を悪口と呼ぶ国民が民主主義を扱えるのか、という根本問題に迫っていく。選挙は祭りだ、フェスだ、というノリから、選挙とは? 民主主義とは何か、というテーマに変化していくところが興味深かった。

失われっぱなしの日本で、民主主義を手放してしまってもいいのだろうか。そして、政権批判を怖がってしないメディアに存在価値はあるのだろうか。民主主義は不完全だけれど、民主主義ではない世界よりは数億倍マシなのだ。


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