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#映画感想文『ノマドランド』(2020)

映画『ノマドランド』(2020)を映画館で観てきた。

監督・脚本はクロエ・ジャオ、主演はフランシス・マクドーマンド。

2021年製作、108分、アメリカ映画。

オスカーを獲る前に観たので、館内はとても空いていた。

「ノマド」とは放浪者を意味する。

奇しくも日本では数年前「ノマドワーカー」が話題となっていたが、今思うと、あれは単に、ノートPCでスタバで作業する人とミニマリストがごっちゃになったような概念であった。

『ノマドランド』の主人公であるファーンは、季節労働者として、アメリカ大陸を移動しながら暮らしている。

彼女の暮らしを観て、目を背けたくなる人と、こういう風にも暮らしていけるなと思える人の半々に別れるのかもしれない。

わたしは後者であるが、車の運転ができないので、ノマドになる資格すら持ち合わせていない。(とほほ)

どこでも生きていけるし、どこへでも行けるのだと思えること、それ自体が人生の希望だと思う。

アメリカの大自然の映像は美しく、映画館で観ないことには、映画の価値は半減するだろう。

『ノマドランド』は大衆映画でも、芸術映画でも、ドキュメンタリー映画でもない、不思議な均衡が保たれた映画であった。

それこそが、クロエ・ジャオ監督の独自の作家性なのかもしれない。

そして、この映画の企画が通り、外国人の監督が映画を撮り、オスカーまで獲ってしまう、獲らせる懐の広さと深さのあるアメリカは、なんだかんだで、やっぱりチャンスの国でもある。そして、才能を見逃さずにサポートしてくれる人たちがいる。

この映画そのものの美しさはもちろんのこと、この映画を成立させたすべての現象が素晴らしいと思う。

60代の女性が、おばあちゃんやお母さん役でなく、一人の人物として描かれていることも、それもまた希望である。

ファーン役のフランシス・マクドーマンドが見たくなって、AmazonPrimeでコーエン兄弟の『ファーゴ』(1996)を久々に観た。

いやはや、グロテスクな描写が、意外と多くて驚いた。そして、最初に抱いた感想と同じく、今回も「うーん、結局、誰も得していないなあ」と思ってしまった。

フランシス・マクドーマンドはコミカルな役柄で、『ファーゴ』のほうがよりキュートだ。特に、ビュッフェでお皿を山盛りにしているシーンが最高だった。

映画の冒頭で、『ノマドランド』を日本でリメイクするなら、大竹しのぶで間違いないだろうとも思った。

わたしたちは、いつだって自由で孤独で、それは素晴らしいことなのだ。

補足。

クロエ・ジャオ監督は、仙道彰が大好きだそうです。わたしも好きです。

ああ、なんと世界の狭いことか。

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