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読書備忘録

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記事一覧

『シャネル・スタイル』

渡辺 みどり 著/文春文庫
【読んだ本の備忘録です】

シャネルの出自から死までを駆け足で説明した第1部と、彼女の箴言に、著者のコメントを添えた第2部。

【第1部】

1883年8月19日生まれ。シャネルは、行商人の親から生まれた3男3女のうちのひとり。母親はシャネルが12歳の時に亡くなり、彼女は修道院の孤児院へ預けられる。

カトリック修道院の日課は厳格で、一生涯つづくシャネルの清潔で勤勉なラ

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『旅のラゴス』

筒井康隆 著/新潮文庫
【読んだ本の備忘録です】

超常能力を有する人々の存在する世界。その世界で旅を続ける、ラゴスという男の連作物語。彼の旅の目的と、その世界の様相が徐々に明らかにされていく。

●集団転移

ムルダムという40人ほどの牧畜民族の移動に加わっているラゴス。この一族は、牧草地を辿りながら北方の都市リゴンドラへ牛馬を売りに行く。ラゴスの目的地は南にあったが、南方諸都市は旅人に厳しいそ

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『アフターダーク』

村上春樹 著/講談社文庫
【読んだ本の備忘録です】

それぞれの章の頭に時間の提示。晩秋、深夜五分前、都市の上空から見える、光の明滅の映像描写で物語は始まる。三人称風に綴られていくが、俯瞰したりズームアップしたりするその自在な神の視点は、「私たち」という一人称。見える景色から何かを連想し、想像し、あるいは疑問を抱く、実態のない視点。

真夜中のデニーズ。本を読みながら時間を潰している女の子マリと、

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『雷桜』

宇江佐真理/角川文庫
【読んだ本の備忘録です】

かつて、許されぬ女と恋に落ち、大和国から駆け落ちた甲賀男。追っ手から逃れやってきた岩本藩で、庄屋の娘のかどわかしを持ちかけられる。内部の騒ぎで瀬田村の支配を失った岩本藩は、益ある村を取り戻そうと、あの手この手で嫌がらせをしていた。娘を連れ去った男は、赤子を捨てるに忍びず、女と共に瀬田山で桜の炭を作り細々と生き長らえる。

江戸の近く、瀬田山は人を迷

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『戦うハプスブルク家―近代の序章としての三十年戦争』

菊池良生 著/講談社現代新書
【読んだ本の備忘録です】

◎第一幕【ボヘミヤ・プファルツ戦争】(1618~1623)

そもそも16世紀。オスマン・トルコの脅威から身を守るため、ボヘミヤ領邦議会はオーストリア・ハプスブルク家の神聖ローマ皇帝フェルディナント1世をボヘミヤ王に選出。同家に国の命運を委ねる。

続いて17世紀。ボヘミヤ・プロテスタントの形成。対する支配者ハプスブルク家は強いカトリック化

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