見出し画像

明治が積み重ねてきた、発酵の研究──meiji THE Chocolateの香味の秘密 #8

発酵はチョコレートづくりの「肝」。チョコレートのおいしさの約7割は、品種と産地、そして発酵で決まると言われています。しかし、この発酵を制御し、安定しておいしいカカオ豆を作ることは容易ではありません。品種によっても、農家や地域によっても適切な方法が異なるからです。

明治はいかにして、農家とともに発酵のコントロールを行い「明治スペシャリティカカオ豆」を実現したのか。今回はその取り組みについて語ります。

農家のさまざまな課題に合わせた支援を実践

明治はカカオ産地の農家と協力し、2006年から長い年月をかけて発酵の研究を行ってきました。農家や地域全体で、目指す香味のカカオ豆を継続的かつ安定的に生産できるようにするためです。

前回(#7)の記事で、メイジ・カカオ・サポートを始める前のベネズエラのカカオ農家では、発酵日数、発酵中の撹拌方法、発酵の頻度もバラバラで、できあがるカカオの香りや味にはムラがあったとお話しました。農家間でムラがあっただけではなく、同じ農家であっても、発酵用の機具が十分に揃っていないために、生産するたびに収穫したカカオ豆の香りや味が酸っぱくなったり苦くなったりと、安定しませんでした。

そうしたばらつきを防ぎ、香味や香りを安定させるために、明治はカカオ産地に足を運び、カカオ豆の発酵法などの技術を農家の方々と共有し、一緒に研究を重ね、発酵のコントロールに取り組みました。

産地では単に技術指導だけを行なったわけではありません。例えば、ベネズエラではカカオ苗木の無償配布を行い、一部地域には発酵箱を寄贈。それぞれの農家の状況や要望に沿って生産環境を整備し、明治独自の発酵法の導入を行い、カカオ豆の生産のサポートを進めています。

ベネズエラ以外の産地でも、その地域のカカオ豆が持つ良さをより引き出すための活動を行なっています。ペルーでは、剪定機や除草機などを無料で貸し出し、発酵箱も寄贈。さらに剪定や接ぎ木、肥料の与え方、農薬の取り扱い、健康管理などについて知識を共有するファーマー・トレーニング・スクールを開催。ガーナでは、苗木の育成や住民の生活に欠かせないきれいな水を確保するために井戸を寄贈し、さらに生産性の高い品種のカカオの苗木を無償配布。カカオ豆の生産現場では実践的な営農指導を行いました。

カカオ農家での発酵の様子

このように、品質の良いカカオ豆の安定生産のための活動内容は多岐にわたります。すべての産地に通用する絶対解はありません。重要なのは現地の農家のさまざまな課題に合わせて、物資の寄贈や発酵指導を行うこと。それが、持続可能なカカオ生産の実現に貢献するのです。

発酵コントロールにより実現したこと

カカオ豆の品質には品種と発酵の2つの要素が大きく関与しています。明治は産地での研究を開始した2006年から、まず品種が関与している部分と発酵が関与している部分を明らかにしました。そして、カカオの嗜好性に非常に大きな影響力を持つ発酵のコントロールを行い、高品質なカカオを一定数量作れる体制を整えました。

発酵コントロールを継続的に行うことで、香味のバラつきが一定になり、理想的な香味のカカオを継続して安定的に生産できるようになったのです。

これは取りも直さず、単一産地のカカオ豆だけで、特徴的な香味のチョコレートを安定的に作れるようになったということ。ナッティな香味、フローラルな香味、フルーティな香味、スパイシーな香味──これらの香味の特徴を持ったカカオこそ、「明治 ザ・チョコレート」にも使用している「明治スペシャリティカカオ豆」です。

また、発酵をコントロールすることで、カカオ豆に含まれているポリフェノールなど有効成分の調整も可能になりました。ポリフェノールが豊富に含まれたカカオ豆は本来、苦味や渋みが強く、とても食べられるものではありません。しかし、発酵をコントロールすればそうした問題も解決できます。こうして「チョコレート効果」に代表されるような、有効成分がたくさん入った食べやすいチョコレートを世に送り出せるようになったのです。

これまでの研究の過程で、ポリフェノールの量を増やしたり、特徴的な香りを最適に引き出したりと、さまざまな成果も得られました。これも、農家と協力して根気強く活動を続けてきたからこそ。明治はいまも分析・測定機器を用いてデータを蓄積し、科学的変化を把握して研究を進めています。


次回は、発酵と並んでおいしいチョコレートづくりには欠かせない工程である「焙炒」についてご紹介します。

そのほかのザ・チョコの“香味の秘密”シリーズはこちら

この記事がおもしろかった! と思った方は是非いいね、フォローをお願いします!