見出し画像

研究を重ね、追求し続ける「明治スペシャリティカカオ豆」──meiji THE Chocolateの香味の秘密 #6

「meiji THE Chocolate」は明治スペシャリティカカオ豆を使用しています。明治スペシャリティカカオ豆とは、カカオ産地との取り組みにより実現したこだわりのカカオ豆で、その豆特有の香りと味わいを引き出すために品種確認、発酵やローストにこだわったスペシャルな豆のこと。明治の中でも特別なオリジナルカカオ豆と言い換えてもいいでしょう。

では、この「明治スペシャリティカカオ豆」はいつどのように生まれ、他のカカオ豆とはいったい何が違うのか。その「スペシャル」な由来について語ります。

長きにわたる明治カカオ豆研究開発の歴史

「明治スペシャリティカカオ豆」の何がどう「スペシャル」なのか。それを知るには、明治のカカオ豆研究開発の歴史をたどらなければなりません。

明治のチョコレート作りの大まかな歴史(1926年~現在まで)

明治がカカオ豆からのチョコレート製造をスタートしたのは、今から約100年前の1926年のこと。この年、明治はドイツ人技師の力を借りてチョコレートレシピや製法を導入しました。当時使用したのは西アフリカ産で生産されていたカカオ豆。他のカカオ豆とブレンドする際にも欠かせない“ベース豆”となる、広く使われているカカオ豆です。渋味も苦味も強く、カカオ感がしっかりしている点が特徴として挙げられます。

それから60年ほどは大きな変化がありませんでしたが、1980年代に入ると一大転機を迎え、明治はカカオ厳選期に突入します。おいしいチョコレートづくりにはおいしいカカオ豆が必要ということに気付き、中南米のフレーバー豆の探索、そして製品への活用を始めたのです。“フレーバー豆”はベース豆に比較して香りの個性が際立っており、良質な風味を持っている豆のこと。この時期に誕生したのが「コラソンカカオ」という製品。ベネズエラ産のカカオ豆を使用したチョコレートでした。

1986年発売の「コラソンカカオ」

1999年以降は、産地や発酵の厳選期に入ります。明治はベネズエラのカカオ豆の発酵に着目し、豆を徹底的に研究・厳選しました。2000年に発売した「プレシャスカカオ」はその成果の一つです。

2000年発売の「プレシャスカカオ」

そして、2006年。明治はカカオ発酵制御期に足を踏み入れました。ベース豆、フレーバー豆からさらに進化した「明治スペシャリティカカオ豆」が登場するのはここからです。

「明治スペシャリティカカオ豆」には2つのレベルが存在する 

2006年まで、明治は商社から紹介されたカカオ豆の中から優れた品質のものを選んで購入しており、生産に直接関わることはあまりありませんでした。

しかし、2006年以降は自分たちがほしいカカオ豆を求めて主体的に生産に携わるようになりました。ベネズエラを始め、エクアドル、ペルー、ブラジル、ドミニカ共和国、ベトナム、ガーナで発酵コントロールや発酵後のカカオ豆選定を開始。自分たちが求める味に近づけるために、農家や農地にこちらから出向き、農家の方たちとともに発酵コントロールや発酵後のカカオ豆選定を行い、最初の「明治スペシャリティカカオ豆」を作り上げたのです。この取り組みによって、産地ごとの特徴を生かしたチョコレートの製品化や、カカオ豆に含まれているポリフェノールのコントロールもできるようになり、カカオ豆生産の持続可能性を高めることにもつながってきました。

明治が携わっている農園のカカオポッド

さらにそれから10年後。2015年に明治はカカオ品種の選定・導入期を迎えます。カカオの品種を特定し、契約農園と協業してカカオを苗木から育て、より香味を追求した「明治スペシャリティカカオ豆」を作り上げました。

ところで、現在の「明治スペシャリティカカオ豆」には2つのレベルが存在します。

一つは、カカオ農園を営む農家とともに、カカオ豆の発酵をコントロールし、求める美味しさに近づけていく「TREE to BAR」の「明治スペシャリティカカオ豆」。もう一つは、カカオの品種選びからスタートして、農地を開拓し、木を育てるところから自分たちの味を実現していく「FARM to BAR」の「明治スペシャリティカカオ豆」です。

もっとも、「FARM to BAR」が品質的に「TREE to BAR」より上、ということでは決してありません。原産地にはそれぞれの事情があるので、どちらにするかはケースバイケース。明治がいま一緒にチョコレート作りに取り組んでいるのは民間企業、カカオの組合組織、個別農家の3つのパターンがありますが、特に個別農家を束ねることは難しく、味のコントロールも簡単ではないため、今後も関係を継続してカカオ作りに取り組んでいくことが必要です。

また、研究のために「別の品種の木に植え替えてください」といっても、木が育ち、実がなるまでには3~5年の月日がかかります。その間、農家の収入がゼロになる事態は避けなくてはなりません。事情に応じて、ゴールとする味を実現する適切な方法を選んでいます。

15年以上「明治スペシャリティカカオ豆」を追求し続けてきた結果、明治の意図や意向を理解し、良い品質のカカオを生産し、継続してくれる農家が増えてきました。やはり継続は力なりです。

明治が誇る「明治スペシャリティカカオ豆」

生産に主体的に関与し、そこに責任を持つ

なぜ、明治はそこまで時間と手間ひまをかけて「明治スペシャリティカカオ豆」を作っているのか。それは、お客さまに今までよりもおいしいチョコレートをお届けしたいという強い思いがあってのこと。農家にただお任せするのではなく、明治が目指すカカオ豆を一緒につくり上げていくことでそれを実現できると考えています。カカオ豆の生産に主体的に関与し、責任を持つ。これこそが「明治スペシャリティカカオ豆」の「スペシャル」たるゆえんです。

また、自分たちで作り上げることで、「チョコレート効果」のポリフェノールに代表される「有効成分」のコントロールも可能になります。カカオの香味作りと有効成分作り。この2つに明治の長年の取り組みが生かされているのです。

もっとも、計画はすべて順調に進んだわけではありませんでした。最初の5年は品種と発酵によってカカオに起こる品質変化を明らかにするだけで手一杯。品種に合わせて発酵をコントロールする作業は困難を極めましたが、2010年頃から一定の数量を確保できるようになりました。

実は、この「明治スペシャリティカカオ豆」はスーパーやコンビニで販売している「meiji THE Chocolate」以外の商品にもブレンドされています。それは、ブレンドすることでより品質が安定したおいしいチョコレートを作れるということはもちろん、カカオ農家とともに生産したカカオ豆を継続的に購入することで彼らとの信頼関係を強化することができ、結果としてカカオ農家の方達の生活を支えることにもつながると考えているからです。

カカオの購入を継続し、現行の製品にもつなげていくことができるのは明治の大きな強み。これが可能だからこそ、明治はカカオ農家との間に良好な信頼関係を保ち、「明治スペシャリティカカオ豆」を作り続けることができるのです。


次回は、明治のこだわりが詰まったチョコレートづくりの工程の一つ、発酵について解説します。

そのほかのザ・チョコの“香味の秘密”シリーズはこちら

 この記事がおもしろかった! と思った方は是非いいね、フォローをお願いします!