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いつか「究極のmeiji THE Chocolate」をつくりたい!

チョコレート文化の普及啓蒙活動に力を入れている、食品開発本部カカオ開発部開発1G長・藤原成一。その活躍の場はテレビにとどまらず、YouTubeにも! 「チョコレート王子」という愛称を持ち、明治入社後チョコ一筋24年の藤原が、長く生き続ける商品の条件や、将来の夢を語ります。

内臓をフルに駆使した研究所時代

私とチョコレートとの出会いは幼少期にさかのぼります。近所の駄菓子屋さんで売っているチロルチョコや麦チョコは大好物。お歳暮にチョコレートをもらうと、独り占めしていました(笑)。チョコレート以外でも、昔からおいしいモノには目がなかったですね。

大学で応用化学を専攻していた私が明治に入社したのは、自分が開発に携わったモノを自分で試せると思ったからです。化学を専攻した学生は製薬や化学メーカーに入るのが一般的なコースですが、薬も化学製品も開発には長い時間がかかってしまう。食品は、開発から完成まで時間が短いのが魅力的でした。

藤原さま_研究所時代

(研究所時代のスナップ。お酒を浸み込ませたカステラのおいしさを分析中!)

入社して最初に配属になったのは研究所です。ここでトータル18年間レシピの開発を担当しました。レシピというのは非常に緻密に組むんですよ。砂糖やカカオマスを0.5%、1%といった具合に、細かく分量を変えながら頭に思い描いた風味を探っていきます。朝から晩まで作っては食べ、作っては食べ……。内臓をフルに駆使して、微妙な違いを見つけていく作業の繰り返しでした。

もともと適性はあったと思いますが、研究所時代に先輩に教えられて、味覚はずいぶんと鍛えられましたね。チョコレートの本当のおいしさに気づいたのもこの頃。土日もケーキ店やチョコレートショップに足繁く通って研究しました。もちろん、全部自腹です(笑)。

自宅には常にチョコレートがストックされていて、家族でいろいろなチョコレートを味わって楽しんでいます。でも、娘や息子も自分と同じようなチョコレートマニアかというと、そうでもないみたいです(笑)。

変わらないためには変わり続けなくてはならない

途中、2年間工場勤務をした後、再び研究所に戻り、5年前から本社の食品開発本部に配属になって、現在は商品企画を手掛けています。

具体的には、世の中のニーズを踏まえてどういう商品が売れそうかアイデアを考え、それぞれの専門部署とやりとりをしながらモノづくりを進めていく仕事。中身のチョコレートを研究所と生み出していくだけではなく、パッケージも包装チームやデザインチームと一緒に作り上げていく。さらに、工場のラインに乗せて大量生産するための技術や設備を技術チームと設計してく。わかりやすくいうとプロデューサー的な仕事でしょうか。

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明治は95年前にミルクチョコレートを世に送り出した日本のチョコレートのパイオニアで、技術屋魂が根付いている会社。シーズ起点の商品開発も多いですね。

新しい商品だけではなく、既存商品の見直しも絶えず行っています。というのも、商品というのはほったらかしにしておくとすぐに時代に合わなくなるんです。

昔はチョコレートに酸味はご法度で、酸っぱいチョコレートはおいしくないとされていた。ところが、酸味の強いサードウェーブコーヒーの流行と同じように、チョコレートもいまでは酸味のあるチョコが好まれるようになってきています。そうしたお客様の嗜好性の変化を取り入れなければ商品は生き残れないんですよ。「meiji ミルクチョコレート」も「メルティーキッス」も同じ。変わらないためには変わり続けなくてはならない。それが長く商品が愛される秘訣ですね。

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(藤原“推し ザ・チョコ”は「ドミニカ」)

チョコレートは「太りにくい」食べ物である!

消費者の嗜好は確実に変わってきています。例えば、私のチームが担当している「チョコレート効果」。甘さが控えめで、カカオ由来の苦味があります。いまはみなさんに普通に食べていただいていますが、ほんの10年前までは、苦くて手を伸ばしてもらえなかった。今の消費者に対応した商品設計が欠かせません。

最近は健康志向でチョコレートを食べる消費者も増えてきました。チョコレートというのは誤解の塊というか、長らく、体に悪い食べ物とみなされてきましたが、「実はチョコレートは体にいいんだ!」と大声で言いたい(笑)。カカオポリフェノールの抗酸化作用は広く知られていますし、チョコレートは低GI食品ですから、太りにくい食べ物なんです。これは朝から晩まで食べ続けてきた私が身をもって証明しています(笑)。

ちょっと固い話になりますが、明治は蒲郡市と愛知学院大学との産学官共同で、「チョコレート摂取による健康効果に関する実証研究」も実施しています。高カカオポリフェノールチョコレートを1カ月間毎日摂取してもらった結果、血圧の降下や善玉コレステロールの改善などの効果が実証されたんです。逆に、体重やBMIは増加することなく、血液検査などにも問題は認められなかった。チョコレートには体に良い成分があることを突き止めたわけです。

子どもが食べるお菓子、甘いだけの食べ物というイメージもずいぶん薄れてきたんじゃないでしょうか。チョコレートは大人の立派な嗜好品であることが少しずつ、着実に広まっているように思います。

私はこの認識をもっと周知させていきたい。ゆったりとした時間の中、チョコレートを食べると自分の気持ちが豊かになると思いませんか? カカオを感じながらチョコレートをじっくりと味わうと、驚きがあり、発見がある。喜びや楽しさが増えていくと思うんです。

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究極の「meiji THE Chocolate」を作りたい

私がYouTubeで「チョコレート王子」というチャンネルを開設したのも、チョコレートの楽しさや奥深さをもっと多くの人に知ってもらいたいと考えたからです。会社とはまったく関係なく、個人的に始めました。

実際には、新型コロナウィルスの感染拡大で外出ができなくなり、ゴールデンウイークに暇を持て余して始めたんですが(笑)、YouTubeなら個人の力で、スピーディーに情報を発信できます。チョコレートに関する楽しいネタなら困らないほどたくさんあるので、みんなに広めようとスタートしました。

なぜ「チョコレート王子」というチャンネル名にしたのか? 実は、私が趣味でやっているゴスペルの仲間たちに、いつの間にかそう呼ばれるようになったんです。自分で言ってませんよ(笑)。

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(チョコレート王子YouTubeより)

チョコレート王子としてこれまでいくつものネタを発表してきましたが、一番大変だったのは、生のカカオ豆からチョコレートを作ってみる体験でしょうか。自宅でカカオ豆を発酵させるところからチョコレートを作りました。他にもホットチョコドリンクの簡単な作り方や、お肉に合うチョコソースづくりなどいろいろ紹介しています。チョコレートやカカオ豆について知識を深め、おもしろいと思ってもらえればうれしいですね。

ただ、YouTubeは編集するのが大変で……(苦笑)。最近は忙しいこともあり更新が滞りがちですが、余力があればやってみたいネタは豊富にあります。チョコレートと他の食材とのマリアージュなど、どんどん紹介していきたいですね。

組み合わせるときに大切なのは相性を考えること。例えば、もしハチミツと合わせるのなら、フローラルな風味が感じられるチョコレートと合わせたほうがいい。ハチミツは花から採れたものだからです。同じ傾向同士でマリアージュさせると、相乗効果でおいしさが増します。

いろいろなチョコレートを同時に食べ比べてみるのもおすすめ。こんなにも違うんだとびっくりしますよ。

大人の嗜好品であるチョコレートにしっかりと向き合って味わうと、人生の楽しみが確実に増えます。そこには華やかな世界が待っている。ぜひ多くの人にその世界に触れてもらいたいですね。

個人的には、究極の「meiji THE Chocolate」を作りたい! という夢があります。いまはシングルビーンで、4つの産地それぞれのカカオ豆の特徴を際立たせていますが、ブレンドによって究極のうまいチョコレートを作り上げてみたい。いつかは実現させたいと思います。

【Next チョコレート王子直伝・meiji THE Chocolateの簡単・激ウマレシピ】​

[プロフィール]
藤原成一(ふじわら・せいいち)
食品開発本部 カカオ開発部 開発1G長。愛称はチョコレート王子。瀬戸内・大三島出身。歌、料理、豆笛、釣り……などあげだしたらキリがないほどいろんなことを語れる。いろんな人と話すことも好きなので、すぐいろんなところで友達を作ってくる。研究所出身で、カカオ産地ベネズエラへの訪問経験もあり。メルティ、チョコレート効果、ミルクチョコレートなど、明治を代表する商品に研究所でかかわってきている。

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