二度の休職と私の人生
日々を生きていく中で、生き辛さを感じることが多々あるのは、ずっと自分のせいだと思っていた。
東北の田舎に生まれ、三姉妹の長女として何不自由なく育てられた私。優しさと愛嬌溢れる母親に、口数は少なくとも芯のある父親、そして可愛くて個性的な妹達。幼い時こそ喧嘩もあったが、今では家族全員とても仲が良いと思う。
両親の寛大さもあり、私は高校卒業後専門学校へ行くことを難なく許された。今思えば凄い事だと思う。専門学校の授業料は高い。ましてやこのあと下の妹は二人とも私立高校に行くことになるのだ。お金の問題について当時の私は微塵も意識しておらず、社会人になってからやっと両親の偉大さを知ることとなってしまった。
そして卒業後、19歳の時に県外へ就職することになるのだが、異郷の地で一人暮らしをしながら見知った顔のない環境に身を置くことが、新鮮でもあり辛くもあった。
当時の私には趣味もあったし、職場の親切な先輩や同期のお陰で楽しく過ごせていた。しかし、ストレスというのは必ずしも認識できる訳ではない。気付いた時には手遅れで、息をすることもままならない程に悪化している可能性だってある。
実際、私が「もう無理だ」と感じた時もそうだった。仕事中突然足がすくみ、次の瞬間過呼吸が起こり、苦しくて死にそうだったあの瞬間を今でも覚えている。
なにか大きな出来事があった訳ではない。日々の小さな「気になること」が、解消されずに積もっていったのだと思う。受診した心療内科からは抑うつと診断された。
毎日毎日死にたいと思っていた。どうして生きているのかずっとわからなかった。仕事があるから朝には起きる必要がある、ただそれだけだった。
趣味にもどんどん興味がなくなり、やりたいこともわからずただただ生きていた日々だったが、それもこれも全部が自分の心の弱さだと決めつけていた。
仕事をやめてからも、「死にたい」という思いは消えなかった。だけど、死ぬ勇気がないから生きていた。仕事を辞めてからは地元に帰り、一年後に突如関東に転職をした。完全に行き当たりばったりだった。
転職先では、全く興味のない営業の仕事を三年弱続けた。何故続けられたのかはわからない。全く楽しくなかった。
そしてここで、人生二度目の休職をすることになる。今度は精神衰弱と言われた。
途中、部署異動があり、社長や部長と直接関わる仕事環境になったことでまた、「解消されない気になること」が少しずつ積もっていた。
私の運でもあるのだろうが、正社員として勤めた会社には言葉遣いが乱暴な上司が近くに必ず存在した。
昔から、他人を罵ったり傷つけたりする言葉に、人一倍耐性がない。学生の頃ふざけて男友達に「お前が一番ブス」と言われたことを未だに忘れられないし、友達が悪口を言われていたことだってずっと覚えている。小学生の時その場の雰囲気で「やめなよ」が言えず、同調してしまったことも、ずっとずっと後悔している。
そんな私だから、常日頃上司が軽い気持ちで放ってくる「死ね」や「殺すぞ」という冗談からも、うまく逃れられずにいた。
本当は、絶対に、そんな言葉を人に投げる人間が悪いのだ。どう考えたって、100:0で発した人間が悪だ。私が実際に人を殺していないと成り立たない話だと思う。
だけどそんな風にも、当時は思えなかった。全部自分が悪いと思っていた。私が早く仕事が出来ないのが悪い、うまく立ち回れないのが悪い、返しが面白くないのが悪い、生きているのが悪い。ひたすらにそう思っていた。
だけど今は、もしそんなことを言われたら、絶対に戦ってやろうと思っている。全力で、真っ向から立ち向かう勇気がある。様々な経験をしたし、歳をとったこともあるだろう。今は全く、死にたいと思わないのだ。
やりたいことが沢山ある。好きな人だって沢山いる。まだまだこんなところで終わってしまっては勿体無い。
困っていることや、不安になることは勿論あるけれど、そんなことはどうにだってなる。というかどうにかする。問題ない。
そう思えるのも、ニ度目の休職のあと正社員に拘らず、好きなことを好きなようにやってみたからだと思う。
人生は一度きりとよく言われるが、正直そんなことはないと思う。輪廻転生し、魂はきっと何度も人生を繰り返す。だけど今回を覚えているかは別なのだ。今の、この人間の、この人生のことを、次の私が覚えているとは限らない。
私はそう思う。だからこそ、「今回はこうしてみようかな」くらいの気持ちでやりたいことをやってみてもいいのではないだろうか。
挑戦した結果思った成果が出なくとも、「挑戦してみたけどうまくいかなかった」という経験になるし、その経験から学ぶことは沢山ある。もしかすると次は想像を超える結果になるかもしれないし、その経験のお陰で新たな出会いがあるかもしれない。
そしてその上で、人類全員は無理でも、私が好きな人達の幸せや癒しに、少しでも加担できたらいいなとも思う。自分の好きなことで自分の好きな人達を笑顔に出来たら最高だと思うのだ。
私にはまだまだやってみたいことが沢山ある。知識も情報も少なく、わからないことだらけの世界に、足を踏み入れようともしている。
うまく出来ないかもしれないが、やってみたいことを諦める人生にはしない。まだ30年も生きていないが、過去の経験全てを活かして今後の人生を自分だけのものにしていきたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?