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【詩】想い出の白桃

一途にひとりを愛していた
人生の約四分の一をかけて
ひとりの異性を想っていた

嘘は無い。

だけど未だに眠る前に
現れるのは君じゃない
朧な夢枕に浮かぶ横顔

思い返せば想い返すほどに
素敵なひとと出会えていた
こんな木偶の坊に長いこと
一緒にいてくれた優しい人

情けない木偶の坊の話を聞いて
笑ってくれたあなたとは二度と
会うことは叶わないのでしょう

四十八回の入浴に四回訪れる
甘く優しく馨しい白桃の香り
別の四度に出会うは藤色の湯

狭苦しい世界で
交錯する紅い糸
結ばれる事無く
交わり続けた糸

後悔も未練も無いんだよ
俺なりの筋は通したから
卑怯な真似はしたくなかった
自分の心と向き合いたかった

藤も桃も結局実ることなく
世界の片隅で風化していく

自分自身全部納得しているのに
一年の半分近くは治癒に要した
それでも燻るほんのり熱い旋風

空調が要らない季節柄
もうすぐ花咲く並木道
けれど芽吹かぬ私の樹
春風吹くのは何年後?

そりゃああんさん次第でさぁ。

華とは無理矢理咲かせるものでなく
時が来たら凛と咲き誇るものなのさ

華とは摘み取って飾り立てるより
時を迎えて散るから綺麗なんだよ

咲いた花弁はいつか必ず落ちるのよ
プラスティックの造花じゃない限り

散り際の直前が最も綺麗なんだ
蕾が開き切ったその瞬間なんだ
そこから潔く散るからいいんだ

花弁に 乗せて流した あの言葉

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