見出し画像

1993年 SideA-1「真夏の夜の夢/松任谷由実」

松任谷由実作詞・作曲 松任谷正隆編曲

・「誰にも言えない」(TBS系 1993/7/9~9/24)主題歌

 TBS系金曜10時枠7月クールドラマ主題歌。90年代に入ってシングルのメガヒットが量産され始めたが、CDアルバムの方では一足早くメガセールス時代が始まっていた。当時そんなCDアルバムのメガセールスを単身背負っていたのがユーミンだった。バブルに向かう時代の追い風、作中で過去曲がふんだんに使われた1987年の映画「私をスキーに連れてって」のヒット、そこにCDという新メディアの普及が重なり、彼女はCDセールスビッグバンのシンボルになった。

 1988年発売の「Delight Slight Light Kiss」から90年の「天国のドア」まで前代未聞の3年連続年間アルバム売り上げ第1位を獲得。売り上げは一気に前人未到のダブルミリオンに達した。90年代に入り、B’zやCHAGE&ASKA、サザンオールスターズ、米米CLUB、DREAMS COME TRUEら続々メガセールスアーティストが登場して記録を更新したが、その土台を築いたのは間違いなくユーミンであった。

 従って、このタイミングでのユーミンの主題歌起用はまさに真打ち登場の感があった(もっともそれこそ荒井由実時代から数多くのドラマ主題歌を手がけてきたユーミンからすれば、主題歌ブームという現象自体何を今さらという感じだったかもしれないが)。

 「誰にも言えない」は、貴島誠一郎プロデュース、君塚良一脚本、賀来千香子、佐野史郎、野際陽子の主演陣と、前年夏のメガヒットドラマ「ずっとあなたが好きだった」のスタッフ・キャストが再集結。大きな期待の中で始まったサスペンスドラマだったが、前作と決定的に異なっていたのが、「ずっとあなたが好きだった」が純愛ドラマという体裁ではじまり最終的に一種のサイコサスペンス(?)に変貌したのに対し、今回は最初からある種のモンスタードラマが期待されていたという点である。だから主題歌もユーミンにしては非常に珍しいエッジの立ったラテンダンスナンバーとなったが、誰もそれを疑問に思わなかった(それでいてこの曲は実にユーミンらしい。今でもこの「真夏の夜の夢」がユーミン最大のヒットシングルである)。

 賀来千香子扮する加奈子と佐野史郎扮する麻利夫は、かつて交際していたが別れて別々に結婚。ある日加奈子の家の隣に麻利夫夫婦が引っ越してくる——という物語で、当然二人がかつて付き合っていたことが「誰にも言えない」ことなのであるが、これまた最後に「誰にも言えない」ことは他にあったことがわかる。そしてあくまで別の作品として始まった「誰にも言えない」は、最後の最後に「ずっとあなたが好きだった」の本当の”続編”だったことが判明するのである。これほど露骨に期待を煽りながら最終的に観客を失望させなかったという意味で、この“続編”は成功している。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?