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親に発達障害をカミングアウトしないという選択

制服関連の日雇いから帰ってきた母親。家族で夕食を食べている時のこと。

「今日ねー“首周りがチクチクする”とか、“あーこれ中身この色なのかー”とか言って、こだわりが強いあなた(私)みたいな子がいたんだよねー」
って母親が言い出した。

私には分かる。その子に発達障害(神経発達症)の可能性があることを。制服で首周りがチクチクとか、定型じゃほとんど無いはず。
だって私がそうだから。


中学受験も高校受験もうまくいかず、高三の受験期に精神が限界に達して結局低偏差値の大学に行くことになった私。(受験期の話はまた今度詳しく書こうかな。)
学歴コンプレックスで大学の近くを歩くのも恥ずかしくて、学校の雰囲気にも交友関係にも満員電車にも疲弊して、抑うつ状態になった。ちなみに実技科目が多いのもあって課題と授業をこなすのは結構簡単だった…
酷かった時のことは、頭が働いてなかったから詳しくは覚えてないんだけど、ちょっとした文章でさえ読めなくなっていた。

高校時代にお世話になっていた精神科に再度通うことになって、だんだん浮上した発達障害の可能性。主治医に勧められてWAISという発達の偏りを診るための心理検査を受けた。親には「今回の診察は心理検査受けるらしいからお金も時間もいつもより掛かる」とメッセージで連絡していた。
結果は“限りなくグレーに近い黒”といったところだろうか。
「診断自体は、もっと大きな病院で、親に聞き取り等をしてからでないと出せない」と言われた。検査して分かったのは発達障害の可能性が限りなく高い、ということ。
親に相談が必要だと知った瞬間、診断を確定させることを断った。
「広汎性発達障害→自閉スペクトラム症・ADHD」と書かれた手書きのメモを主治医から受け取った。どうやらLD(学習障害)は無いらしい。
発達障害の特徴を調べれば調べるほど、自分の人生の伏線回収をしている気持ちになった。ちょっと楽しくて、すごく悔しくて、複雑な気持ちだった。
気が散って勉強が捗らないのも、人と関わることに興味がないのも、感覚過敏も、その他諸々、全部これのせいだったのか…という気持ち。
ずっと自分を責めて、それをせめてもの“頑張り”だと思って。文章が読めなくなった時、すごく安心したんだ。主治医に「流石に文章が読めないのは異常なレベルだよ」って言われて、自分が許されたような気がして。努力に値するほどの自己嫌悪を達成したんだと思って。今は“持続性抑うつ症”という体で『休養→進路を考える』のフェーズにいる。大学は退学した。飲食店のバイトも辞めた。賄い美味しくて給料手渡しでシフトの融通利きやすくて良かったんだけどね。


話は戻って今日のこと。
母の言葉に「それは発達障害の可能性がある」と告げたら、母親の世の中に対する偏見を減らせるかもしれない。でもそれは私の発達のカミングアウトになってしまう。

私は精神科医YouTuberの動画を見まくって知識がついて、世の中ってこんなに無知の暴力で溢れているんだって知った。まさに無知の知。to世の中from私。
ご飯を食べている手が固まった。表情も固まっていたかも。
高校生の時、学校の授業中に吃音の子が毎回の授業で指名された際に生徒にも先生にも笑われていて。私の席からは顔も見えなかったし、選択授業だから他クラスの子で名前も分からなかったけど、何もできない自分がすごく嫌だった。
吃音さえ知らない人間がこんなに居るのかと落胆した。悔しかった。
だから母親にも言いたかった。その話に何も言わない他の家族にも知らせたかった。でもできなかった。できなかったんだよ。
その子も発達障害だったとして、なおかつ親に発達障害って知られていなかったとして、私と同じような苦しみを味わうのだろうか。

親に話したとして、たとえ親に謝られても返すべき言葉が分からないから、話さないでいる。理解されないままで隠し通す。自分でもそれに気付けずに定型発達の人と同じフィールドに立とうとして、どこかで歯車が耐えられえなくなって、壊れてしまうかもしれない。

私の母親が印象的だったと話していたのなら相当だったよな。それを世間にわがままだと、小言が多いと思われたまま、悪い印象を持たれたまま過ごしているのかな。
私が一言言えたなら、少なくとも私の家族は偏見が減ったはずだよな。ごめんね。ごめんね、君の味方を増やせなくって。
君より先に君のご両親が君の発達障害に気付けていて、適切な環境で過ごせていることを願うばかりだ。わがままなのは、君のせいじゃないよ。

ムカつく
ちゃんとしてるから どこかおかしくて
普通があるから苦痛で
誰かの中にこの手を 突っ込んで引きずり出す

ムカつく
ちゃんとしてるのにいつもおかしくて
それでもこれしかなかった
誰かが言う変なんて せいぜいたかが普通の変だ
怒ってる 別に普通

普変/ano

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