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第3回 イラン革命(1979年)

 2002年1月29日、ブッシュ(子)大統領は一般教書演説で「イラン、イラク、北朝鮮は悪の枢軸(axis of evil)」と名指しで3国を批判した。2003年3月、アメリカはイラク戦争を開始し、同年末にイラクのサダム=フセイン大統領はアメリカ軍に拘束され、2006年には処刑された。残った主要な反米政権はイランと北朝鮮。現在、アメリカのトランプ政権はイランと北朝鮮の脅威を唱え、この2国をどう扱うかがアメリカ外交で大きな比重を占めている。

 なぜ、イランは反米国家になったのかどうしてアメリカはイランと戦争しようとしているのか。その理由はイラン革命を抜きに理解することはできない。そこで、第二次世界大戦後、アジアの民族主義が高まるなかで、イランが欧米に立ち向かい、翻弄されてきたイラン現代史の流れを簡単につかみながら、イラン革命とは何だったのかを説明していきたい。1979年イランにホメイニを最高指導者とする反米政権が誕生した。これにより中東地域におけるアメリカの威信は大きく傷ついた。ベトナム戦争と同様、アメリカ外交の失敗だった。

 これからテロ事件が起こり、アメリカがイランの仕業だと断定して、イランへの攻撃に日本も参加するよう求めてくる場面が近い将来あるかもしれない。2015年安保法が成立し、自衛隊がアメリカの戦争に協力することが可能となったいま、アメリカとイランの緊張関係は、日本の未来を大きく左右する重要な問題になる可能性がある。イラン革命は、決して我々と無関係の出来事ではない


目次
⑴モサデグのイラン石油国有化
⑵パフレヴィー2世の「白色革命」
⑶ホメイニのイラン革命(1979年)
⑷ソ連のアフガニスタン侵攻
⑸イラン=イラク戦争とアメリカ
⑹1979年の世界
⑺イランとサウジアラビア
【大学入試問題】
おわりに  映画『アルゴ』とアメリカ外交
【関連年表 イラン現代史】
<第3回 イラン革命のキーワード>
①モサデグ ②白色革命 ③ホメイニ ④イラン=イラク戦争 ⑤エジプト=イスラエル平和条約 ⑥サンディニスタ民族解放戦線 ⑦朴正煕(パクチョンヒ)


まずは、原油生産をめぐる最近の状況を把握しておこう。

【原油生産量の世界ランキング】
1位 アメリカ
2位 サウジアラビア
3位 ロシア
4位 イラン
5位 カナダ
6位 イラク
7位 アラブ首長国連邦
8位 中華人民共和国
9位 クウェート
10位 ブラジル
出典:「BP世界エネルギー統計2018」原油生産(2017年)



 2018年、アメリカは45年ぶりに原油生産量が世界首位になった。新型原油シェールオイルの増産で生産量が拡大したため。シェールとは頁岩(けつがん)。泥岩の一種。2000年代初頭、水の圧力で岩盤に亀裂を入れる「高圧破砕」と呼ばれる採掘技術が確立し、頁岩層に含まれる原油(シェールオイル)と天然ガス(シェールガス)の生産が拡大した。イランの原油生産量は世界第4位。相変わらず重要な産油国であることに変わりはない。


⑴モサデグのイラン石油国有化

 石油埋蔵量が世界第4位と言われるイラン。第二次世界大戦後、イランの石油利権はイギリス系のアングロ=イラニアン石油会社が独占していた。民族主義が高揚したイランでは、1951年モサデグ首相アングロ=イラニアン石油会社を接収し、イラン石油国有化を断行した。これは資源ナショナリズムのさきがけだった。

 1953年、これに反発したイギリスとアメリカは、国王パフレヴィー2世を支援して軍事クーデタを起こし、モサデグ首相を失脚させた。その後は、欧米の国際石油資本(メジャーズ)がイランの石油利権を握り、民族運動は押さえ込まれ、これからイランの政権は一気にアメリカ寄りとなる。

 軍事クーデタによるモサデグ政権の崩壊に、アメリカ中央情報局(CIA)が関与していたことは、2009年6月にオバマ大統領が認めている。アメリカは国王を利用して軍事クーデタを起こし、イランの石油利権をイラン人の手から奪ったのだ。


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第3回 イラン革命(1979年)

諸岡浩太郎

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諸岡浩太郎

福島原発事故から「ヒロシマと沖縄」の重みを感じています。ヴァンナチュール(自然派ワイン)と美味しい食べものが好き。慶應義塾大学法学部卒。代々木ゼミナール世界史講師。一般の社会人や高校生向けにnoteで世界史の講義を始めました。初心者の方に楽しんで読んでもらえるよう書いていきます。