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クリストファー・ノーラン監督作品で存在感を発揮する名優たち

鬼才クリストファー・ノーラン監督の映画に欠かせないものとは一体何だろうか?そのオリジナリティあふれる難解なストーリーだろうか?ハンス・ジマーの音楽だろうか?いいや違う。ノーラン作品に欠かせないもの、それはベテラン俳優たちによる華麗な仕事ぶりである。
ノーランは、こんな作品がどうしたら生まれるのかといつも驚かされる作家性の強いフィルムメーカーであるが、新作が公開されるたびに、毎回楽しみにしていることがある。それは、ベテラン俳優たちの起用法だ。
クリストファー・ノーランが創り出す世界の中で、もっとも重大な役割を担っているのは、主人公を陰で支える脇役たちの存在である。
そんな縁の下の力持ちを演じるベテラン俳優たちは、ノーラン作品で一際輝かしい光を放っている。
ここでは、ノーラン作品で印象的なキャラクターたちを演じてきたベテラン俳優の仕事ぶりを振り返る。


悪役のイメージをガラリと変えた、ゲイリー・オールドマン

クリストファー・ノーラン監督の名前を一躍世界的なものにした「ダークナイト」3部作。
DCコミックス原作「バットマン」のイメージを刷新させ、シリアスかつリアリティ溢れる描写で映し出した、いまなお語り継がれる歴史的シリーズであるが、同シリーズで俳優としてのイメージを大きく変えた一人の名優がいる。ゲイリー・オールドマンだ。
オールドマンと言えば、『ドラキュラ』(1992)や『レオン』(1994)などで魅せた演技があまりにも強烈であり、いわゆる‘‘悪役俳優’’というイメージが強かった。クセのある演技がまた魅力的であり、テロリストや汚職警官といった汚れ役を演じることに長けた俳優だと思われがちだったのだ。
そんなオールドマンのイメージをガラリと変えた作品が、2005年の『バットマン ビギンズ』である。
同作で、凶悪な犯罪や警官たちによる汚職が横行するゴッサム・シティにおいて、ただ一人、正義感あふれる刑事として街の治安維持に尽力するジェームズ・ゴードン役に起用されたのだ。
『バットマン ビギンズ』公開の前年より『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004)でイメージを覆し始めていたオールドマンだが、善人キャラを演じることにも長けていると証明して魅せたのは、間違いなく「ダークナイト」3部作であろう。
もともとオールドマンは悪役のイメージが付きまとっていることに悩んでいたという。そんな中で、ノーランはゲイリー・オールドマンという俳優の中に眠る新たな魅力を引き出したのだ。
ゴッサム・シティの狂気に真っ向から立ち向かっていくゴードン警部を見事に演じたオールドマンは、俳優として新たな道を切り開いたのである。

ノーランが最も信頼を置く名優、マイケル・ケイン

ゲイリー・オールドマンと同じく「ダークナイト」3部作で印象的な仕事を魅せ、その後、ノーラン作品には絶対と言っても良いほどに出演しているベテラン俳優がいる。サー・マイケル・ケインである。
2005年公開の『バットマン ビギンズ』で、バットマンことブルース・ウェインの執事であるアルフレッド・ペニーワース役に起用され、『ダークナイト』(2008)、『ダークナイト ライジング』(2012)とシリーズ3作品で、ブルースを陰から支え続けた。
バットマンとして自らの身を削り、ゴッサム・シティに尽くすブルースを常に気遣う、心配性な性格とブルースを包み込むような愛ある表情を見事に体現した。
ケインは、『バットマン ビギンズ』に出演して以来、『プレステージ』(2006)、『インセプション』(2010)、『インターステラー』(2014)、『ダンケルク』(2017)、『TENET テネット』(2020)と、クリストファー・ノーラン作品に計8作品に出演。
そのほとんどが物語のキーパーソンとなる役どころで、主人公を陰でサポートするキャラクターを演じている。
クリストファー・ノーランが最も信頼を置く俳優として、ノーラン作品には欠かせない存在となっている。

「ダークナイト」3部作で印象を残したもう一人の名優、モーガン・フリーマン

「ダークナイト」3部作では、ゲイリー・オールドマン、マイケル・ケインだけでなく、ほかにも印象的な演技を魅せたベテラン俳優がいる。
忘れてはならないのが、ルーシャス・フォックス役を演じたモーガン・フリーマンだ。
バットモービルを初め、バットマンが使用するガジェットの数々を開発する重要人物であるルーシャスを演じたフリーマンは、貫禄ある存在感と卓越した演技で同役を見事に演じて魅せた。
シリーズ3作品を通して見せるブルースとのコンビネーションは絶妙であり、圧巻だった。

個性派俳優としての才能が開花!キリアン・マーフィー

「ダークナイト」3部作の悪役として存在感を放ったキリアン・マーフィーもまたノーラン作品に欠かせない俳優である。
「ダークナイト」3部作すべての作品で、悪役スケアクロウ役に扮し、独特な個性を放ったマーフィーは、2010年公開の『インセプション』でも存在感を発揮した。
同作での出番はそれほど多いわけではないのだが、レオナルド・ディカプリオ演じる主人公コブに大きな影響を及ぼすキャラクターであった。
さらに最新作『オッペンハイマー』では、‘‘原爆の父’’として知られる理論物理学者ロバート・オッペンハイマー役に抜擢され、見事な演技を披露。第96回アカデミー賞において、主演男優賞を受賞した。
ノーラン作品への出演が、個性派俳優としてのマーフィーのキャリアに大きな影響を及ぼしたことは言うまでもない。

ノーラン作品で復活を遂げた男、トム・ハーディ

クリストファー・ノーラン作品で復活を果たした俳優もいる。
2010年『インセプション』に出演したトム・ハーディは、2001年の『ブラックホーク・ダウン』でハリウッドデビューを飾り、母国イギリスを中心に大きな期待を抱かれたが、結果を出せずにもがき苦しむ日々を送っていた。
そんな中、『インセプション』で主要キャストの一人に抜擢されたハーディは、同作で世界的な知名度を獲得。以降は、ご存じの通り、人気俳優の地位を確立している。
ハーディは『インセプション』のほかに、『ダークナイト ライジング』(2012)、『ダンケルク』(2017)と計3本のノーラン作品に出演している。

その作家性や演出に注目が集まるクリストファー・ノーラン監督作品であるが、キャストとして名を連ねるベテラン俳優たちの仕事ぶりもまた、大きな役割を果たしている。
ノーランの巧みな用兵術にも注目していきたい!

(文・構成:zash)

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