見出し画像

嫌な夢を見ずに眠りたい

夢を見た。

ろくでもない夢だ。

ただ私が、金髪の男にいじめられるという夢。

私たちは団体の船旅に出ていて、シャワーを使うためには個人ごとに割り当てられた何らかのキーロックの解除が必要なのに、私のキーだけをその男に変更され、シャワーが浴びれなくなるという夢。

いわゆる――小規模な――悪夢というやつだった。


夢というのは厄介だ。

そこではなんでも起こりうる。

シャワーを浴びるのにキーロックの解除なんて馬鹿げている。

しかしそんな荒唐無稽なことが起こるのが夢の特徴である。

だから、夢の話はあまりしないほうがいいと言われる。

何が起ころうと、そこにもう「ツッコミ」の余地がないからだ。

それでも夢の話を私がするのは、それを見ながら芽生えた感情だけは本物だと思えるためだ。

それが、ポジティブなものであっても、ネガティブなものであっても。


先述の夢の中で、私は途方に暮れていた。

シャワーを浴びれないことは、その夢の中で、副次的に様々なトラブルを引き起こす鍵となっていたからだ。

最終的に私は、腐葉土を素手でかき回す仕事に当てられ、そしてその手もまた洗えないのだった。

私がそれに、ひどい不快感を覚えた。


どうも最近、そういう夢ばかりが増えている。

というのは、不快感を感じる夢をよく見る、ということだ。

先述の夢もそうだし、数日前は、ひたすらに、理不尽に怒られる夢を見た。

そして、気分のよくなる夢は、それに反してめったに見ない。

たとえば大好きな女の子が出てくるような夢なんてものは――。


さらに私を困らせるのは、その夢が、断続的に続くことだ。

うたた寝のなかで夢を見て、目が醒めたあと、なんだか嫌な気分に支配され、またつい目をつぶってしまう。

すると、その嫌な夢の続きを見せられてしまうのだ。


これは、不快な映画の続編を見ることに似ている。

映画と違うのは、私の方に選択権がないことだ。

夢は無意識の領域であり、だから何を見るのか、基本的には、私にコントロールする術はない。

だから、私の不快感や苛立ちは引き伸ばされる。

また、この嫌な気持ちは、夢の詳細を覚えていなくても、気分単体で引き伸ばされてしまう。

そして徒に時間のみが経過してしまうのだ。


目が醒めるのは、夜のこともあれば、朝のこともある。

だが、いずれにせよ、夢のせいも相まって気分は最悪だ。

前者の場合、「ああ、寝落ちして時間を無駄にした」と思う。

後者の場合、特に平日だと「この気分なのに今から仕事かよ」と思う。


夢を見ずに眠る方法はないものか。

せめて、嫌な夢を見ない方法はないものか。

しかし前述の通り、夢のコントロールは非常に困難で、私は常に受動的にそれと接するしかない。


「ストレスが原因だよ」というのであれば、そのストレスを取り払う方法までちゃんと教えてほしい。

「食生活が原因だよ」というのであれば、食べることで良い夢が見られるようになる魔法みたいな食材を教えてほしい。

そんなアドバイスは、エビデンスに欠けるか、実行にそもそも無理のあるものばかりで、あまり役に立つとは思えない。


嫌な夢を見ずに眠りたい。

ゴールデンウィークを経て思うのは、そんな些細な願いだけだ。

些細だけれど、なかなか叶ってくれない願いだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?