ウェルス・ジャンキーどもめが!
2023/09/14
30分も早い電車に乗ってしまった。一体何がしたいんだ私は。
何がしたいのかはわからないが、何をすべきかはわかる。
私はこれから電車に数十分揺られ、到着した先で重いものを運ばなくてはならない。
単発のバイトだ。夜勤だ。
ああ、憂鬱だ。どうしてこうなるんだ。
夜勤の方が割がいい。それは確かだ。しかし、人間は夜に眠るよう作られた生き物だ。か弱い生き物だ。ああ、私は理に反した行動をとらなくてはならない。バチが当たる。神様に怒られる。
労働は嫌いだが、金欠はもっと嫌いなので、働かなくてはならない。
バイト先に向かう道すがら、人とすれ違うたびに私はこう思う。
この人たちは働いているのだ。
何食わぬ顔して私と同じ道を歩いているこの人たちは、時間を犠牲にして、なにがしかの労働をしているのだ。
家を見るたびに私はこう思う。
この家に住んでいる人は、この家を建てるために、何時間働いたのだろう。
気の遠くなるような時間、おそらく私が無為に過ごした時間の積み重ねが、この家を建てたのだ。
今、私は電車に乗っている。
隣に座っているサラリーマンも屈んでスマホをいじっている若者も足を組んでいるお姉さんも今乗り込んできた短パンアロハも、みんな働いている。
この世界を動かすのは労働だ。
みんな動いて動かして動かされている。
どこに向かって!?
グルグルと、もう、飽きもせず。
ああ、いやだ。
動かなければ死ぬのはマグロの特権ではない。
みんなそうだ!
うう、金のある生活のなんと素晴らしいこと!
一度知ったらやみつきだ。もう逃れられない。
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