スピーチの恐怖を乗り越える心理学 - スピーチ不安に関する心理学的洞察

笠原彰　とちぎスポーツ医科学センター協力心理相談員　プロメンタルコーチ　作新学院大学教授

2024年1月17日 08:35

人前でスピーチをするのが難しいのは一般的なことです

多くの人は、人前でのスピーチが苦手です。

仮にグループリーダーや班長になったら、朝礼でのスピーチなどが必要になりますが、これは一般的に苦痛と感じられるものです。

ネブラスカ大学のカレン・ドワイヤー教授による調査では、815人に様々な恐怖をリストアップしてもらい、その結果「人前でのスピーチ」が最も恐れられることが明らかになりました。

これは「死」をも上回る恐怖とされています。
例えば、緊張しやすい人は「人前で話すくらいなら、死んだ方がマシ」と冗談めかして言うこともありますが、これは実際に深刻に感じていることかもしれません。

人前で話すことに苦手意識を持つのは普通の反応です。

「自分だけが苦手だと思っている」これを知るだけで、心が軽くなるかもしれません。

周りの人はあなたのスピーチをもっと肯定的に見ています

人前で話すことが得意な人はほとんどいません。多くの人はスピーチ後に「うまく話せなかった」と思い込んでしまいます。

しかし、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学のリン・アルデン教授の研究によると、50人の大学生がビデオ撮影されたスピーチの後、自己評価はネガティブでしたが、他の評価者によるビデオ視聴結果は意外にも肯定的でした。

結果として、「うまくできなかった」というのは自己評価に過ぎず、実際は多くの人がそれなりにうまく話しているのです。自分が自分を厳しく評価しているだけで、周囲はもっと肯定的に見ています。

自分を厳しくすることは成長につながりますが、過度に自分を責めるのは避けるべきです。自分では完璧でないと感じていても、周囲は高く評価していることが多いのです。

自分の失敗を過度に責める必要はありません。

笠原彰心理学的分析

人前でのスピーチの恐怖は、社会的評価の恐れと緊密に関連しています。

自己開示に伴う不安や緊張は、批判や否定的な評価に対する恐れから生じることが多いです。

この状況では、個人は自分のパフォーマンスを過小評価し、自己効力感（自分の能力に対する信頼）が低下する傾向にあります。

しかし、他人は通常、演説者の不安や緊張をそれほど強くは感じないため、演説者の評価は自己評価よりも高くなることが多いです。

この現象は、認知的不協和と自己知覚理論に基づいて説明できます。

人は自分の行動やパフォーマンスに対して負のバイアスを持ちがちですが、他人はそれを客観的に見ることができ、より肯定的な評価を下すことがあります。

これは、自己中心的な認知の歪みによるもので、自己評価が実際のパフォーマンスよりも厳しくなる原因となります。

最終的に、このような自己批判的な態度は、自己受容と自己効力感の向上を妨げる要因となります。

自己受容を促進し、自己評価のバランスを取ることが、自信の向上と健全な自己認識の発展に不可欠です。

ですので、自分のスピーチ能力を過小評価するのではなく、自己受容と肯定的な自己評価を育てることが重要です。

笠原彰プロフィール：

作新学院大学メンタルトレーニング教授
とちぎスポーツ医科学センター協力心理相談員
プロメンタルコーチ
自己肯定感養成プロコーチ
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メンタルヘルス運動指導員

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