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お母さんになる



子どもの頃からお友達に「良いお母さんになりそう」と言われることが多くて、なんとなく嬉しい気持ちでいたしいつかお母さんになるものだと思っていたけれど、自分がお母さんになるというのは全く想像が付かずにいた。

妊娠したら自然に実感が湧くものかと思っていたけれど未だ自分が「お母さんになる」ことが信じられない気持ちでいる。

でも、お腹に赤ちゃんがやってきてから、赤ちゃんのことを考えない日はない。
毎日毎日考えているし、大切に思っている。

赤ちゃんの心拍を初めて聞いたとき嬉しくて涙が出たし、エコーで元気に動いている様子を見て毎回安堵したし、お散歩している時は気がつくといつもお腹を撫でて話しかけているし、伸び伸びとお腹を蹴るようになってからは愛おしくてたまらなくて両手で自分のお腹をギュッとして「大好きだよ」と伝えてる。

産休に入ってからは、赤ちゃんのお世話がちゃんとできるか心配で本を読んでノートまとめしながら勉強したり、沢山吟味して赤ちゃん用品を買ったり、入院の準備をしたりしていた。



せっかくだから産休期間を楽しもうと思い、いつか赤ちゃんに食べさせてあげたいお菓子やパンを作ってみたり、赤ちゃんの帽子を編んでみたりもしてた。


そうやって毎日毎日、赤ちゃんのことを考えて、無事に育つことを祈りながら過ごしてきた。

そして、臨月になった。
あと数日したら37週、正期産だ。
正期産というのはもういつでも産まれても大丈夫な時期のこと。 

赤ちゃんが産まれてきたら、いよいよ、「よーいドン!」でいきなり「お母さん」になるのだ。


でも、こんなに毎日赤ちゃんのことを考えているのに、やっぱりまだ自分が「お母さんになる」実感が湧いてこない。


お母さんになる自覚や覚悟はできているけど、自分が「お母さんになる」自信がないという方が近いのか。

赤ちゃんのことを考えて、今自分ができることはやっているとは思うけど、何か物足りない感覚。


どうして自信がないんだろうとぐるぐると考えていた。

私にとって「お母さん」ってなんだろうと考えてみる。


私の母はなんでも知っていて、なんでもできて、ずっしりと構えていて、私が病気や怪我をしても慌てなくて、守ってくれて、導いてくれる存在だった。


私はそんな存在になれるのか自信がないのかも。


いろんな初めてのことに動揺したり、一つ一つのことに不安になったりしてしまいそう。


でも同時に、私の母は過保護で、私の自尊心を傷つけることを言うこともあるし、私の選択を否定することや「こうすべきだ、この道に進むべきだ」と決めつけることもあったし、どこで機嫌が悪くなるか分からなくてビクビクしてしまうこともあった。


そしてまだ夫と出会う前に結婚について悩んでいた時、母に言われた「あなたはすぐ不安になるから子育ては向いてないかもね、結婚しなくても幸せになれるから焦る必要はないよ」という言葉もこびりついている。
(その時の母は私を安心させたくて言ったことは理解しているし、妊娠したことが分かってからは、「あなたなら大丈夫」と言ってくれているしいつも心配してくれて応援してくれている)


母に対して尊敬しているところもあればそうでないところもあり、私は私の母しか知らないから、同じように自分の子どもに接してしまったらどうしようという不安もあることに気がついた。


そうやって考えていくと、私の接し方で子どもの幸せが決まるんじゃないかと思うと、どんな風に関わってあげたらいいのか分からないことも自信がないことの一つの理由だと感じた。


子どもとどう関わればいいのか知りたくて、ある一冊の本を読んでみた。

「はじまりは愛着から」という児童精神科の佐々木正美さんという方が書かれた本。


この本にはたくさんのことが書いてあるけれど、一貫して、子どものありのままを認め根拠のない自信を沢山与えることの大切さ、なんでも話せる安心感を与えることの大切さ、子の喜びを自分の喜びと感じながら関わることの大切さ、そして決して自尊心を傷つけてはいけないこと、が繰り返し書かれていた。

そして読みながら、この本に書かれている子どもとの関わり方や言葉の掛け方は、私の夫が私にするそれと同じことに気がついた。

夫と出会う前に恋愛がうまくいかなくて占いに行ったことがあって、その占い師さんに、「あなたの側に子どもが見えるから、その子どもが"この人がお父さんがいい"と言う人を選びなさい」と言われたことがあった。


その数ヶ月後に夫と出会い、私は直感的に、夫はきっといいお父さんになると感じた。


その理由がこの本を通してとてもよく分かって、腑に落ちた。
夫は私が子どもの時欲しかった言葉や関わり方をしてくれている、だからこんなに安心するんだと。

この本を読んで、そんな風に気づいたんだと夫に話した時、涙が止まらなくなって、夫のお腹に顔を埋めてわんわん泣いた。
夫は優しく頭を撫でてくれた。


そのことに気がつく前から、なんとなく、「私は良いお母さんになれるかわからないけど、夫は今のままでそのまま素敵なお父さんになれるからきっと大丈夫」と思っていたのだけど、その理由が分かって、今まで感じでいた不安が軽くなって肩の力が抜けた。


良いお母さんになれるかはわからない。
そもそも「良いお母さん」なんて正解もないと思う。
でも、赤ちゃんが、私や夫と一緒にいて心から安らげて伸び伸びの育ってくれたらいいなと思う。


だから、私はたったひとつ。
「赤ちゃんにとって安心できる存在になること」だけを頑張ることにした。


私の側にはお手本になる夫がいるからきっと大丈夫だ。
もしも何か迷うことがあったら、二人で考えて、乗り越えていけばいい。


それに、この間姉と電話した時に、お母さんになる実感がわかなくて不安だと話した時、


「こんなに一生懸命考えてくれるお母さんのところに生まれてくる赤ちゃんは幸せだよ。大丈夫だよ。」


と言ってくれた。


私はまだまだ未熟だし、不安になることもいっぱいあるけど、きっとちゃんと少しずつお母さんになってるんだ。
そして赤ちゃんと関わっていく中で少しずつお母さんになっていくんだ。


出産は今の時代でも命懸けで、何が起こるかわからないけれど、残りの数週間、赤ちゃんの健康と無事生まれてくることを祈って穏やかに過ごそうと思う。


早く赤ちゃんをぎゅって抱きしめて、「大好きだよ」って伝えたいな。


おわり

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