5章

 今日は「詩狐」として必須の修業として、レッグマジックと腹筋運動を念入りにやろうと思ってましたが、チビたちを登場させる約束を果たさねばならないことを思い出しましたので、いろいろ書いていきます。
 と思いきや、チビたち三匹はもうここにいました。

 あはは。
 「ここ」とはどこなのか、といいますと現実です。
 今この現実にチビたちはやってきているのです。チビたちが登場する場面はすべて現実という場所でしかありえません。この小説を文字通り文字を辿って何度も読むたびに、チビたちは現実を作り出し続けるのです。
 チビたちのことをよく知らない方々にとっては単なる虚構かもしれませんが、虚構というものは現実と地続きであり、現実から切り離されることはありません。あらゆる虚構は共有され続けることで、その濃度を薄くし本来の現実へと回帰します。

 「チビだよー」
 「ウィッシュボーンです!」
 「しろだよぉ、ぐふふ」
 
 かわいい三匹の登場です。彼らは犬です。ワンちゃんです。ぬいぐるみでもあり、おねえちゃんの脳内から生まれ、おにいちゃんの脳内にも生まれ、そうやって共有幻想が現実と化して、こうしてここに登場しています。
 そして、わたくしきつねくんの、仲間であり、愛すべき存在であり、兄弟のような存在であります。わたくしのほうが年上なので、こういう「上から目線」な書き方になっておりますが、お気になさらずに。

 「ウィッシュボーン、詩やポエムに興味あります! ぜひとも今度いろいろ指導してください!」と彼は言います。
 わたくしが、彼と言ったからには、ウィッシュボーンは男であります。そうそう、わたくし含め、みんなからは「ウィッシュ」もしくは「ウィッシュくん」と省略されて呼ばれております。
 ボーンが欠けたら、つまり骨がなくなってしまったら大変じゃあないか、とご心配の読者もいらっしゃるでしょう。ですが大丈夫、WISH、つまり「希望」は残っていますよ。

 モーマンタイ(無問題)でございます。
モーマンタイという言葉はウィッシュの口癖の一つです。まあ、この章にしか出てこないかもしれませんが、それは誰のせいでもございません。

そしてわたくしがウィッシュに答える順番です。会話というものは言葉と言葉が出会う場所です。本来は無い空間というものを、世界の理に抗って造り出し、口から漏れ出す波動をのせてあげるのです。
 「もちろんさ! ウィッシュくん。芸術的言語遊戯をともに学ぼうぜ!」
 「しろ……、おなかへったぁ、へへ」と、ここでしろの乱入です。
 「しろくんさー、さっき『犬マック』のポテト食べたじゃん! メガメガサイズのやつー」と、ここでチビも負けじと会話に闖入してきます。 

ちなみにわたくしの文体は「ですます調」だったり「である調」だったりしますが、日記体なので何でもありなのです。
 そうそう、「犬マック」というのは、犬専用のマックというわけです。今から何万年か経ちましたらマック、つまり超有名ハンバーガーショップ店も存在してないかもしれませんから、はるか未来の読者よ、そこは検索してくださいね(これを書いているのは二十一世紀)。

 いや未来においては検索せずとも自動で情報を伝達してくれるようなシステムが構築されているかもしれません。目で追って読まなくても文章全体のデータをサプリメントみたいに水で飲みこむだけで全文を読んだことになるとかね。
そう予言しておきましょう。
 

 と、その時、
「しろ、もう昼寝するからいいもん」しろが口をとんがらかして言います。
 なんてかわいらしいんでしょうか。聖書に出てくるすべての天使を足したり掛けたりフーリエ変換したり、全単射したりしたとしても、しろのような大天使っぷりは生まれてこないでしょう。
 しろがふいに言ったその台詞によってわたくしはとてつもない霊感のようなものを覚え、釣り込まれ、眠くなってまいりました。詩狐ともあろうものが昼寝などという甘えに堕してよいものか悩みますが、しろが腕白な少年のように「昼寝する」と言ったので、たくましいくらいにこの小説における今の時間は昼になってしまったのですから致し方ありません。
 

 そして言い忘れてましたが、チビは、女子であります。三匹の中では長女のような存在です。
 三匹は兄弟ではないけれど、兄弟みたいな存在なのです。このあたりのことも、追い追い語らねばならないかもしれませんが、また次回以降の作品で、ということになるかもしれません。

それぐらい巨大で壮大な存在です。
ということで、昼なのに、おやすみなさいませ。
 なあにただの昼寝です。ブラックホールに寿命があることと同じくらいたいしたことはないです。

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