10章

 「チビ~!」とチビ。
 「ウィッシュボーンです!」とウィッシュ。
 「しぃろぉ!」としろ。
 
 みなさまごきげんよう。詩狐こときつねくんです。
 チビたちはなにやら元気はつらつオロナミンC(ふるっ!)といった感じで自己紹介しているみたいです。しかし急にどうしたのでしょうか。なぜ名乗りをあげているのでしょうか。みんな周知の間柄のはずではありませんか。
 
 チビ「チビ~!」
 ウィッシュ「ウィッシュボーンです!」
 しろ「しぃろぉ!」
 
 またしても名乗りを……。今回、語り手の権限で、セリフの前に誰がしゃべったのか判然とするように、名前を付けさせていただきました。まあ古今東西、探せばいくらでもこのタイプの会話の書き方を発見することができますので(たとえばディドロの著作など)、違和感があってもそれはあなたの経験不足による偏見になります。
 おっと、また偉そうでしたね。悪い癖です。
 
 チビ「ヒューヒュー、さすがきつねくん! いちいち細かいねー、ははっ」
なんと、チビにほめられてしまいました。「しまいました」は失礼ですね。
ありがとう、チビちゃん! もっと即座に言うべき返答でしたが、これでわたくしなんとも晴れやかな気持ちになったのであります。
 チビが話す言葉には、まったくもって裏表というモノがございません。どんな金貨にだって裏表はあるでしょうし、この世界という大舞台だって、陰と陽の裏表で成り立ってると考える方々も多いでしょう。
 一般的真理、物理学的真理においてはなんだって表裏一体あるでしょう。
 パンツやパンティーと呼ばれる布にだって裏表あるわけです。きちんと認識してこそ合理的に生活していけるのです。
 
 ウィッシュ「あ、あの、きつねさん、そのパンなんとかという言葉は、ウィッシュボーンあまり好きではありません。なんというか、破廉恥(ハレンチ)と言いますか……」
 チビ「ははぁ! ウィッシュくん、笑かすなあ! なんかハレンチとか、久しぶりに聞いたよー。昭和をおもう、そんな感じー」
 しろ「パンティー? ぐふふ、しろ、なんかよくわからないけど、パンティーっておもしろいなぁ、パンティー・パンチ」
 ウィッシュ「き、きつねさん! しろさんはまだこどもです! 言葉のチョイスに気を使っていただいたら、ウィッシュボーンたいへんうれしゅう存じます!」
 チビ「まったく、おとこのこたちってバカだな~、そんなことより林檎の皮ぐらいむけるようになってねー」
 
 さて、読者のみなさまの中で読解力のあるお方なら、この時点で、二つの疑問符が、脳天付近に漂ってらっしゃると思います。

 一・チビたちが、自己紹介していたのは何のため、というか、何をしているのか疑問である

 二・わたくしこと、きつねくんが心の中で思ったことがなぜウィッシュボーンにばれてしまっているのか。

 チビ「はーい、チビが答えるね! だって、この小説の主人公はチビたちだからねー、てか、もしかしたら、これを書いてるのはきつねくんじゃなくて、チビたちかもしれないよ! はは!」
 ウィッシュ「チビさん、なんだか思わせぶりですね、でもウィッシュボーンといたしましては、どちらが主役であろうと、みんなで仲良くしていれば最高です。最高ですよ!」
 しろ「さっきの続きやりたいなぁ! しろ、つまんないぃ」

 詩狐きつねくんも、チビにかかるとタジタジです。チビのセリフの中に答えは隠れているかもしれません。おそらく、そうかもしれません。チビたちスーパー・ワンちゃんたちなら、そんなことは容易かもしれないからです。本当になんでもできてしまう存在ゆえ、末恐ろしいくらいです。
 さて、「一」の疑問点の解消は、次の章に譲ることにしましょう。
 チビたちの元気はつらつオロナミンC! のパワーに立ち向かう余力が本日はありませぬ。

 チビ「ゆっくり休みなねー、きつねくん!」
 ウィッシュ「睡眠をすることで覚醒することができますよ。何事もバランスですね!」
 しろ「しろも、寝ようかなぁ、ぐぐぐ……」

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『きつねくんにっき』

詩を書くきつねくんを中心にチビ、ウィッシュ、しろの三匹の犬が繰り広げる適当日記体小説。新しい哲学、救いの思想についても触れるかもしれない問題作。
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