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翻訳校閲講座本番間近!

 次の日曜日、6月25日には翻訳校閲オンライン講座の第4回を開催する。一昨年秋にtwitterから毎日文化センターの方に声をかけていただいたのがそもそもの初め。打ち合わせや準備を経て、昨年1月に第1回を開講した。
 そのときの顛末は ↓ の投稿に書いた。

 それから数えて今回は4回目となる。内容は練り上げてきて百数十枚のスライドもできた。いまは毎日パフォーマンス練習に余念がない。
 しかし、フリーランスで翻訳校閲という仕事をしている人を自分以外知らない。相当特殊な世界であることは間違いないだろう。
 それなのに、開催するたびに数十人から100人ほどの方が受けてくださっている。おそらく翻訳チェッカーの方などが参加しているのだろう。ありがたいことこのうえない。
 というわけで、ここで「翻訳校閲」というのがどういう仕事なのかを書いておきたい。

翻訳チェック+校閲が翻訳校閲

 翻訳校閲は翻訳ではないし、校閲のなかでもかなり特殊な部類に入る仕事である。わたしはいつも「翻訳チェック+校閲」が翻訳校閲ですと言っているが、これで伝わっているかどうかわからない。
簡単に仕事を説明しよう。

1. 翻訳チェック

 作業はデュアルモニタでしているので、基本的にはモニタ左側に原文、右側に訳文ファイルを開く。産業モノ、翻訳エージェントや個人からの依頼はPCファイルで作業する。
 出版モノの場合には校正紙に記入するが、詳しくは「小説の翻訳校閲」に書いた https://note.com/merlin_witch/n/n133f67e8b327 のでそちらをご参照いただければと思う。
 Wordファイルで翻訳チェックをする場合には、変更履歴を使う。明らかな間違いは訳文を直接変更し、そうでないものはWordのコメントに記す。ExcelやPowerPointの場合はコメントに訂正後の文を記していく。
 Wordファイルなら、1時間で原文1000ワードがわたしの通常スピード。これで終わらなければ原文がよほど難解か、翻訳の質が非常に悪いということになる。あまりにも翻訳がひどい場合には発注元に伝える。

2. 翻訳チェックの重要事項2つ 

 翻訳チェックで大事なことは2つある。

1) 一定のペースを保つ
 校正者が校正紙と向き合うときは、一定のペースを保って見ていく。翻訳チェックも同じである。訳し直したりする場合を除き、ずっと同じペースで目と手を動かしていくのが基本である。

2) 翻訳「者」ではなく翻訳「文」と向き合う
 出版翻訳の場合には訳者の名前がわかっているので検索し、これまでの実績を調べたりもする。
 産業翻訳の場合でも、翻訳者が誰かという情報はわかっていることが多いし、知り合いということもある。
 しかし翻訳者が誰であろうと、翻訳チェックでは「翻訳者」を相手にしてはならない。不要な感情が入ってくるからだ。
  翻訳の質が高いときは翻訳者が誰かなど気にしない。質が悪いときほど注意を向けてしまう。そうなると、注意力が削がれて見落としが増えてしまうのだ。
 だから、訳文の質がどんなものであろうと、向き合うのは「訳文」とだけ。脳を「中立」状態にしてから淡々と進めなければならない。
 それでもあまりに翻訳の質が悪いと「この翻訳者ほんとひどい」と毒づきたくなることがある。
 わたしはマイルールとして、「最初に1回だけ毒を履いていい」ことにしている。そうして数分間瞑想をし、「翻訳者情報」を脳から取り去って、訳文とだけ向き合う。

3. 表記統一等(JustRight!を使う)

 翻訳チェックが終わったら、今度は「校正・校閲」の仕事に入る。まずは表記について。表記が揺れていない翻訳者は存在しないので、ここは機械的にJustRitht!をかけて、出力結果に従って直していく。

4. 日本語素読み(+ファクトチェック)

 最後に日本語の訳文を素読みしながらファクトチェックをする。チェックすべきファクトが多そうだな、と感じたら別プロセスで、表記統一より前のプロセスに入れることもある。
 産業モノならばネットで調べられるだけ調べ、あとは「不明」とコメントを入れておく。出版の場合には、ギャランティによるが、図書館まで行って調べ物をすることも多い。

5. 納品

最後に変更履歴とコメントを確認して発注元に送る。メールの場合には、自分宛てにも必ず送る。添付忘れや添付間違いがすぐに発見できるからである。
 指定サイトにアップする場合には、ファイル名と最終変更日時を「指差し確認」してからアップロードする。

6. 最後に

翻訳者は翻訳チェックを嫌う人が多い。翻訳の質がひどいと訳し直しになり、自分の時間単価が下がるからである。だがわたしは、基本的にどんな翻訳チェックでも引き受ける。ただし質が悪いときは「時給換算」で。これならば問題ないのである。
 というわけで新規の取引先は常時募集している。時給換算で支払ってくださるエージェント、クライアント様のご発注をお待ちしております!

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