玄米。温泉卵。豆腐の味噌汁。納豆。油揚げの焼いたの。焼海苔。プチトマト。玄米茶。これがわたしの毎日の朝食である。料理はできないので、玄米はパックご飯を電子レンジにかけるだけ。味噌汁も小袋のを椀に入れ、お湯を沸かして豆腐を適当に切って入れるだけ。温泉卵は最初につくり始める。お湯を沸かしてから水を1杯加えて80度くらいまで温度を下げて、冷蔵庫の卵をいきなり入れて10分放置するだけ。これが好みの硬さだ。
 玄米は栄養豊富。タンパク質も、卵、豆腐、味噌、納豆、油揚げと5種類取っているから悪くないはずだ。何よりも体調が安定している。毎朝同じものが入ってくるとわかれば、胃も安心するのかもしれない。朝食の準備という面でも、品数はそこそこ多いが毎日同じなので慌てたり手順を間違えることもない。買い物もいつも同じ食材をチェックしておけばよいので「あれを切らしちゃった」ということがない。
 いいことづくめだが、あまり経済的ではない。玄米パックご飯はまとめて買っても1食分200円近くするし、ほかのものと合計すると、1食で350円ほどかかる。毎日、それも朝食の自宅ご飯にかける材料費としては高い。
 それでも、わたしは自宅では酒を飲まなくなったので、トータルで食費が安くなった分、この生活が続けられる。何よりも「身体が安心している」感じを得られる。毎日同じメニューなのだからちょっと贅沢しようかと、パック味噌汁をやや高い豚汁にしてみたり、こだわりの納豆とやらを買ってみたりしてみたが、「いつもと違うなぁ」と感じるだけだったので、結局は安い商品に戻った。
 10月中旬からもう4か月間、毎日この朝食である。食べる順番も決まっている。まずは納豆のうえに炒り胡麻をふりかけ、玄米と納豆を一口ずつスプーンにすくって口に入れる。合間に、これも炒り胡麻をふった味噌汁と油揚げを適宜はさむ。納豆を食べ終わる頃に温泉卵が出来上がるので玄米の上にかける。卵は白身を先に食べてしまってから黄身を割って玄米とまぜ、これを焼海苔でくるんで食べる。最後の一口は海苔が終わっていて、黄身と玄米がほどよく混ざった状態だ。これが締めである。
 毎日同じ食事を同じ順番で食べ続ける、となると思い出すのが中島梓の「栄光のササミ弁当」だ。主菜は鶏のササミに塩コショウと粉をつけて焼いたもの、副菜はほうれん草のバタ炒め、ご飯の上にはカリカリ小梅、塩昆布、固く焼いた目玉焼き。中高生の6年間、お母さんに頼んで同じ弁当を毎日作り続けてもらったという。別のものが入っていてもいけないし、ほうれん草のバタ炒めがおひたしになったりしてもいけない。食べる順番も決まっている。最後にメインのササミをひとくち残すように大事に食べていって、小梅のカリカリで締める、という。
 いや、わかるわかる。これと決めたらとにかく毎日同じものというのがよいのだ。わたしが梓エッセイの愛読者だというのも、偏執狂の気(け)があることの証明かもしれない。
 極端に暑がりの自分は、夏にはお湯を沸かすのはイヤだから、この朝食は食べないだろう。ここがちと悔しいところだが、また気温が下がる10月後半くらいからは復活してこれが毎日の朝食となる。それを毎年続けていきたい。歯が悪くても食べられる食材ばかりだから、80歳まで生きたとしても、晩秋から春までの季節限定「栄光の玄米油揚げ朝食」の座は揺るがないだろうと予測されるのである。

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