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わたしの仕事 #3 実用書・ムックの校閲

実用書・ムックの校閲とはこんな仕事

校閲の定義

 校閲とは、「原稿(校正刷り)の内容や表記の誤りを指摘し、正すこと」とわたしは定義しています。

実用書・ムックの校閲に特有の要素

 一般の実用書については、小説の校閲とほぼ同じです。最近は、グラフや表、イラストや図解といったビジュアル要素が多いため、その信頼性と本文との整合性をチェックするというプロセスが加わります。
 また、ラインマーカーが使われていることも多いので、正しい箇所に正しい色とフォーマットのラインが入っているかどうかもチェック対象です。特に句点はラインが抜けやすいので要チェック。
 ムックならば、写真が多いことが一般的です。写真とテキストとの整合性(たとえば、商品の写真と紹介文が合っているかどうか)のチェック、およびファクトチェックがどちらも大量に発生します。

ライターが書く原稿とは~小説の校閲と違うところ

 実用書、とくにムックはライターか編集者が書いていることが多いです。
 ライターは「自分の書いたテキスト」に対し、作家や翻訳家ほどには思い入れは強くないのがふつうです。
 というのは、ライターが作家と同じ熱量で同じ分量を書いていたら、到底食べていけないからです。ライターは「量をこなす」仕事です。信頼できるソースから情報を入手し、それを整理してテキストにまとめ、自分の考えを述べる。このプロセスをどれだけ速く、大量にこなせるかが勝負です。従って、ライターの原稿はプロとはいってもある程度のミスがあって当然だと思います。
 以前は編集者が原稿に手を入れてから校正刷りにしていたと思いますが、いまはライターの原稿がそのまま校正刷りになることも多いと感じています。そうなると、呼応表現のミスや日本語として不自然な箇所、ロジックが不整合がテキストが校正刷りまで残っていることもあります。
 そうした箇所を拾っていくのが校閲者の第一の仕事といえるでしょう。
 ただしライターは、編集者から字句統一表を受け取っていれば、それを守って書いてくる人がほとんどです。そうした「仕様・決まりごと」に従うのも、生き残るために必要だからです。
 もちろんケアレスミスは誰にだってあるので、校閲者の第二の仕事として、「仕様が守られているか」をチェックして拾っていくことになります。

ファクトチェック

 ムックで多いのは、キャプションが合っているかどうかのファクトチェックです。
 たとえばある特集では、いくつかのメーカーの商品を撮影し、価格とメーカー名をキャプションに載せます。そうしたページでは、価格とメーカー名を調べる作業が大量に発生します。商品スペック(サイズ等)が載っていれば、それも調べます。
 たいていは当該メーカーのサイトに載っていますが、新製品など未掲載の場合には、別途編集者に資料を依頼したり、資料がないと言われればコメントを入れておきます。
 また、製品史との比較等で世界史や日本史の年表を載せることがあります。この場合、年表も当然チェックします。とくに、歴史に残る年が昔と今とでは違う、たとえば鎌倉幕府の成立などは要注意です。昔は1192年でした(「いいくにつくろう鎌倉幕府」と覚えたものでした)が、現在は1185年と学校で習っているはずです。
 地図もムックではよく使われます。地図そのものと地名はもちろんのこと、飾りとして使われることの多い英語や欧文文字もチェックします。
 というのは、こういう「飾り」で入れられている英語にはとても間違いが多いのです。それを知っている編集者は、別の校閲者を入れたうえで、全体の英語表記だけ久松に見てほしいと依頼してきたりします。無論、そうした仕事も受けています。

英語のミス

 ムックに限らず一般の実用書でもそうですが、ビジュアル要素の多い本ほど、英語に間違いがあります。本文ではなく、デザイン要素として入れられた英語には、1冊に1つは間違いが含まれているといっていいでしょう。
 とくに多いのはcalendar(カレンダー)という単語です。最後の r の前は a なのですが、calenderと e になっていることがとても多く、しかもcalender という単語も存在するためにスペルチェックでも引っかからない。目視で拾うしかありません。これはデザイナーにも覚えておいてほしいと思います。

レイアウトのミス

 もうひとつ、ムックに多いのがレイアウト上のミスです。たとえば24ページの特集に6人のインタビューが載っていたとします。このインタビューページで、写真やその他の要素はきちんと収められているのに、本文だけが違う人のテキストに入れ替わっていることなどがあります。
 1冊の本の数か所に名前が登場している人の場合は、本文以外のキャプション等の箇所で名前が違っていることもあります。とくに英文字が使われていると、大文字であるはずなのに小文字になっている、などが散見されます。
 また、原稿が間に合わない場合にはダミーのテキストを入れたりする編集者もいます。しかしそうすると、このダミーが最後まで残り、本になって店頭に並んでしまったという重大ミスを聞いたことがあります。それ以来、ダミーテキストの箇所には「言わずもがな」と思っても「原稿差し替え後に確認してください」と必ずコメントを入れるようにしています。

色のチェック

 ムックであっても実用書であっても、2色刷り、多色刷りならば「色(小見出しやラインマーカーなど)」が正しいかどうかも、もちろんチェックします。
 一方で、写真やイラストの色がきれいに出ているかどうかといったことは、別途指示がない限りチェックしません。表紙はテキストのみ(主に本文や目次との整合性)を見ています。 

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