トマトカレー麺を食べたこと。記憶を漂白した反射光の眩しい午後を見上げていたこと。

Netflixの新作ドラマを見る。サンマルクカフェ。思考のビックデータによる蜘蛛の糸を寄せて。断腸の思いで繋いだ黒歴史を。記憶を漂白した反射光の眩しい午後を僕は見上げていた。摩擦音が摩耗する三重奏の騒音を嗅ぎ分けて、脳内の君の声を聞く。業務連絡のように機械的で味気ない君の声が響く。反射光の午後。シンメトリーな心になれない思索のシーケンサーが、現実世界の認識を歪ませる。

トマトカレー麺を食べる僕。上野、金曜日の遅い昼食。心に眼帯をしたまま世界を認識する。原点のおまじないで、シェルターに逃げないでとどめを刺す僕の、空腹を満たしてくれる。

上野駅から常磐線で北へ。茨城方面へ。宛もなく乗車。オリジナルの獣のように寝落ちする僕。電車はもはや寝る場所だ。睡眠空間。北半球に光が注ぐ時、放任主義の生体反応が顕になる。刹那の生理現象が露見する。人生の攻略法を探し続ける僕は、蜘蛛の糸とスキンシップを繰り返すこと、それが人生だと悟る。

日比谷駅に引き返す。深呼吸のボーダーラインが前頭前野を掠める。アリストテレスの茹でダコが、視覚野で踊ってる。踊り続けている。手相のサンプルを精査するように。終わらない突貫工事を繰り返すように。茹でダコは踊り続けている。

日比谷駅で地上へ。ふと周りを見渡す。そこにいる通行人たちは、まるで逆光の中のゾウリムシのように生気が無い目をしていた。一様に。

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