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多様性とは、言語だけではない

3歳になる息子は、2歳になった時から、近所のローカルの幼稚園に通っています。

一軒家を改造した小さな幼稚園です。

日本人は、息子だけ。

あとはミャンマー人とタイ人のハーフの子が1人いるだけで、他は先生も生徒も全員ミャンマー人。

人に話すと結構驚かれます。ミャンマー人と日本人のご夫婦を親に持つ子ならともかく、両親ともに日本人で、ローカルの幼稚園に行っている子供はなかなか少ないようです。

2歳になって、幼稚園を探すにあたって、私も色々話を聞いて見学に行ったりしました。

ヤンゴンは、意外と外国人が通える幼稚園が豊富で、フランス系のモンテッソーリの幼稚園とか、日系のインター幼稚園とか、イギリス系の幼稚園とか、ローカルのインター幼稚園とか、色々な選択肢があります。

日本人学校も幼稚部があるのですが、ここは受け入れが4歳からなので息子は通えないことが分かりました。仮に2歳からの受け入れでも、我が家からは遠いので選択肢には入らなかったかも。

やっぱり、インター幼稚園って親の私が憧れてしまう訳です(笑)

インター幼稚園に通ったら、自動的にバイリンガル・トリリンガルになっちゃうんじゃないの?そしたら超ラッキー!って。

涼しい顔で「親として、子供にとってよりよい教育環境をね」なんて言いながら、心の中はハイテンション!キャハハ、うちの子、バイリンガルになっちゃうよ〜!イエーイ!

こんなにハイテンションになるのは、私自身に語学コンプレックスがあるからに他なりません。受験勉強だって頑張ってしたのにね、英語が全然話せない。ミャンマー語だって、少しだけ。

ここは海外。そこで暮らしている外国人は語学に堪能な人が多いので、恥ずかしながら、それはもう、ものすごい語学へのコンプレックスです。

そんな中、5ヶ国語で教育をします!という幼稚園を見つけ、日本人の子供も多く通っているということで、お話を聞きに行ってきました。

子供の柔軟な頭のうちに、色々な言語に触れる事によって苦手意識がなくなること。

言語を通じて、様々な文化に対する多様性が養われること。

言語ごとの発音をインプットするには、小さい頃の耳が適していること。

そんな素晴らしい説明を聞き、緑に囲まれた素晴らしい園を見て、息子のためにも、絶対にココにしよう!とほとんど心は決まっていました。頭の中は5ヶ国語を操る息子の将来の姿でいっぱいです。(今にして思えば、語学コンプレックスここに極まれり)

子供達の中には、制服を着ている子と着ていない子がいたので、「制服を着ていない子もいるんですね」と尋ねたところ、「そうなんです。特に欧米人のお子さんが多いんですけど、制服を着てくれないんです。それがすごく嫌なんです」という答えが返ってきました。

その時、私の中に生まれた、かすかな違和感。

しばらくはその違和感の正体に気づかず、でも、なんとなく入園の申し込みをする気になれずにいました。そんな時、近所をトボトボ歩いていたところ見つけたのが、現在通っているローカル幼稚園でした。

園庭もなく、けっこうボロ目の一軒家で、見学に行った幼稚園とは比べ物にならないチープな環境です。

でも、家から200mくらいの場所にあって、中に入って聞いてみたら、翌日から通えるよ、と言われ、オムツ取れてないけど大丈夫ですか?と尋ねると、オッケーオッケー!とのお返事。

幼稚園に必要な持ち物類の準備もこの調子で、なんでもいいよ、任せて!という雰囲気でした。

「お弁当箱ないんです」→「大丈夫、そこのスーパーに売ってる」

「昼寝用のマットレスってどんなん…」→「別にブランケット2枚とかでもいいのよ。昼寝できれば。」

ローカル幼稚園ということで、授業料もそれはそれは格安だったため、「合わなかったら辞めればいいか」と、私の方も気軽に通わせはじめましたが、もう入園から1年以上が経っています。

ミャンマーにはユニオンデーという祝日があります。日本語に訳すと、連邦の日とでも言いましょうか。

この日は、それぞれの民族を尊重する、という宣言をアウンサン将軍行った日でもあり、幼稚園では、子供達や先生が自分の民族の衣装を着て、民族独自の歌や、ミャンマー全体で平和に仲良くしようね、という歌に合わせてダンスします。

子供が着る民族衣装は、また格別な可愛らしさがあります。唯一の外国人である息子はとりあえず日本の衣装という事で甚平を着せて幼稚園に連れて行きました。(みんな民族衣装の正装なので、バランス的には紋付袴なんでしょうが、そんなものは持っていない)

去年のユニオンデーには、「正装って、何着せよう」「日本の衣装だから、洋服じゃないし、着物なんてないし」「どうしようどうしよう」と焦っていた私ですが、今年はゆったり構えることが出来ました。

なぜなら、去年のユニオンデーも、民族衣装の子もいれば、なんとなく一張羅の洋服の子、そして、まったくの普段着の子もいたのを覚えていたからです。

多様性とは、そんな事も全部アリだよ!みんな違ってみんなイイよ!という事ではないかしら、と、それぞれの服装で踊る子供達を観ながら思いました。

と同時に、私が感じた違和感の正体にも気づきました。

今、息子はこだわりが出てきた3歳。幼稚園の制服を着る!という日もあれば、ミッキーマウスのTシャツ着る、幼稚園の服着ない!という日もあります。謎の全身白のコーディネートや、パジャマで登園する日もあります。

前に見学に行った幼稚園的にはアウトでしょう。制服を着てきてね、と注意されるかもしれません。

でもね、着たくないんだもの、それでいいじゃない。

制服を着るか着ないかなんてどうでもいいじゃない。

これが着たい、これが着たくない、があるんだもの。

多様性とは、言葉を操ることだけではなく、誰かの「これがイイ」「これはイヤ」を否定しないことから始まるのではないかしら。

(注:見学に行った幼稚園も、もちろん素晴らしい園だと思います。色々な考え方や、背景があると思います。ただ、私とは少し方針が違っていたという事。)

2014年〜ミャンマー在住。IT企業を現地でやっている夫、現地のローカル幼稚園に通う3歳の息子と一緒に、日々アレコレドタバタやってます。サポート頂いたら、新しいモノコト探しに使わせて頂きたいです!