記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

これまでの記事で書き落としたことのまとめ,2024年3月26日


https://note.com/meta13c/n/n7575b6c0826b

この記事の注意点などを記しました。

ご指摘があれば、
@hg1543io5
のツイッターのアカウントでも、よろしくお願いします。
https://twitter.com/search?lang=ja&q=hg1543io5




注意

 これらの重要な展開を明かします。特に、PG12指定の映画『シン・仮面ライダー』及びその漫画版にご注意ください。

テレビドラマ

『SPEC 零』
『下剋上球児』
『日本沈没 希望のひと』
『JIN-仁-』(1,2)

小説

『SPEC 零』

漫画

『銀魂』
『真の安らぎはこの世になく シン・仮面ライダー』

特撮映画

『シン・ゴジラ』
『シン・ウルトラマン』
『シン・仮面ライダー』

はじめに

 今回は、これまでの記事で書けなかった、書き忘れたことを幾つかまとめます。

「弱さを悪さでごまかす」

 以前「弱さと悪さを区別していない」例を物語で幾つか挙げました。

2024年3月26日閲覧

 その延長で考えたのが、「人助けなどを出来ない弱さを、しない悪さでごまかす」例です。
 『SPEC 零』小説版及びドラマ版では、スペックという一種の超能力を持つ人間や、持たない犯罪者と警察の戦いがあります。
 犯罪組織の人間のディアブロは、心臓を止めるスペックホルダーらしい人間に関係者が殺される事件において、「時間を止める」スペックを持って無敵の攻撃を出来ると言えるニノマエに殺害か捕獲を依頼しました。
 ニノマエは「こんなに大人が集まって捕まえられないの?」と笑い飛ばし、それで相手を怒らせてからスペックでいつでも殺せると威嚇しました。そのように、依頼人や、ディアブロの用意した部下の地居すら粗末に扱います。
 また、探すのにもほとんどやる気を見せていませんでした。実際には地居に記憶をある程度操作されていましたが。
 しかし問題なのは、ニノマエには犯罪者やスペックホルダーを探す能力は特にないことです。「時間を止める」だけではどうにもなりません。
 地居のすすめで、本来敵である警察官の捜査を利用していたのですが、それだけニノマエには探す能力がなく、結局はディアブロ自身の組織と変わらないのです。ニノマエに出来るのは見つけたときの攻撃だけでした。
 それが露呈しにくいのは、ニノマエの「標的を探せない弱さ」が、「真面目に探さない、警護対象が危険でも放置しかねない悪さ」でごまかされていたためでした。
 そのうえニノマエは、警察官の当麻にディアブロを助ける意欲が乏しいところもありましたが、あえてスペックでディアブロを危険にさらして依頼料を釣り上げていました。
 これは『銀魂』で、汚職をした権力者の宇宙人の禽夜を警護するとき、差別される地球人の武装警察の沖田が、尊敬する局長の近藤にかばわれても侮辱する禽夜に怒り、「あえてはりつけにして敵を誘き出して一掃する」、「攻めの守り」をしたのに似ています。
 しかし『銀魂』の場合、沖田などの態度も悪いとはいえ、一応守ってはいる近藤を侮辱した警護対象を危険にさらす「攻めの守り」でしたが、『SPEC 零』の場合はディアブロもニノマエも犯罪者で殺人などもいとわないので、「攻めの守り」の印象はかなり悪いと言えます。
 一応沖田は、自分を「性悪」と認めてはいますから、まだ印象は良い方です。
 このように、「出来ない弱さ」を「しない悪さ」にすり替える例もあるようです。

 

『シン・ゴジラ』と『シン・ウルトラマン』と『シン・仮面ライダー』

 『シン・仮面ライダー』では、キャストに『シン・ウルトラマン』と共通するところがあります。『シン・ウルトラマン』はデザインワークスによると、『シン・ゴジラ』と「何となく繋がっている世界観」にされたらしく、ゴジラに似たゴメスなどがいます。
 しかし、『シン・仮面ライダー』では前日談の漫画版に「これ以上何と戦うの?宇宙人でも攻めてくるわけ?」という台詞があり、「外星人」と呼ばれる宇宙人が実際に来る『シン・ウルトラマン』のような事件は起きていないようです。
 また、そう話したサソリが、本当に本編のサソリオーグと同一人物なのか、本編の本郷のようにプラーナを宿したマスクを別人に与えた存在なのかまだ分かりません。

『シン・仮面ライダー』のイチローと一文字隼人

 『シン・仮面ライダー』漫画版の、イチローがクモオーグと戦うときのスーツの見せ方が、本編の一文字が初めて変身するときに似ています。「変身」という掛け声も含めて、やはりイチローは一文字隼人に何かを託す意識があったのかもしれません。隼人の父親にイチローは敬意を払っていたようですし。
 イチローが「彼」と言う一文字隼人を第2バッタオーグにしたとすると、大量発生型相変異バッタオーグにした「こいつら」という11人がどのような人物だとイチローに認識されていたか気になります。

パターナリズムと「自己責任」論の相互通行

2024年3月26日閲覧

 『シン・仮面ライダー』漫画版では、秘密組織のショッカーに属する緑川弘が言う「大人の落ち度」で、暴走した動物により組織のすでに常人より強い子供のひろみが油断により負傷して、事情を知らない保育園の職員などに知られて騒ぎになったときに、緑川弘はひろみ達を守る意味もあってか、「しばらく組織の施設で大人しくしていなさい」と引き留めました。

 これは、「そうするのがお前達のためだ」というパターナリズムがありますが、少しでも冷たければ、「ひろみ自身が余計な戦いをした責任もある」と「自己責任」論に結び付ける余地もありました。

 現在漫画版でクモオーグとイチローがしている戦いは、クモオーグが「イチロー君には罪が足りない。心の中の暴力が正義を打ち負かさなければならない」という論理で起こしたのですが、イチローが強くなる代わりに凶暴化する「カートリッジ」を使うのを「最初から使えば良い」と言っています。
 この辺りも、「悪いことをするのがイチロー君のためです」というクモオーグなりのパターナリズムと、それに従わずにイチローが弱くなり苦しむのを「最初からそのカードリッジを使えば良い」という「自己責任」論が結び付いたと言えます。
 また、イチローもサソリやクモオーグへの気遣いはしており、組織の仲間のためにも、組織を幹部として「平和」にしていたのですが、それはそれで、「それがクモさんやサソリさんのためだ」という、本人の望まない利益を与えるパターナリズムがあります。
 そしてカートリッジを使い強く凶暴になるイチローが「知らないからな、どうなっても」とクモオーグに叫ぶのは、「自分に逆らい戦いを誘ったのだから、痛い目を見ても知らない」という「自己責任」論でしょう。

 相互通行のパターナリズムと「自己責任」論が重なる例だと言えます。

『下剋上球児』では憲法をどうみなしているのか

2024年3月26日閲覧

 日曜劇場について、政治において、基本的に国民の権利である憲法を政治家や公務員が守る立憲主義と、不況のときは減税や公共事業による景気を良くする積極財政の考えが欠けていると書きました。
 
 その意味で、『下剋上球児』は重要なところがあります。
 『下剋上球児』では、「子供が学校に行くのは憲法で決まっているからだ」とありますが、これも誰の義務と権利なのかの視点が曖昧になっています。
 憲法で決まっているのは、「国民は子供に教育を受けさせなければならない」という義務で、子供ではなく親や保護者の義務です。その上、憲法にある国民の義務はこれと勤労と納税だけで、本来憲法は国民の権利を定めたものです。
 その辺りをぼかし、憲法を国民の、それも子供の義務とも取れるように書くのは、やはり立憲主義を日曜劇場では拒絶している可能性があります。

 その『下剋上球児』の主人公が犯罪で出頭して執行猶予になったのも、憲法による人権の一環であることが重要です。

『日本沈没 希望のひと』の「被災地の公務員の人権」

 また、『日本沈没 希望のひと』では、池上彰さんの番組で指摘された観点からの「人権軽視」があります。
 池上彰さんの番組で、日本で被災した地域の公務員が被災者のために働くのを、ヨーロッパでは「本人も被災しているのにおかしい」、「被災していない地域の公務員が助けに行くべきだ」と批判するそうです。つまり、公務員の人権もヨーロッパでは重視するのでしょう。
 『日本沈没 希望のひと』では、前半の関東の一部が沈没したときに、序盤から登場する東京の官僚の1人が、家族の亡くなったにもかかわらず働き続けたのですが、これがヨーロッパの基準では人権軽視なのでしょう。後半の日本全体の沈没のような状況では、ヨーロッパ各国もよその国に頼るか微妙になるでしょうが、国の一部の災害なら、国全体で助け合うのが日本以外の常識のようです。
 劇中では、東京が災害になっても東京に一極集中のまま政治や経済の仕組みを作り直そうとする副総理が悪く扱われ、最終的に北海道が拠点のようになりましたが、副総理に反対する主人公達にも、「東京が被災したなら他の地方の官僚に頼れば良い」という外国の常識が見えておらず、副総理のような一極集中の発想はあったようです。
 ここにも、東京にしか優秀な人間がおらず、少数の「替えのきかない有能」に依存する発想がみられます。
 日曜劇場では、『JIN-仁-』以外にはそのような傾向があります。

まとめ

 今回は本当に、書き落としたことがまとまったようです。

参考にした物語

テレビドラマ

植田博樹ほか(プロデュース),西荻弓絵(脚本),2010,『SPEC~零~/警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿』,TBS系列(放映局)
塚原あゆ子ほか(演出),奥寺佐渡子ほか(脚本),2023,『下剋上球児』,TBS系列
小松左京(原作),橋本裕志(脚本),東仲恵吾(プロデュース),平野俊一ほか(演出),2021,『日本沈没-希望のひと-』,TBS系列
村上もとか(原作),石丸彰彦ほか(プロデュース),森下佳子(脚本),2009,『JIN-仁-』,TBS系列(放映局)
村上もとか(原作),石丸彰彦ほか(プロデュース),森下佳子(脚本),2011, 『JIN-仁- 完結編』,TBS系列(放映局)

小説

西荻弓絵(原案),里中静流(原作),豊田美加(ノベライズ),2012,『SPEC~零~』,角川文庫

漫画

空知英秋,2004-2019(発行期間),『銀魂』,集英社(出版社)
山田胡瓜,藤村緋二,石ノ森章太郎,庵野秀明,八手三郎,2023-,『真の安らぎはこの世になく-シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE』,集英社

特撮映画

庵野秀明(総監督・脚本),2016,『シン・ゴジラ』,東宝(提供)
樋口真嗣(監督),庵野秀明(脚本),2022,『シン・ウルトラマン』,東宝
石ノ森章太郎(原作),庵野秀明(監督・脚本),2023,『シン・仮面ライダー』,東映

参考文献

庵野秀明,2022,『シン・ウルトラマン デザインワークス』,カラー


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?