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第1回 Science of science研究会へ参加してきました


Science of scienceとは?

今回参加したScisci研究会に説明があります。

主にビッグデータや情報処理技術を用いて、科学を取り巻くメカニズムを明らかにすることに取り組む学際的な学問領域の総称…「Science of science」という単語自体は、科学計量学の祖であるDerek J. de Solla Priceが1963年に著書の中で提唱し、科学活動自体を対象とする研究を総称する名前として登場しました。 類似した分野として、科学史、科学哲学、科学社会学、科学計量学、図書館情報学、政策のための科学といった科学を対象とする学問はありますが、Science of scienceは計算的(computational)なアプローチで科学の裏にある構造に迫る学問領域である点が特徴的です。

https://sciscijp.github.io/scisciconfJP2024/about/

 従来からやられてきた「科学」の分析≈論文の分析(科学計量学)を、ビッグデータを使ってやるようになったということですね。対象としては論文だけでなく、科学活動に関わることであれば、科研費のようなものであったり、査読や、ソーシャルバイアスについても分析しています。

第1回 Science of science研究会の概要

海外では動きが活発化しているScience of science分野ですが、日本でも勉強会が開催されました。

Science of science研究会は、本領域の注目度の高まりを受けて、日本においてScience of scienceに関わる研究者同士の卓越した研究コミュニティを作ることを目的として、有志の研究者によって設立されました。 主要な活動として、年次研究会の開催、Science of scienceセミナーの運営を行い、参加する研究者を中心に優れた研究成果を生み出すことへの貢献を第一の目標としています。 本研究会ではこれらの活動を通じて、トップジャーナルに挑戦できる研究成果の実現、実社会に直結する重要な課題解決に資する議論の場の提供、優秀な研究者の育成・発掘を行い、日本のScience of science研究コミュニティの発展に貢献します。

第1回 Science of science研究会ウェブページより 
https://sciscijp.github.io/scisciconfJP2024/

2024年3月16日(土)、17日(日)に、東京大学本郷キャンパス、伊藤国際学術研究センターで開催されました。
16日はScience of Scienceでよく用いられるデータのハンズオンチュートリアル 
17日は基調講演・ポスターセッション  
が行われました。
運営の方々の尽力に加えて企業スポンサーの方も参加されて、全体で100人規模が集まったそうです。

参加した感想

運営1の感想(イノベーション関連のシンクタンク研究員)

政策検討への活用
 まず現状でSciSci的な考え方が政策検討に使われているかというと、使われてはいますので安心してください。ただし、それはが当たり前になっているかというと、そうではないというのが現状だと思います。
 全ての検討にこういったものを使うべきかどうかは別の議論としてるあるとは思います。私個人の考えとしては、戦略的な研究・開発領域検討であったり、日本の国際的プレゼンス検討といった場面ではもっと当たり前に要素の一つとして使われるべきだと考えています。

SciSci活用に向けて
 私は研究者ではSciSci知見の活用する立場であるため、チュートリアルが最も印象に残っています。素晴らしく整理されたチュートリアルで、私でもいろいろいじれるようになりました。
 将来的には研究の端っこでもう少し深い知見を持ちたいとは思っていますが、まずはいろんな文脈で使ってみる、面白いものは積極的に公開してみる、オープンクエスチョエンにすることで各所からの議論をフィードバックとして改善に盛り込むというスタンスで活動していきたいと思っています。
とりあえず上半期に簡単なレポートを出そうと思いますし、出たらこちらでも報告します。(自分に枷をかける)
 公開情報を豊富にしていくことで各所に少しでも知見をためていくことが、今後の発展に必要になってくると思います。
目指せメタサイエンティスト or メタサイエンスアントレプレナー(小声)。

チュートリアルで遊んでみた

 これを書いている永田は、これまでデータ分析などは全くしたことがありません。大学では少し数理モデルっぽい研究もしていましたが、簡単な確率モデルを用いた研究でした。その後の大学院では研究の場を変えまして、実験系の物理の研究をしていました。
つまり、データ分析の経験がない人がやってもこれぐらいできるって話です。
詳細はチュートリアルへ(リンク踏むだけで簡単に使えます)
https://github.com/ScisciJP/scisciJP2024_tutorial

 今回は関心があるイノベーション領域について、世界の研究動向を可視化してみました。イノベーションが重要だと叫ばれていますが、現在はどういう研究が増えているのでしょうか(≒注目されているのでしょうか)。

イノベーション研究の時系列変化

 今回はあくまでチュートリアルへ参加してきただけなので、いただいたコードをベースにシンプルに比較していきます。(逆にいうとチュートリアルをコピペするだけで、このぐらいは一瞬でできます。)
 Open Alexでトピック「Entrepreneurship and Business Innovation」に分類されている論文に関して、2010年以降,2015年以降,2020年以降という三つの時間スケールで可視化してみました。(それ以外のパラメーターなんかは全くいじっていません)
 そのため、最適な分析というよりどういったことが議論できるのか、アウトプットはどんな感じで出るのかといったところに焦点を当てていきます。(チュートリアルを使っただけでも、実際にはもっと詳細まで見れます。)

簡単な見方
小さい円それぞれが論文を表していて、色ごとにクラスターに分かれている。大きな濃い円はクラスター全体のサイズや中心を表していて、青のクラスター0.0が一番大きく、1.0.2.0と続く数字が順にクラスターサイズが小さくなっていく形です。
 円と円の距離は、引用関係を持って距離が決定されており、雑な解釈として「距離が近い≒研究としても近い」という程度から出発しようと思います。

2010年以降の論文
68,914件の論文の分析
アントレプレナーシップ教育に関する研究(クラスター0.0)が最も多く、その周りにもアントレプレナーシップ関連の研究クラスターが多く存在している。少し離れて、ビジネスやイノベーション、ベンチャーキャピタルといったキーワード出てきていますね。
クラスター9.0「international, internationalozation, immigrant」が中心付近にあります。様々な領域と関連付けられて議論されているのでしょうか。
クラスター12.0「tourism, rural, entrepreneurship」というのがあるのも、すごく不思議ですね。クラスター3.0「social, entrepreneurship, innovation」と関連が深いようですが、なんとなくキーワード的には納得感もありますね。

2015年以降の論文
47,092件の論文の分析
 クラスター0.0が、「innovation, performance, orientation」になっており、アントレプレナーシップやアントレプレナーがイノベーションの中で果たす役割についての注目が高まったのでしょうか。(2010年以降でもクラスター1.0でした。)
 2010年以降でも最も割合の多かったアントレプレナーシップ教育に関する論文の割合は減っているようです。(クラスター2.0がアントレプレナーシップ教育に関するものでしょうか?)
 クラスター3.0「entrepreneurial,entrepreneurship, entrepreneurs」というアントレシップやアントレプレナーそのものに注目した論文が中央に位置している事から、アントレプレナーという存在が様々な領域に関連する中心的な概念であるということが固まりつつある時期だったのかもしれません。

2020年以降の論文
19,982件の論文の分析
 前提的にこれまでのネットワークよりも離散的になっているように感じます。
 クラスター0.0は「entrepreneurial, venture, entrepreneurship」になっており、ベンチャー企業やベンチャーキャピタルといった経済活動の中のアントレプレナーシップについての研究が多いようです。そしてそれが中心に位置しており、関心の中心になっているようです。
また、クラスター5.0「entrepreneurship, entrepreneurial, ecosystems」が新しく増えており、経済活動の中における
 大学やアカデミアというキーワードのクラスターは中心近い場所に位置していることが多い印象でしたが、2020年以降では高い関心を位置しつつも少し離れた位置にあります。アントレプレナーシップエコシステムやイノベーションとの関連も深そうなので、個人的には意外な結果でした。

全体を通して
 当たり前ですが、研究テーマやその繋がりは常に変わり続けているので、当然変わるということでしょう。
 ほかにトレンド的な変化を見てみると、アントレプレナーシップ教育そのものやアントレプレナーシップによるイノベーションといったところが常に大きなキーワードとして出ていました。より最近になってくるとventureやecosystemsに関する研究が増えてきており、アントレプレナーシップという要素が経済活動に与える影響に対する注目が伸びてきている印象です。
さらにいろいろ考察できることはありますが、いったんこんな感じで。
 あくまで引用ネットワークを作り上げただけですが、かなりいろいろな議論ができそうだなと感じてもらえると思います。実際には個別クラスターのネットワーク分析もチュートリアルコードでついてくるので、もっと深い議論ができます。

最後に:メタサイエンスの勉強会「Bento-kai」とは

 今回は第一回Science fo Science勉強会へ参加してきた感想についてお話してきましたが、我々は科学と学術のエコシステムをひろげる、手弁当の勉強会:「Bento-kai」です!
note: https://note.com/metasci_bentokai/n/ne72295e30f28
peatix:https://metascience.peatix.com/
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 これまで第一回、第二回を開催しまして、その勉強会の内容は近日公開。
4/20に第三回を予定しており、「AIとサイエンス(仮題)」で石原尚先生(https://note.com/hisashi_is/)とScience fo Science勉強会にも参加されていた高木志郎さんにご登壇いただきます。
こうご期待!


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