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#2 メイヨーの人間関係論

こんにちは。Kazumiです。
本コラムでは経営学、特に経営管理についてそれぞれのテーマに従って書いていきます。
今回は「メイヨーの人間関係論」です。メイヨーはいくつかの実験を繰り返すことで「人間関係」を見つけたのです。

メイヨーのお話をする前に、「科学的管理法」のもたらした結果について知らせる必要があります。

科学的管理法のもたらした結果

科学的管理法は、確かに基準を作り、労使間の合意を取りまとめ、管理概念を確立しました。しかしながら、科学的管理法は「生産現場の管理」のみに特化してしまい、「やる気を出させる」ことによる効率の追及には至らなかったのです。これはメイヨーの話に入っていきます。

さらに、科学的管理法を推し進めるとどんなことが起きるのかといいますと、労働が単純化し、人間は機械的な労働を繰り返すことになり、ロボットのようになるのです。これは人間の「頭脳労働」を排除することにつながり、人間性が欠けるのです。これは仕事を楽しめなくなる、ということに集約されます。

ここにメイヨーは問題点を見出しました。しかし、突然見つけたわけではありません。先行研究としてはTead, OやMetcalf, H. C.によって人間関係的な視点から指摘や重要性の提唱がされています。

ミュール紡績部門の調査~人間関係論の発端~

このきっかけは1923年から1924年にかけて約1年間行われている、ミュール紡績部門の調査にあります。というのも、「紡績工場の中でもミュール紡績部門の生産性が低く、離職率が異常に高いためにこの改善が必要だ」という依頼があったのです。

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このミュール紡績部門の調査、というものは一体どんなものだったのでしょうか。離職率が250%、そして生産性が低いという状況が、休憩を取り入れると改善し、しかし慌ててやめると急速に低下したということが肝である。そのうえで、復活させたあと、しばらく生産性が低い状態が続いたという点に大きな発見があったのです。

この部分について、「生産性は必ずしも休憩そのものと直結していない」ということが鍵でした。また、メイヨーは晩年気づきましたが、交代休憩には「ある一定の社会集団を形成する」意義があると述べています。

照明実験

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メイヨーら(Harvard Group)が関わったものではないが、人間関係論を語るには欠かせない実験として、ホーソン工場内で行われたものが照明実験である。
この実験は、「物理的な労働条件によって生産性が左右されない」ことを示したものである。どういうことかというと、「科学的に管理をしてもそれは労働効率性を上げる(労働のしやすさが向上する)だけであって、生産の増減に影響を与えないという結果を見つけた、というものだ。

つまり、科学的管理を徹底的に行えば生産性なり労働効率性なりが向上すると保証されていないことが見つかったのだ。

当時は、なぜ保証されないのかがかなり疑問だったわけである。労働条件が整ったら生産性が必ず上がる、というのが当たり前に理解されていたからだ。それを徹底的に調査したのが、メイヨーが人間関係論を刊行することにつながるホーソン実験である。

ホーソン実験

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ホーソン実験は3つの実験を総称している。リレー組み立て試験室の実験、面接調査、バンク配線作業観察室である。それぞれで示唆が出ているのが明らかだ。
まず、リレー組み立て実験を見ていこう。

リレー組み立て実験室

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リレー組み立て試験室では、上の画像の流れで行われた。

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この実験では、
①モラールという存在の発見
②モラールと生産性維持には関係がある、という発見

が語られた。
モラールとは「やるべきことに前向きに取り組む姿勢」であり、これが良ければよいほど熱心に働き、悪ければ悪いほど怠けるようになる、ということが分かっている。

おなじ「暇な時間」でも「いまやること、将来発生しそうなことを素早く終わらせてのんびりしたり談笑している状態」と「指示されたことのみをやって、積極的にやらない状態」ではだいぶ違うのである。
ほかにもモラールが高いならば、他人の仕事を相互に手伝うことはあるが、低い場合「お前の仕事はお前でやりやがれ」となる。
そういうことが発見されたわけだ。

面接調査

筆者作成

面接調査では上の内容が実施された。

筆者作成

面接調査では、2つのことが発見された。

一つ目は、「非誘導法による1 on 1は具体性のある雑談の奨励、および相互理解を構築する」ことである。これは、「面談やりまーす」とドスドス押しかけたり、意図的に呼び出したりするのはよくなく、逆に「コーヒー奢るからどう?」だったり、部下から自発的に上司を呼び出したり、といったりするのが良いのだ。

二つ目は、従業員は事実に基づく不満事実とは関係がない不満の2つを持っている、ということである。後者は感情的なもので、全体的な状況に左右されるのだ。
したがって、図のPoint at ②にあるようなことが理解され、Tipsにあるような考察につながる。

バンク配線作業室

筆者作成

バンク配線実験室では、上の図のような方法で行われた。

筆者作成

この実験での大きな成果は、組織には「フォーマル組織」と「インフォーマル組織」の2つがあることが見つかったことだ。
メイヨー以降の研究ではこのインフォーマル組織に焦点を当てたものも多い。

まとめ

筆者作成

メイヨーの人間関係論は最終的に「経済人仮説 vs 社会人仮説」に集約される。
実験に基づいたtipsとしては、
①労働生産性(労働のアウトプット)は物理的な労働条件によって左右されず、心理的な条件もかかわっている。
②その心理的な条件というものは「モラール」であり、その形成と維持は労働生産性の持続性に大きな影響を与える。
③モラールは「不満」と関係を持つ。その「不満」には事実に基づく不満と事実に関係がない不満の2つがある。
④人間の行動は感情と切り離せず、しかし感情は偽装される。そのため勘定の表現は全体的な状況の中で理解される。
⑤インフォーマル組織が存在する。
の5つとなる。

なお、経済人仮説と社会人仮説については、のちにマズローやマクレガー、ハーズバーグらによって「階層」があることが示されていることを注記しておく。

参考文献

テキスト経営学[第三版] 井原 久光 著


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