十字架よりも重いもの


#眠れない夜に


冬の夜の空気が好きです。

耳の付け根がゴワゴワし始める、
息を鼻から思いっきり吸うと、
鼻の奥がツンと痛くなる、
この感覚が大好きです。
マスクは息吸ったらちゃんとしようね、
人のいない夜の時間にやってね。

迷惑には、
ならないように気をつけてね。

でも、
この季節の夜の空気、
いい事ばかりではない。
思い出したくない思い出も蘇ってくる、
思い出とも呼びたくない。
出来事。

高校二年生の冬、
嘘をついてまでしたこと、
高校二年生の私の嘘は、
それはそれは
分かりやすいものだっただろう。
親は、
信じてくれた。
いや、
信じたフリをしてくれていた、
の間違いかもしれない。
ごめんなさい。
違うよ、
あの時話したことは嘘だよ。
ごめんなさい。

そんな気持ちを、
抱えながら過ごす時間は、
いつもより長く感じる。
嘘をついている時の二十一時は、
体感二十三時ぐらいだ。
携帯の通知をチラチラ見る、
無駄に親に凝った返信をする。
細かく説明する。
思い返すと、
かなり、
分かりやすい。
ごめんなさい。

あの日から、
私の嘘は、
始まった。

嘘にウソを重ねて、
気がつけば、
嘘でできたもう一人の自分が、
そこにいた。

見た目は一緒なのだが、
嘘にまみれている。
私は、
その自分から目を背けるしかできない。
もう一人の私は、
何も言わない。
ただ、
そこにいる。
ずっといる。
影から見ている。

私は、
十字架よりも重い、
自分を背負って生きていかなければならないのか。
私が何をしたっていうんですか。
なぜ
こんな仕打ちを受けないといけないのですか。

嘘をついたからだよ。

そうです。
すみませんでした。

この話もオールフィクションです。

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