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【映画感想】Puppet Master/ハッチング-孵化-(2021)

概要など

北欧フィンランド。12歳の少女ティンヤは、完璧で幸せな自身の家族の動画を世界へ発信することに夢中な母親を喜ばすためにすべてを我慢し自分を抑え、体操の大会優勝を目指す日々を送っていた。ある夜、ティンヤは森で奇妙な卵を見つける。家族に秘密にしながら、その卵を自分のベッドで温めるティンヤ。やがて卵は大きくなりはじめ、遂には孵化する。卵から生まれた’それ’は、幸福な家族の仮面を剥ぎ取っていく…。(C)2021 Silva Mysterium, Hobab, Film i Väst

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解釈
演技やセッティングのすべてがぎこちなく、どこか御伽話のような感じがした。一人の登場人物に感情移入して没入して見るにはリアリティに欠けていると感じたので、全体を俯瞰してそれぞれをコンセプトのある人格の人形劇を観るような鑑賞をするのが一番楽しいと思った。

____________________________ネタバレあり____________________________

人形的な世界観なので、劇中それぞれの登場人物をそれぞれ何かの象徴として捉えてみた。

ティンヤ:母親の期待に応えたいティンヤ
たまごの中の'それ':抑制されたティンヤ

この二つのモチーフは分けて見るとどっちが本当のティンヤか?という疑問が尽きなかったので、一人と一匹(?)で一つと見る。どちらもティンヤであり、映画を通じて二つとして描かれているのはティンヤの心の葛藤と捉えてみた。現実世界のみではなく、プラスα精神世界が入ってきている世界だという見方をとった。

曖昧な括りだけど他には、
母親:自己実現ができなかった大人
父親:臆病で頼りない大人
弟:家族の歪みを指摘できる子供
母親の浮気相手、テロ:母娘のやばい関係性に変化へのヒントを与えたが…
テロの娘:ティンヤの母親の新しい大切なものになりうる危険因子
お隣さん:体操能力への嫉妬因子
お隣さんの犬(ローゼ):お隣さんの幸せの象徴&騒音という不快因子

関係ないけど、
少女と卵というのはモチーフ的に相性がいい。よく出てくる気がする。

最後、画面上ティンヤは刺されて死んでしまうが私はこれを生物的な死としては解釈せず、ティンヤの中の親の期待に過剰に応える側面の死だと解釈した。
たまごの中の自分を母親と一緒に殺しに向かったが、最後の最後でやっぱり「これは私が育てたの!」と庇うシーンで既に母親に対して我慢ばかりする側面は弱って終わる、そしてまもなく画的にも終わりましたという意味で母親に刺されてしまう。…という見方だと美しい展開に見える。

最後の、違和感から生まれた方のティンヤが母親を見下す表情は見てて痛快なものがあった。これからのことを祈っています。

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