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「深刻な不調かも?」気になるメンバーに声をかけるときは…

法律にも記されている“声がけ”の必要性

産業保健師の小林智美です。
これまでに2回、職場でのコミュニケーションについてお伝えしてきました。

伝え方を間違うと、ハラスメントととらえられてしまう可能性もある職場でのコミュニケーション。
誰もがオープンに話すことが得意なわけではないですし、メンバーの価値観もそれぞれですから「よかれ」と思ってかけた言葉が、思いも寄らぬ苦い結末につながる可能性もゼロではないでしょう。

ですが、「難しいから」「リスクにつながるから」という理由で、声かけに対して消極的になってしまうのは得策ではありません。

労働契約法第5条では、
「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」
とされています。

これに照らすと、身体的・精神的どちらにおいても、メンバーの様子に気がかりな部分を認めつつ、声がけ等を何もせずに放置し、結果として何かしらの病気になって休職をすることになると「予見ができた可能性を無視した」と、責任を問われる可能性が出てきます。

気になるメンバーには、上司や同僚が異変に気づいた時点で声をかけ、メンタル疾患等の発生を未然に防ぐ、あるいは悪化を防ぐことが求められているのです。

テレワークが進み、パソコンの画面越しでメンバーの変化に気づくのが難しくなっている昨今ですが、身だしなみや業務の進ちょく状況、表情や態度などには何らかの兆候があらわれやすいもの。
少しでも「おかしいな」と感じたら、まずは声をかけるようにしましょう。

「大丈夫?」以外の声がけの選択肢を

“職場のコミュニケーションシリーズ”の第3弾として、今回は上記のような前提での声がけについて考えてみたいのですが、「声をかけましょう」というと、多くの方が「最近調子悪そうだけど、大丈夫?」といった声がけをしようとしてしまいます。

でも、職場の人に「大丈夫?」ときかれて「大丈夫じゃない」「実は調子が悪くて…」と応える人はなかなかいないのではないでしょうか?
逆に、「大丈夫じゃない」と言ってくるようであれば、そのメンバーはそうとう追い込まれた状況にある可能性が高いかもしれません。

体調が気になるメンバーへのコミュニケションで大切なのは、「相談してみよう」と思ってもらえる声かけをおこなうこと。
成功率が常に100%になる方法はありませんが、比較的コミュニケーションが深まりやすい手法として、ここでは2つのポイントをお伝えします。

① 「オープン・クエスチョン」を使う

質問の種類は、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの2種類に大きくわかれています。

▋クローズド・クエスチョン …選択肢が用意され「はい」「いいえ」で答えることができる回答範囲が限定的な質問
オープン・クエスチョン  …答え方に制限を設けず自由に答えてもらえる質問。より詳細な情報が引き出せる

その人の状態にもよりますが、不調を感じつつも仕事を続けているように見えるメンバーに対して、私はオープン・クエスチョンで声をかけるようにしています。
たとえば、「最近月曜日にお休みが多いようですが、なにかありましたか?」という感じです。

とはいえ、一度の声がけで「実は○○がありまして…」と打ち明けてくれる人は多くはありません。そのことを念頭に、タイミングを見て何度か声をかけるようにしてみてください。
繰り返し声をかけることが、「あなたのことを心配しているよ」というメッセージにもなると思います。
体調不安や悩みを抱えている場合、何度か声をかけることで「実は…」と答えてくれることが、私の経験上も多々ありました。

② 初期段階での「アドバイス」は不要

しかし、こうしてせっかく打ち明けてくれても、相手が再び気持ちを閉ざしてしまうパターンもあります。
その最たる例が「アドバイス」です。

一緒にはたらく同僚のツラさをなんとかしてあげたいと思うあまり、解決方法や提案を一方的に相手に伝えてしまう人が本当に多いのです。

もちろん、「解決策を一緒に考えていく」というステップもあるのですが、それはまだ先の段階。
メンタル不調を感じている多くの社員は、まずは「いま、ツラい」「いま、苦しい」という思いを聞いてほしい、わかってほしいのです。
ですから、話をさえぎって助言や提案をするのではなく、気持ちや考えを否定することなくうけとめ、せっかく話をしはじめてくれたその人の胸の内に最後まで耳を傾けることに注力しましょう。

「仕事が多すぎて、すでに自分のキャパシティを超えている」と相手が話しても、
「もっとこうやって仕事を効率化したら?」とか
「じゃぁ、上司にかけ合ってみようよ」と返す必要はありません。
「そんなの気のせいだよ。あなたは仕事ができる人なんだから自信を持って!」といった励ましも、「いま、苦しい」相手の気持ちを否定することにつながります。

「それは大変だね」「困るよね」そう言って寄り添うだけでいいのです。

必要なのは共感し、相手を受容すること

「いつもと何かが違う」と感じたメンバーに対して、自由に気持ちを吐露しやすい“オープン・クエスチョン”で話をきき、否定も提案もせず、共感を示して受容する
「相談してみよう」と思ってもらうためには、こうしたことを意識して声をかけることがとても大切です。

「なんでもありません」「大丈夫です」と言われても、声をかけたあなたが傷ついたり、落ち込んだりする必要はありません。

「(いまは)大丈夫」という相手の気持ちを尊重し、「心配している」という気持ちを示しつつ、「何かあればまた聴かせてほしい」ということが伝えられるといいですね。

■ 文/小林智美(こばやし・ともみ)
産業保健師、メンタルケア心理士、アンガーマネジメントファシリテーター・叱り方トレーナー

“mezame”は健康とキャリアの両輪で
はたらく女性を支えるプログラムです

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