鶴橋の焼肉屋 - 伝統の起源と未来へのつながり
鶴橋の小さな焼肉屋で働く村田は、ある日、お店の歴史についての話を聞く機会があった。
「焼肉の起源はここ、大阪・鶴橋にあるんだよ」と、店主のおじいさんが教えてくれた。
村田は興味津々で耳を傾ける。
「実は、このお店は昔、在日韓国人の方が始めた朝鮮焼肉屋さんなんだ。戦後の朝鮮部落で『ホルモン焼き』としてスタートしたんだが、それが評判になってね。お客さんからとても喜ばれてたんだよ」
村田は驚きながらも、興奮が湧いてくるのを感じた。
「それがさ、朝鮮戦争の頃にはなんと、お店の周りの地域でも南北に分かれてしまったんだ。南側は今でも焼肉を提供しているけど、北側は料理名を『朝鮮料理』と変えてしまったんだよ」
「でも、なんでそんなことになったんですか?」村田が尋ねると、店主のおじいさんが答えた。
「時代の流れというか、一般の人にも受け入れられやすくするためなんだ。焼肉って言うとやっぱり肉がメインだからね。だから、『バラ=カルビ』や『ロース』を提供するようになったんだよ」
村田は理解したような気がしながらも、まだ少し疑問が残っていた。
「でも、韓国の焼肉って違うんですよね?」
おじいさんはうなずきながら説明する。
「そうだね、日本の焼肉と韓国の焼肉は少し違うんだよ。韓国の焼肉は、ジンギスカン鍋のようにタレに浸して焼くスタイルが一般的なんだ。でも最近では、日本のように自分で焼くスタイルも増えてきたんだよ」
村田は納得しながら、鶴橋の焼肉屋の歴史に思いを馳せる。
「このお店も、ソウルオリンピックの時に大々的なサポートを受けて現在の形になったんですね」
おじいさんはにっこりと笑って言った。
「そうなんだよ。実際に大阪の調理師学校の人たちが韓国に行って、在日の焼肉屋や調理師学校で支援をしてたんだよ。それが今の韓国の焼肉屋の形に繋がったんだ」
村田は感動しながら、おじいさんにお礼を伝えた。
「このお店の歴史を知ることができて、本当に嬉しいです。これからもこの伝統を守りながら、美味しい焼肉を提供し続けたいです」
おじいさんは村田の言葉にしみじみと共感しながら、頷いた。
「そうだね、焼肉は人々を繋げる食べ物だからね。これからも一緒に頑張っていこう」
二人は笑顔で握手を交わし、鶴橋の焼肉屋は繁盛し続けていくのだった。
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