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建築の世紀末

 イタリア・ハンガリー・ウイーンと建築の旅をしたことがあります。
東西冷戦が終わり、共産圏にある程度自由に入国できるようになった時期で、共産圏の人々が、特に子供が、私たちが思っていたような暗さはなく、人懐こく清々しく明るかったのが印象的でした。
 ウイーンでは、朝早くから夕方近くまで、建築や絵画など見て回り一日を過ごしました。ウイーンの街は、雑誌で見かけた風景が続き、時々近代建築家の建物が現れ、そんな中、訪れたのが建築家オットー・ワグナーの連邦銀行でした。正面のファサードは、中世から続いている街のファサードと変わりはなく見分けがつかないくらいでした。ガイドに誘われ、建物に入り一通り案内され元の入口に戻って、ちょっとした好奇心で、さっき見学した建物の裏側に回ってみました。そこで見かけたファサードは、正面の中世的なファサードと違い「のっぺらぼう」な現在私たちが見る近代建築に近いファサードであったことを覚えています。
 近代の意識の分裂、引き裂かれた建築家の姿ではないかと勝手な想像をしながら、そういえば今しがた見学した建物の内部は、幾層にもアトリュウムのような乳白色のガラスの半透明な天井が続き、反復と入れ子の構造が繰り返されていました。現在の明るく透明な、やけにおおらかな建築とは違い、少し陰鬱なそれこそ世紀末(西洋における)的な雰囲気を漂わせていたのが印象に残りました。
 
比較文学論
 「空を飛ぶ鳥の眼と地を這う虫の眼」とは三浦雅士の言葉である。いつからか自分のアイデアと思い込んでいたが、頂きもんでした。
 大学時代の一般教養で学んだ比較文学論のバロックや楕円思考の延長上に上書きされたようです。
 
●ー比較文学論ノート
スイフト「ガリバー旅行記」
 小人と巨人・微視と巨視・顕微鏡と望遠鏡
セルバンテス「ドン・キホーテ」
 ドン・キホーテとサンチョパンサ・中世と近代
ベラスケス「ラス・メニーナ」
  絵画を描いているその絵画に中に、今まさに描こうとしているベラスケスがいる・入れ子の構造
バロック「楕円」 
 二点透視法・神の視点と人間の視点
エドガー・アランポーとフロイト
 「推理小説」と「精神分析」
夏目漱石とエドガ―・アランポー
 「夢十夜」と「大渦巻」
アリストテレスとブレヒト演劇
 「カタルシス」と「異化作用」
シェークスピアとボードレール
 「ソネット18」と「腐肉」
 
 もうとっくに、過去の遺物に近いものですがが、近代社会や近代建築につて考えるとき思い出します。その時々に書き加えられながら現在も継続されてますが、ひとりの人間の時間や営為の不思議さを感じています。。
 
楕円思考と開高健
 盛岡の書店での出来事。何かの用事があり一泊して新幹線の時刻まで時間があったので、書店で時間つぶしをしていた時に目に入った開高健の本である。本は、買わずそこに書かれてあった文章だけ覚えて帰途に就いた。
 
「ええか、男はナ、上を見て生き、下を見て暮らさないかんや、そういうこちゃ。」


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