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色彩

 どこかで聞いた話ですが、日本人は虹の色は七色に見えるそうですが、西欧人は六色だそうです(真偽は判りません)。同じものを見ていても違うようで、もしかしたらわたしが青と思って見ているものが、ほかの人には緑である可能性もあります。国の違いや、時代の違いによって見る色が違って見えているかもしれません。
 近年になって知ったのですが、色には色の三原色というのがあり、それぞれの人々によりに二色の人もいれば、三色の人もいるそうです。人間の進化(歩み)にともない三色(彩色)の方が狩猟に適しているか、二色(無彩色)の方が適しているかなどによる名残(狩猟民族か農耕民族かの違い)のようで、差異があることは何の不思議でもないようです。
 
 大日本インキの色見本帳に日本の色、中国の色などの見本帳があります。同じ色でも地域や国によって色が微妙に違います。イタリアの色は明るく乾いており、日本の色はくすんで湿気を帯びているように感じられます。わたしたちはやっぱりアジアモンスーン地帯に住んでいるのだと、つくづく思います。色の歳時記ということかもしれません、
 
 建物の色決めは、見本帳で色番号を指定し必ず1m角くらいの塗装見本を作成していただき、現場に立てかけ確認しから決定します。同じ色番号の白でも、建物ごとに、場所ごとにだいぶ違いがでます。周りの環境(太陽・空気・樹木・建物など)に影響を受け違う白であると、感じるのでしょう。
 
 同じ設計図書で、建築した建物でも、同じにはなりません。多くの人たちが関与し建築は出来上がっていくもので、そのる営為の集積が要因だと思います。結構集団とか共同ということが、忘れられがちです。短時間で完成する住宅(商品)などと比較してみていただければ理解できるかもしれません。一般的には、設計図書が同じであれば、同じ建物ができると思われていると思いますが、個々の人々の営為が集積した建築とそうではない建築の違いは雲泥の差があります。木材など乾燥のためゆっくりと時間をかけますが、それと同様で周りの呼吸を吸いながら身体をなじませているのかもしれません。
 
 経験的に色は寛容であると思います。
 多少、思った通りの仕上がり(建物の)でなくても、時間とともに周囲に馴染んで、最初の心配は解消されていきます。竣工が完成ではなく、始まりであるということは、住まい手が建築を育てることもありますが、場所や環境が建築を育てるようで素材も同様です。周りの環境により、時間とともに共生していくと言えます。人間や植物、動物だけではなく、有機的なものは、そのような能力を備えているのでしょう。ただし、人工的に加工を施された材料(メンテナンスフリーなど変化をしない材料)は、そのような寛容さは身に着けておらず、時間を許容するものだけが、寛容さと共生をなし得るのではないでしょうか。
 

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