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恋のおわりは

今日から私が以前、恋の病に取り憑かれたように始めた『立ち飲み屋』の話を綴りたく思います。
多くのお客さまに足を運んでいただきました。
多くの友人も日本中から集まってきてくれました。
やんごとなき事情で再び方向転換をするまでの一年半の時間をともに過ごしていただいた皆さんとのお付き合いの話が中心となります。

今日は簡単に店の周囲の雰囲気をご理解いただければと思います。
私は大阪の人間ではありません。大阪は人に優しい街だと思います。
その中でもこの『阿倍野』って街が、素敵に優しい街だとまずはご理解ください。


2015年、私はサラリーマン人生に終止符を打った。
本当はもっともっと早くに辞めるつもりであった。
でも人生はままならないもの。家族の看病、介護、予想もしなかった息子の不登校、自分の将来など考えることなど出来ぬほどいろんな事があった。
しかし、口に出すか出さないだけのこと、誰もがいろんな事を抱えながら生きているのが人生だと思っている。
そして、そんな爆弾を一つや二つ抱えていなければ本当に人に優しくなんかできないとも思っている。

大阪は阿倍野、最寄りの駅はJRでは天王寺駅、近鉄阿倍野橋駅、大阪市営地下鉄では天王寺駅、阿倍野駅とどれも徒歩ほぼ5分の便利な立地だった。
あべのハルカスの裏あたりの飲食店の集まる繁華街の一番隅っこのビルの1階に私の店はあった。

そんな街中ではありながら、この阿倍野、阿倍野区の西に隣接するのは西成区だ。ご存じだろうか、あの『あいりん地区』があるのが西成区である。
東京の山谷、横浜の寿町とならび日本の三大ドヤ街の一つと称する奴もいる。私の店からでも頑張れば徒歩圏内にこのあいりん地区はある。

皆さんはこの『あいりん地区』にどんなイメージをお持ちかわからないがここもまた人に優しい街である。
爆弾を抱えた連中が集まり、その爆弾には触れずに互いをかばい合うように生きている人たちがたくさんいる。

最近星野リゾートが付近との調和を崩すホテルを建て、行政は街のイメージを変えようと策略を練っているようだが間違っているように思う。
そっとしておくべきところなのである。
何度もこのエリアの飲み屋にも行ったが、所詮私はそこを通過するだけの男、そんな人間の行くところではないと思った。
汗を流して働き、一日の疲れを忘れ、日々まとわりつくいろんな思いを整理するためにその日の日当を使い、しばしの幸せを手に入れている人たちの大切な場所に我々が物見遊山で行くべきではないと思っている。

そんなところから歩いてくることの出来る街で私は仕事をしていた。
そんな不思議な、人に優しい街で私は『飲み屋稼業』に恋をしていた。
そして、その恋は実は今も続き、たぶん死ぬまで続くものと思っている。

私の片思いの恋の話を明日からお聞き願います。






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