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そうよ私は昭和の女

時代は目まぐるしく進化している。

友達にせっせと手紙を書いたり、電話のコードを長ーく延ばしてコソコソと隠れるように長電話をしたり、駅の伝言板にチョークでメッセージを書き残したり、そんなこんなをリアルタイムで経験してきた私にとって、今生きているこの世界は明らかに進化し、変化している。

女子は良き妻、良き母親になる為の知識を身に付けねばならず、高卒よりも4年制大学よりも短大への進学が好まれていた。短大を卒業後は「腰掛け」と呼ばれる仕事に就き、良き頃合いで結婚をし退職するのが一般的な流れだったあの頃。「寿退社」という言葉に誰も何も疑問を抱かなかった時代を生き抜いてきたのが昭和生まれの私たち。


そんなことを言いつつも、私自身はその一般的な流れからはみ出して、ついでに日本からもはみ出しちゃって、流れに流され今はフランスに住んでいる。

そのおかげで日本で普通に生活していたら経験しなかったであろうことをたくさん経験してきた。良いことも悪いことも。時には危険な目にあったりもしている。

そうやって人生経験を積んで歳を重ねた私は、自分で言うのも何だかおこがましいが、社会の変化に順応できる柔軟性を身につけていると思っていた。順応しなければ生き残れない環境に直面してきた経験があるからだ。


先日のこと。

使っているヘアブラシがドライヤーの熱で変形し、いよいよダメだこりゃとなったので買い換えることにした。

ついでにヘアピンも買っちゃおうと思ったので、何でも揃っているHEMAへ行くことにした。HEMAはドイツ発の雑貨ブランドで、無印と100均を足して割ったようなラインアップのオリジナル商品を取り扱っている。

ちょっとした生活雑貨が必要なときにのぞいてみると、スーパーで売っている雑貨よりも手頃な値段でクオリティーの良いものが見つかるからよく利用している。しかもここ数年、商品開発に力を入れているようで、訪れる度に新しい商品が出ているから見ていて楽しい。


だからヘアブラシを買おうと思った時に、私は迷わずHEMAへ行った。

入り口のところにはパック(復活祭イースター)用のチョコレートや飾り付けが華やかに陳列されていた。

もう4月かぁ、早いなぁ、なんて感慨に浸りながらパックグッズを一通り眺めてから奥へ進み、洗面用品を売っているセクションへ。

目当てのブラシを見つけ、ヘアピンではなくヘアクリップを買うことにした。ピンよりもクリップの方が使い勝手が良さそうだったからだ。そしてブラシとクリップを手に持ったまま、その周辺の陳列棚を見て回った。


何か他に良いものはないかな〜。

全体的に以前よりも少し値段が高めなのが気になるものの、フランス全土の物価が上昇している現状を考えると多少の値上げは仕方のないことだ。

あ、ティッシュのデザインが変わってる。

ネイルカラーの新色が出てる!

生理用ナプキンやタンポンまで出してるんだ、へぇ〜。

へぇ〜(ウロウロ)

へぇ〜(ジロジロ)

ヘぇ〜(フムフム)

ん?

は?

はて?

軽石や爪切り、カミソリやシェービングクリームなどが売っている棚を流し見ていると、種類豊富なタイプ別の生理用品が目に入り、その上にはコンドームまで並んでいた。

まあそのくらいなら普通のスーパーでもよく見かける光景なので、ハイハイハイ、と気に留めることもないのだが、その更に上の方にピンク色で丸っこい形や棒状の形の写真がプリントされた箱が並べられているのが目に止まって何だか気になった。

値札を見ると20€前後とそれまで見ていた商品より明らかに高額だ。

ナンジャラホイ?

コンタクトレンズを着けてはいるが、歳のせいか最近ピントがボヤけることがあるので目を凝らさないとハッキリとよく見えない。

何だろう?

立ち止まって凝視すること数秒。

商品名のところにVの文字が見える気がする。。。

そこで私はハッと気がついた。

いかんいかん、こんなものを凝視してはいかん!

慌ててボディーソープ類が置かれている隣の棚へと視線を移した。


もう長いことフランスに住んでいて、際どい街頭広告にも慣れっこのはずなのに、やっぱり私は昭和生まれの日本人。

ファムテックという言葉の存在は知っているし、女性のカラダの大切な一部としてケアを要するということも理解している。

だけど、中高生が好きそうな安くて可愛い色が揃ったネイルカラー越しにそんなものを目にするとは思ってもいなかった。

不意を突かれて本心が出たのだ。

SDGsや多様性なんて当然のことでございますわ、オホホホホ!なんて令和の先端を担う世代の違う若者たちと肩を並べて歩いている風に見せかけてはいるけれど、所詮は昭和の女。

間抜けな顔をして見つめていたのがバイブレーターだと気が付くと、ドギマギしてしまうのだ。


やっぱり私は昭和の女。

Intimacyのしっくりとフィットする日本語訳が思い浮かばない。


それにしても時代は目まぐるしいスピードで進化している。

日本でもそのうち無印や100均で手軽にバイブレーターを購入できるようになるのだろうか?それとももうとっくにそんなものは売られていて、進化の波に乗れていない私が知らなかっただけのことなのだろうか?

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