ケトジェニックダイエットの目的

前回はケトジェニックダイエットを行なう上での注意点を書きました。世の中には痩せるという事を目的としたダイエットの方法がとてもたくさん存在しています。それぞれに効果の違いや向き不向きの人がいたりするようですが、目的は「痩せる」の一言に尽きるのが現状のようですね。そして、それぞれの方法も、開発した方々はずいぶんいろいろな苦労や工夫の末に出来上がったものです。

ケトジェニックダイエットもダイエットという言葉が付いているくらいですから「痩せる」という事は間違いなく含まれていると考えるわけです。でも、ちょっと待ってください。そもそも論になりますが、ケトジェニックダイエット自体は痩せることが目的ではありません。治療食といった意味合いで始まった食事療法のようなものを実践したところ、結果的に痩せたという事から始まったと考えることが出来るんです。

「それじゃ、なぜダイエットという言葉を使うのか」、そんな疑問が出て来るかもしれません。確か、3回ほど前の文章で、ダイエットという言葉について書いたと記憶していますが、そもそも英語のダイエットという言葉に「痩せる」という意味はありません。手元に英和辞典があれば調べていただければよいと思いますが、「普段の食事」と「規定食、治療食」といった意味になっているはずです。違う意味が記載されているとすれば「国会、議会」といった意味でしょう。

このケトジェニックダイエット、というよりもこの場合はケトン体食ですが、その記録はヒポクラテスの時代にまでさかのぼります。対象はてんかんの患者さんだったそうですが、その頃は今の時代と違って、薬も計測の機械類もありません。どうやって治そうとしたかというと、絶食と祈りだったのだとか。「?」となるような方法ですね。祈りといっても、護摩を焚くような加持祈祷ではなかったと思いますが。

しかし、驚いたことに、それなりの治療効果があったのだとか。例えば、数日も絶食をすれば強制的に糖質オフの状態になりますので、体の方は仕方なく(?)脂質を燃やす(ケトン体を利用する)モードに切り替わります。その結果として、中枢神経の興奮が抑制される方向に働いたのだと解説されていました(もちろん、解説は現代の医師が行なっています)。祈りは精神の安定をもたらす効果がありますので、これも効いたようですね。

この原理をうまく使えば今の時代でも使えるんじゃないか、そう考えたかどうかは分かりませんが、てんかんの患者さんにヒポクラテスの時代に行なっていたことをアレンジして実践した医師が現れました。アメリカ人の医師なのですが、彼は「絶食はとてもツライ思いをするから」ということで、代わりにケトン体食を摂らせたのだそうです。といってもその内容は、糖質を摂取させずにほとんどが脂質だったのだとか。食べにくかったんじゃないかと思いますが、これによって発作が劇的に軽減したとのことで、正式に治療食として認められるところにまでいったのだそうです。

その前にフランスやアメリカの別の医師が、てんかんの患者さんに絶食をさせることで発作を軽減させるという実績があったようです。そこから発展した形が、より成功した秘訣のようですね。今から100年ほど前のことです。

このてんかんの患者さんが痩せたかどうかは記録されていません。多分、少しやせたんじゃないかとは思いますが、ここでは痩せるという意味は全く出て来ませんよね。患者さんに指示した食事はケトン体食ですが、目的はてんかんの治療です。ですから、治療のための食事だったはずです。規定食・治療食としてのダイエット(痩せると意味ではありません)、ひょっとしたらこの辺りから日本人はカン違いをし始めたのでしょうか。

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