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ノーマン・レーベンのディランへの影響(まとめ)

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

※「英詩のマガジン」の副配信です。

7回にわたって連載した「ノーマン・レーベンのディランへの影響」をまとめたものです。元記事は次の通りです。

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Norman Raeben (1901-78) とボブ・ディラン (1941- ) の関係を論じた文章がある。'Raeben's influence on Bob Dylan' といい、Bert Cartwright という人物が2001年頃に書いた文章らしい[といわれているが、下記の Bauldie 編の書が初出とすれば少なくとも1992年以前の文章と思われる]。著者とおそらく同一人物と思われる人が 'Bible in the Lyrics of Bob Dylan' (Wanted Man Publishing, 1985) を著している。

この文章は、ふつうには読むことが難しいので、ここで翻訳し紹介してみたい。[この文章は John Bauldie, ed., 'Wanted Man: In Search of Bob Dylan', 1992 (下) の '1974: The Mysterious Norman Raeben' の章 (Bert Cartwright 執筆) にも収録されている]

ノーマン・レーベンはディランを考える上で非常に重要な人物なのに、ライフ誌の評伝 (下)や ヘイリンの伝記(Clinton Heylin, 'Behind the Shades') などに出てくるほかは、主要な伝記に出てこない。正体が謎につつまれた画家だ。イディシュ語の作家 Sholem Aleichem (1859-1916) の息子である。

では、以下、この文章の翻訳。連載時の段落分けを「*」にした。ディランの発言部分は背景色を変えた。連載時の解説や解釈は省略した。

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ノーマン・レーベンはボブ・ディランの人生に最も大きな影響を与えた人物の一人だ。ディランが言うには、70年代半ばにディランの作歌能力を生まれ変わらせたのはノーマン・レーベンだった。ディランはさらに、ノーマンの教えと影響が大いに彼の人生観を変えたので、妻のセァラ (下) はもはや彼を理解することができなくなり、そのことがディラン夫妻の結婚の破綻につながったと、示唆している。ノーマン・レーベンのディランへの影響の大きさを考えると、1980年に出版された大ディラン伝のどちらにもレーベンへの言及がないのは妙である。

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