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テティスへの手紙

 初めて君と出会った時、僕はまだ子供だった。
 君はすでに大人で、しっかりとした自分の考えを持っていた。
 正直言って、あの頃僕は、君の考えがよく分からなかった。
 だけど今なら、君の気持ちが分かる。
 君の考えが理解できる。
 あの時僕は、何が何でも君を守るつもりだった。
 だけど実は、僕の方こそ君に守られていたのもしれない。
 なにしろ五年前の僕は、本当に無茶な事ばかりしていたからね。
 でも君は、なかなか本当の事を話そうとしなかった。
 確かに君の言う通り、最初から本当の事は全部話せない。
 特に君のような立場に置かれた人なら、なおさらだ。
 だけど僕は信じていた。
 君が本当の事を話さないのは、きっと理由があるからだと思っていた。
 そして実際、その通りだった。
 初めて君の星の話を聞いた時、僕にはすぐに理解できなかったし、とても信じられなかった。
 そもそも僕達は、全く別々の星で生まれ、全く異なった環境で育った。
 住んでいた世界もまるで違う。
 だけど僕にとって重要なのは、君との違いよりも、たった一つの共通点だ。
 もし僕が普通の人だったら、君と出会えても、すれ違ってしまったかもしれないからだ。
 君も知っているように、僕は生まれつき喋る事ができない。
 昔はその事を恨んだりもしたが、今はそうでもない。
 むしろ感謝している。
 こうして、君と話せるようになったからね。
 だけど最初は、君の不思議な力、念話には驚いた。
 でも君と自由に会話できるようになって、僕は大きく変わった。
 今から考えると、生まれつき喋る事ができなかった事も、君と同じ能力があった事も、全て君と出会うためだったんじゃないか、と思う時がある。
 運命的なんて言うと、君は大袈裟だと思うかもしれないけど、少なくとも僕にとっては、そうだった。
 そしてそれは、この星にとっても、そうだったんじゃないかな。
 あの人は、もし最初に君に出会ったのが俺だったら、こんな事にはならなかったと君に言ったけど、それは無意味な仮定だと思う。
 あの後君は、彼の考えは理解できる。
 彼の立場なら当然だと言っていたけれど、僕は今でもあの人の考えに賛成できない。
 君も知っているように、君がこの星にやってきた事に関して、僕とあの人では意見が全く正反対だった。
 でもこれだけは言わせてくれ。
 もし最初に君があの人と出会っていたら、恐らく僕達は出会えなかったと思う。
 ごめん。
 僕は嫌な奴だね。
 でも君は、最後まであの人の事を気にしていたようだったから、どうしてもこれだけは、言っておきたかったんだ。
 僕は嫉妬していたのかもしれない。
 僕はあの人のように力もなければ、権限もない。
 でも五年前の僕は、君を守る事に誇りを感じていた。
 そしてすでにこうなってしまった今でも、その気持ちは変わらない。
 これは本当の事なんだ。
 だから最後に、一言君に伝えたい。
 僕はいつでも君が、この星に遊びに来る事を願って止まない。

                                                                                               空と海の狭間で
                       ジュリアン・カラヴェル

『空と海の狭間で』2/10話 序章 天から落ちてきた女


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