見出し画像

柵の内側のオリンピックにTOKYO2020は値しない。

東京オリンピック開幕まで1週間となった。
昨日の東京都の感染者数は1308人だった。

感染爆発予定開始の1週間前となり、都内では見慣れたアクレディテーションを首から下げている人々を多く見受けられるようになっている。すでにこの段階でバブル方式は崩壊しているのだが、そんな人々を目の当たりにしてしまうとなんだか懐かしくも感じてしまった。これからが慌ただしくなるであろう新国立競技場を鉄格子の外から撮影していると、馴染み深いとある大手新聞社の若手に挨拶をされた。

そこでふと考えてみた。もしこの状況下で、自分も首から顔写真入り迷子札を掛ける立場だったらどうだったであろうかと。本当に心から開催反対の立場をとれたであろうかと。毎日少なからず人が死にゆく中で、自分は、オリンピックは、柵の内側は別世界とばかりに笑顔で選手の活躍の写真を撮っていられたのだろうかと。選手を含め感染していくだけではなく、無策の政府に追いこまれて自殺する人々がいる中で。

私自身、スポーツ業界の汚い部分を多く経験してしまった。すでに嫌になって身を引いた身分ではあるが、オリンピックはフリーランスには何かしらのスペシャルがないと経験する事は不可能な大会である。日本には日本に割り当てられただけしかプレスパスは存在しないのである。それを大手通信社、新聞社で分け合う。そんな限りあるパスは普通は手にする事すら出来ず、それはフォトグラファーに限らず社員カメラマン含めて一種の勲章にも近いのではなかろうか。

競争社会に生まれ、名のある大学を卒業し、大手新聞社に入社、古いシステムの日本社会の縮図のような会社員として縦社会にいる若手がようやく認めてもらい、夢にまでみたオリンピック班に入る事が出来た。それがここ東京で開催されようとしている。大会中、日々の言葉に苦労することもなく、衣食住にも何ら不自由もなく、オリンピックという大舞台が経験出来る。この事は、スポーツを職業とした誰にとっても何モノにも変え難い誇りと喜びに違いない。このオリンピックに出場する選手も複雑な心境であるに違いないだろうが、立場違えどまったく彼らと同じ心境に違いない。

ただ・・・。

ただ、今回この東京で開かれようとしている大会は前出オリンピックのようなオリンピックではない。

ここにあるのは笑うこと喜ぶことすらはばかれてしまう状況が柵の外にはあり、ここには心からの笑顔がない。

別世界であるはずの柵の中でもスタンドを埋め尽くした観客からの拍手も歓声もない。

選手が観客の声援を力にして大舞台で活躍出来るように、観客の居ないスタンドとともに写す写真にその競技の面白みは表現出来ない。選手の活躍、躍進、悔しさや悲しさはスタンドの観客とともにあり、空気感とともにそれらの感情が詰まった写真撮影こそが経験すべき本来のオリンピックであった。勲章となる撮影であった。今現在進行中の世界的な感染状況は残念ではあるが、それ以上にこの東京オリンピックはそんな貴重な大会を政治利用、商業利用で台無しにしてしまった。そんな嫌な大会を1週間後から行なわれようとしている。そこにある笑顔、喜ぶはずだった人とともにある死者感染者。

開催するのは今じゃない。

無理矢理開催されることによって、そしてオリンピックというモノ自体の存在を陥れてしまった今回の東京オリンピック。これが最後、2度と開催する事すら無くしてしまったであろう今回の東京オリンピックである。実際には今後開催出来る都市すら少なくなってきているために、もしかしたら2036年にイスタンブールとともに再び立候補したら、もしくは2040年、それ以降にでも立候補したら競合する都市はないかも知れない。しかし嘘で固められた今回の東京オリンピックのツケをそれまでに払い終われるはずもない。そしてこの大会も貴重な経験であるはずだったのに逆に都民、国民は嫌な記憶として再び誘致を許す事ない。アルマゲドンが起きても今後ないであろう。そして実際には歴史に刻まれる原発事故も終わっていない地での大変異株発祥の地としての開催地として世界も認めないであろう。

「金メダルを獲り、感動を、勇気や元気を与えられるようにしたい」と経験の浅い選手は言う。「スポーツは勇気をくれる」と経験の浅い製作者による広告は言う。しかし感動や勇気、元気、それだけではない『感情』は与えられるものでは無く、受け止める側に100%委ねられる。残念ながらこの状況での東京オリンピックへの感情は良い方向には向いていないことくらいはいくら若手といえども肌で感じなければいけない。そうでなければスポーツ自体が悪いこととして記憶され、選手やメディア、スポンサー、関係者という前に人としての価値が問われることとなる。

しかしこの東京オリンピックはこれまで私が感じて来たスポーツ業界の取り巻きによる汚さを多くの人々に晒してしまった。

画像1


よろしければサポートをお願いいたします。 サポートしていただけますことが次へとつながります。夢をひろげて笑顔をひろめていきたいと願っております。