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余市の大地でぶどうの収穫 2日目 (10/18)

ドメーヌタカヒコ(Domaine Takahiko)
3度目の訪問なのですが、タカヒコさんの畑はいつ見ても神々しい。

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私が参加した日は10日以上に渡る収穫の初日でした。今年の余市では、ピノノワールは豊作らしく、ここも昨年の1.5倍以上の収穫の見込みでした(実際は2倍増だったらしいです)。豊作と同時に灰かび病になってしまっている実も多く、カビが着いて糖度が凝縮した葡萄は、ブランドノワール(黒ぶどうで作る白ワイン)になります。ひとりで2つのコンテナーを使い、収穫と同時に選果をしながら収穫を行います。

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収穫後は、余市の町もことや畑や農家の作るワインのこと、そんなトークを交えてのワイナリーツアーがあります。ドメーヌタカヒコの畑で作っているのは有機栽培のピノノワール。硫黄や銅、石灰や微生物を使い、それもビオディナミの基準より少ない量の使用で、余市の大地を舞台に農家が作るワインの安定究極系、人為的な発酵や殺菌や殺虫剤は行うことなく、ぶどうも風土にあった持続可能な方法を取り入れてます。

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日本の風土、余市の土地は、森、山。虫、雨、湿度などにより、発酵には好条件。森が微生物を連れてきて勝手に発酵が起こる。有機栽培は土壌が大切なので、できるだけ微生物を豊かに、そして、いろんな菌がいる良い条件で、心地の良い環境が作られる。貴彦さんが目指されている余市のピノノワールは、決してブルゴーニュではなく、日本の大地、風土、食と合う、柔らかい水が作る出汁のような旨味と繊細さを感じる世界のどこにも真似ができない不思議な味、全房発酵による日本の風土が表現されたような複雑み、そんな味を追従して自然の中で対峙していく... 土瓶蒸しを飲んだ時のような、お香のようなホッととする感じ、おばあちゃんのウチのような、涙が湧いてくるような、感動的な、カビのような湿った世界観... (貴彦さんのお話しより抜粋)そういうものを余市のピノノワールで表現されたいという、生産者として熱い想いを語って下さるのでした。

冷気を纏い柔らかなカビのような空気を感じるナナツモリピノノワールのトップノートと、忘れていた幼い時の記憶のおばあちゃんちの暗い物置き部屋の冷気がクロスオーバーしていろいろな感情が込み上げてきました。

昔、母の実家は札幌市内の古い木造家屋で理容室を営んでいました。祖母はいつもかすりや大島の和装で割烹着を着ていて働き者。飯寿司や塩辛、沢庵、漬物など仕込んでいて、そういった物達が居間の奥の扉の向こうにあった暗い納屋で保存されていました。ナナツモリの香や味わいで蘇る幼少の頃の記憶。幼い当時の私にとってはひんやりと暗く、不思議な匂いのする薄気味悪い場所だったのに、蘇ってきた記憶は白熱灯の電球の暖かさに照らされた納屋の手作りの保存食と亡き祖母の愛情... すごいな。五感で刺激を受けました。


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