失恋したときに聴こえる音

aiko が、「切れた電球を耳元で振ってさよならという音をきく」という曲を歌っています。


初めてこの曲を聞いたときから忘れられないフレーズ。
この曲、出だしから最高。
「しかし連絡がないな」で始まるんです。不安定なメロディに乗った不安定な歌詞。


aiko の歌はどれも好きだけれど、切れた電球~のフレーズが何年たっても刺さって抜けない。

私は、切れた電球を耳元で振ってみたことなんてない。振ってみようと思い立ったことさえない。
だけど、振ったことはなくても、それが幸せな音でないことくらい想像できる。
 
でも、想像できるはずなのに、歌詞の中では切れた電球を耳元で振るんですよね。
振って、理解してたはずの失恋をもういちど確かめる。ちゃんと、「理解する」。
耳元で切れた電球を振れば、「さよなら」の音がするそうです。
ものすごい感性じゃないですか。


失恋したときに聴こえる音って、何だろう。
って私なりに考えてみました。

ちなみに私が定義する「失恋」は、付き合っていた人とお別れすることではなく、「好きな人を好きだと思わなくなった瞬間」です。
だから、どうやって別れを切り出そうか悩んでいる時間は、もう「失恋後」のことです。なんだか書いていて切なくなってきた。


私は、失恋したときの音は、その瞬間によって違うんじゃないかと思います。
aikoの歌では、たまたま切れた電球だっただけで。
その時に最も寂しい音を耳が拾うんじゃないかなあって。

例えば、にぎやかな深夜のバラエティ番組の音。駅のホームのアナウンス。

さっき、最も寂しい音、と書いたけど、もっと正確に言えば、「寂しい音」よりも「自分が寂しいことを目の当たりにさせてくるにぎやかな音」とか、「現実(自分の気持ち)と明らかにかけ離れている場違いな音」と言った方が正解かもしれない。

大好きだった人のことが大好きと言えなくなってしまった夜に流れていた番組名も分からない深夜番組の映像の一コマを、私は今でも忘れられない。

また、音だけじゃなくて、私たちは失恋を五感で拾ってると思います。
例えば、髪についたタバコの香りとか。夏の夜の少し涼しい風とか。明るすぎる自転車のライトとか。


aikoの曲みたいに、切れた電球を耳元で振ったことがある人はなかなかいないと思うけれど、失恋なんかに構わずまわっている毎日の音、失恋したにもかかわらず、しっかり耳が拾ってしまう音が、一番の切なさになったりすることもあるんじゃないかなあって。


ねえ、失恋したときに聴いた音はどんな音だった?って、たくさんの人にきいてみたい。


ゆっくりしていってね