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守られたいし守りたい

妄想が好きだ。

お金のかからない、最高の暇つぶし。
妄想は自由だ。
どんな自由で勝手な行動も、妄想上では許される。
好きな人から告白されたり、憧れの芸能人と遭遇したり。
小学生の頃は、例え刑務所に入れられても、妄想さえしていれば、1週間は乗り越えられる、なんて甘いことを考えていた。
(今は到底無理だけど。幼い頃の自信って、恐ろしい)
妄想好きになったきっかけは、恋愛ドラマや漫画の影響だろう。
そこから、オリジナルの胸キュンストーリーを派生することの面白さを覚えた。

妄想は、まるでフォルダのように、お気に入り作品を脳内に保存している。
当時、お気に入りだった妄想がある。

『レッドシアター』というコント番組が流行していた頃。
私は、ジャルジャル後藤のことが、なんとなく気になっていた。
一見どこにでもいる青年のようで、よく見てみると中々に顔が整っており、塩顔ブームの先駆けといえる、薄めの顔。
シュールなネタや、ビートルズのファンという点が、他の若手芸人にはないおしゃれな雰囲気を漂わせる。
そんな彼で、こんな妄想を描いていた。


私はどこにでもいる女の子で、カフェでバイトをしている。
おっちょこちょいな私は、ある日バイト中に、ガラスのコップを落として割ってしまう。
焦ってガラスに触れてしまい、案の定指は血だらけに。
それを見かけた、バイト先の先輩・後藤さんは、『大丈夫か』と駆け寄り、休憩室で手当てをしてくれた。

傷の応急処置が終わると、
『もうこんなことしたらあかんで。2度とすなよ!』
と、真剣に、私の目を見て、叱ってくれた。

私のことを心配してくれた、彼の優しさに、なんだか、ときめいてしまったのだーーー。



くだらねー、しょーもねー、って、突っ込みたくなるだろう。
しかし、これは、小学生か中学生なりたてか、その年代の少女が膨らませた、とある妄想なのだから、多めに見てやってほしい。
『2度とすなよ』は、ジャルジャルのコントで出てきた、セリフだろうか。
そこを拾い、ここまで世界観を作り上げた点は、そこそこ評価されてもよいのではないだろうか。
生粋の妄想好きは、ここまで極めてしまうのだ。
暇だったのだろう、昔は。
暇だから、延々とこんなくだらない妄想を生み出せたのだろう。
この妄想を、ブログに投稿することもなく(当時はTwitter、インスタが普及していなかった)さらに広げて、作文コンクールに応募することもなく、ただ、自分自身が楽しむために、繰り広げていた。
承認欲求や、自己成長とか、全く気にせず、好きな世界を描く。
文章を書く上で、この気持ちは、忘れたくないな、と思う。
今は、上達したいので、そんなピュアな気持ちだけでも、もちろんいけないのだけれど。

私が、文章を書くことが好きになったきっかけは、こんな妄想癖から、きているのかもしれない。

私の描く妄想の共通点は、2つある。
1つ目は、イケメンが出てくること。
2つ目は、そんなイケメンが、私を守ってくれること。
ジャルジャル後藤の妄想も1つの例だ。
傷の手当てをしてくれる点は、自分を助けてくれる、いわば守ってくれる行動である。
嫌がらせから守る。看病をしてくれる。泣いている時に慰めてくれる。
守って欲しかった。
それが、イケメンなら、尚のこと妄想に磨きがかかる。

妄想癖は、自分特有のものだと思っていたが、どうやらそんなこともないらしい。
意外と、身近にいた。
彼氏だ。
彼は、小学生の頃、教室に虫が出た時に退治する、など、『自らがヒーローになる』という妄想を楽しんでいたそうだ。
私と、全く逆だ。
これが、男女の違いかな、と思ったが、今は多様性警察が厳しいので、何事もジェンダーで分けるのはよそう。

守られる妄想ばかりしてきた私と、守る妄想ばかりしてきた彼。

同じ妄想でも、全く世界観が違う。

そういえば、最近『守られる』展開の妄想をしていない。
恐らく、自らの恋愛の経験を経て『こんな少女漫画みたいな展開、ありえない』と現実を受け止めていったのだと思う。
そんなことより、今ハマってる妄想は『自分が輝いている』展開。
例えば、仕事で成果を出すとか、甥っ子を上手にあやすとか、最高にきまっているコーディネートで、街を歩くとか。
noteが大バズりするとか。
こんなこと書いてて、恥ずかしくないのかと嘲笑されるだろうが、妄想ってのは、なんぼあってもいいですからね。

守られる展開に飽きたのもあるが、メソメソして、王子様に助けてもらう自分より、生き生きしている自分の方が、理想だと、考え方が変わったのだ。
数々の恋愛ストーリーに触れ、女性が自立した姿を見て、影響された、というのもある。

守られたい欲が強かった私が、ここ最近は、『彼が落ち込んでいる時は、自分がそばにいることで、元気になってくれたらいいな』と考えている。
カッコつけている様だが、本当にそう思う。
彼が仕事で疲れている時、人間関係で悩んでいる時、上手いアドバイスはできないが、自分の言動で、ちょっとでも癒されたら嬉しい。
守る、なんて立派なことは難しくても、少しでも支えになりたい。
今まで、私を、支えてくれた、守ってくれた人達のように。

彼は、優しい言葉で、私を守ってくれる。
『君がどうしたいか、それでしかない』
周りの目を気にする私に、ずっと彼は、そう声をかけてくれる。
また、行動でも、優しさを感じている。
辛いことがあって、車の中で泣きながら電話をかけた私に、会いにきて、頭を撫でながら話を聞いてくれた。
仕事で疲れて身体が動かない、と訴える私に手のひらで両目をホットアイマスクのように温めてくれた。

守られてるな、と思う。
これまで生み出した妄想が陳腐に感じるくらいである。

妄想は自由だ。
いつでもお姫様にもなれるし、ヒーローにもなれる。
現実では、お姫様も、ヒーローも、どちらも、両立させた女性でいたい。

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