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「絵柄が古い」と言われたら考えてみてほしい3つのこと

この文章は全て敬称略です。

先日書いた漫画絵の考察が想定より読まれてるみたい。


で、↑が長くなったあまりに書けなかったことがあるのを思い出したので拾遺として書いておこうと思う。

もし絵師のあなたが読者や同業絵師などから「絵が古い」と言われたとする。
その時に考えてみていただきたいいくつかのポイントがある。

1.本当に絵柄が古い自覚があり、昔の惰性のまま描いている場合は絵柄改造も視野に入れる


日本の絵師の大半は幼少期〜思春期にハマった漫画家の絵柄の模倣から始まることが多いと考えられるので、絵にも時代が出る。
思春期に好きだった漫画家の絵柄の各パーツが全てが完全に自分にとってツボである場合は除外して、なんとなくの惰性で描いているだけなら絵柄改造の余地がある。

完全にツボであるならそのまま突っ走る方法もないでもない。
例えば鳥山明の絵柄のフォロワーは多く、モブキャラも含めるとそっくりさんはなかなか多い。
その絵柄フォロワーの中にも超有名漫画家も複数おり、そうやって大漫画家から次の大漫画家に引き継がれる絵柄というものも現実にはあるので、そこは各々判断していただきたい。

絵柄改造には対症療法と根本療法がある


なお、絵柄改造には対症療法と根本療法があるのだが、どちらを選ぶかはご自分のスタンスに合う方を選ぶと良いと思う。
とにかく売れたい、自分らしさを捨ててでも売れたい(ただし売れる保証はない)なら前者、ご自分がご自分であることを重視するなら後者を選ぶと良いだろう。
ただし後者はすぐに成果が出るものではないことに留意する必要がある。

対症療法は他の方もたくさんのnoteや他のSNSで発信してる通り、「流行りの」「売れてる」絵柄をリサーチして取り入れることだろう。
ただし、自分にとって心地よいと感じる絵柄の方が良いと思う。
何が良いのかわからない絵柄を機械的に取り入れても愛がなくて続かないからだ。
あと、自分の絵のどういったところが古いのかを客観的に振り返る視点も必要になる。
絵柄の古さの改善のみならず画力向上には客観的視点、自分で赤ペン入れるくらいの他人のような姿勢が必須と言える。
なぜなら機械的に他の絵師の絵柄を部分移植すると全体バランスや整合性の取れない絵になる場合もあるためである。

一方根本療法はリアル人物デッサンから絵柄を作ることである。
リアル人物デッサンを試しにやってみると、今まで手癖で描いていた好きな漫画家の模倣で描いていた記号化済の絵柄が、どこをどのように省略、デフォルメして完成したものなのかを追体験できたりする。
逆に言うと、リアル人物デッサンから別の絵柄を作ることもできるわけである。

そういえば前回絵柄考察noteを書いた時に他国の達人絵師に言及したが、実際に記号化済→リアル系に変えて連載作品を描いている達人某国絵師がいる。
やはりリアルデッサン力があると絵柄の変更が比較的容易と考えられる。

2.多少の絵柄の新旧にこだわらないという選択肢もある


現在漫画、イラスト、同人誌というと幅広い年齢層の読者がいる。
どうしても有名商業誌で活躍したいとかコミケの壁サークルとして君臨したいとかいうわけでなければ、自分と同年代以上を視野に入れて活動するという選択肢もあるということである。
「価値観の多様化」と俗によく言われる。
絵柄も画一的な流行に乗らなくてはならないという義務があるわけでもないので、開き直って読者層を無理に広げようとしないということも視野に入れてもいいのではないかと思う。

3.よほど信用できる人物以外の「絵が古い」は当てにならない場合がある

レビュワーが絶対ではない

私の観測した限りでの話になるので話半分で聞いて欲しいのだが、各種漫画アプリで漫画を読んでいると時々「『絵が古い』厨」とでも呼べそうなレビュワーを見かけるのだ。
勿論いつもではないし、数も多くはない。
が、そういう人に限って割と長口舌でエラソー(私のことやんけ!)だったりする。
で大体そういう人は「絵が古い」と言う。
が、私が見たところそこまで腐すほどでもないと思うことがままあるのだ。
他のレビュワーもおしなべて「古い」と口を揃えるものは私もさすがに古いと感じる。
が、他のレビュワーは1人もそう言ってないのにドヤ顔で「古い」「古い」と連呼する感じで漫画のレビューというより「漫画評論家」とでも名乗ればいいのでは?
と一言言いたくなるタイプがいたりすることがある。

多分そういう人は「流行に敏感なオレ」「鋭い批評眼を持ったオレ」「目の肥えたオレ」と言いたいだけちゃうやろか、と勘繰ったりする。

また逆パターンもある。
私から見ると絵柄古いよね?と思う漫画に誰もそう言わず結構絶賛レビューが並んでいたりすることがある。
なのでもしかして読者は案外懐広い人が多いのでは…とも思う。
みんながみんな絵柄の新旧で選り分けていない可能性もある。

本当に絵が古いわけではなく別の原因がある場合も

以前こんなnoteを書いた。
要は私たちみんな仲良しリスペクトし合って高め合ってるのよ!ってテイで表向き振る舞ってる同人仲間同士が裏ではバチバチ火花散らしてマウント取り合うのが真実の姿、という同人界の先達のありがたいお言葉をいただいた時の想ひ出話である。
これが真実なら(それを裏付けそうな状況証拠的な場面はいくつか記憶にあることは↑のnoteにも書いた)、絵師仲間に言われた「絵が古い」はアドバイスの体を装ったマウント取りの可能性もある。

まあ、絵師のみんながみんなそんなボス猿争いするような気の荒いのばっかとも思わないが、マウントじゃなくても「絵が古い」と言われる可能性もある。
しかし、マウントじゃない場合でもいくつかのパターンが想定される。

  • 本当にアドバイスで言ってくれてる

  • 相手の絵にコンプレックスがあってちょっとした嫉妬心で他下げをしてしまう

  • 本当はそう思ってないのにちょっと嫌なことがあって八つ当たりしてしまう

…などである。
これはレビュワーの発言でも同じである。
ちょっとした虫のいどころとか、実はコンプ拗らせてるとかのとばっちりで言われてしまう可能性はある。
なので「絵柄が古い」という発言を100%額面通り受け取る必要もないのではないかとも思う。
まあ、その辺の判断は自分の感覚との付き合わせによるかなあ。
何せ鵜呑みは違うんじゃないかなと。

なので結局何が言いたいのかというと、

よほどの昔の惰性のまま描いている場合でもない限り、みんな絶対的基準があるわけでもなく本心からでもなくカジュアルに「絵が古い」と相手にぶつけてしまう可能性も多々あるので、言われたからって必要以上に気にしなくてもいいんじゃないかな。

って話であった。

勿論チャレンジ精神と意欲があるなら新しい絵柄を開拓することは素晴らしいと思うのでどんどんやったらいいと思うな。

では、こんな偏屈で辺鄙なnoteを読んでくれる数少ない絵師諸氏の健闘を祈る。(やっぱりエラソー)


せっかく描いたから全部載せるわ

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