綺麗をかくす、うるわしさ。
かつて、モロッコ人の彼氏がいた。
もうずっとずっと昔のはなし。
彼に会うために、モロッコを訪れた。
確かマラケシュ空港で降りて、彼が迎えにきてくれたように記憶している。まだ大学院生だった彼は、中心都市ではないどこか別の町で、友人とルームシェアをしていた。
その町は、観光地で見るような華やかで賑やかな場所ではなかったけど、私がイメージしていた”モロッコ”には近いものだった。どちらかというと、殺風景で閑散としているような、、。
・
朝ごはんを外で食べようと、近所のカフェに。
ウェイトレスをしている若い女性が、私に何かを言った。
笑顔で話しているので、きっとポジティブな言葉だということはわかったが、無論、アラビア語は皆無(いつか勉強したい語学のひとつ)なので、彼に通訳してもらった。
「どうして、綺麗な髪を隠さないの?」
と言っているよ、と。
当時、腰まである黒髪のロングヘアで、ストレートではないけれど、自前のふわふわスタイルが私好みでお気に入りだった。
その髪を褒めてもらえてすごく嬉しかったし、そんな風に褒める彼女の髪も、きっと綺麗に違いないんだろうなと思ったが、彼女は髪1本すら外気には触れさせまいと、スカーフ(ヒジャーブ)をぐるりとまとい、長い髪をしているのか、柔らかい髪質なのか、黒色なのか焦茶色なのかさえ、何ひとつわからなかった。
だけど、スカーフから覗ける彼女の顔が若く、美しいことだけは、はっきりとわかった。
・
イスラムの女性にとって、スカーフを身にまとうことは、男性から自分の身を守るため、コーランにそのように書かれているから、と理解している方は多いのではないだろうか。
それは正しいし、事実だ。
だけど、それが全てではない。
もちろん、イスラムと一言で言っても、国、宗派や家庭によって、考え方や信仰度は、千差万別。
モロッコの町をいくつか訪れたが、都心部でなくても、スカーフを日焼け対策のように、さらりと髪が隠れるか隠れないかくらいに羽織るだけだったり、そもそもスカーフを身につけていないような、若い女性を、何人か見かけた。
普段の生活を送るうえで、自身の信仰心、習慣、TPOに応じて、まとい方のバリエーションを選んだり、嗜んだりしているのだろう。
・
では、普段から髪を隠し続けることを選ぶ女性は、一体何を想い願い、ヴェール(=覆う、隠す)するのか。
いくつか理由を挙げる。
(※本文のコピーが不可でしたので、一部言葉をお借りして紹介します。)
こちらのサイトに書かれている理由を読み、女性として、とても尊い気持ちになった。
多様性が少しずつ見え隠れするモロッコであっても、あえてスカーフで髪を覆い続ける、あの若い女性の想いがひしひしと伝わってきた。
「どうして、綺麗な髪を隠さないの?」
モロッコで出会った、若い彼女のこの一言で、私の中の概念がまるっきり覆されるような、そんな衝撃があった。
大切なものだから、人の目にさらさない。
自分のため、大切な人のために、美しさを守り続ける。
言葉の意味がわかって、嬉しさが、ぐんと増した。
・・
話は少し逸れるが、
「能ある鷹は爪を隠す」
という諺について。
物質的ではないにしろ、
”美しいものを隠す”という意味で近いものがあるように思う。
隠された能力をひけらかすのではなく、大切にしまっておく。
必要な時に、必要に応じて、つかう。
能力は使ってこそ、さらに磨きがかかることは間違いない。
ただ、闇雲に肩書きや資格にこだわって、わざわざ名乗るものでもないのでは、と思う。
それぞれが、生まれながらにして備えていた能力、努力と経験で培った能力というのは、言われなくても、姿、形、表情、仕草、放つオーラ、遣う言葉から、自然と伝わってくるものだから。
・・
「綺麗なものだから、隠す。」
この綺麗な思い出を、
そっと心の片隅に大切にしまっておきたい、そういう想いもある。
だけど、noteが私にとって大事なものだから、
こうしてnoteに記しておきたい、そう思った。
🌷参考資料🌷
・FUJIYO Photography,「女性は宝石」イスラムの女性が髪や肌を隠す本当の理由, 2018-10-06
https://www.f-tsunemi.com/why-islam-women-wear-hijab/
・The Religion Of ISLAM IslamReligion.com, なぜムスリム女性はヴェールをまとうか, 2014-05-05
https://www.islamreligion.com/jp/articles/2770
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?