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熱いワインの夜の記憶

彼女とランチに行く時はおしゃれなイタリアンやフレンチのコースに行く事が多かった。そして何故かいつも、雨の日ばかりだった。服が濡れて少し肌寒い。

ガラス張りのフレンチのお店の窓が、雨に叩かれて、曇り空を写したコンクリートの道が壁紙となり青く光る。氷のようだなと思う。優雅なふりをしてワインを飲む。

サーモンのカルパッチョをゆめちゃんと2人で分けて食べながら、最近観た映画の話をする。「チワワちゃん」「吉原炎上」「その夜の、侍」「南瓜とマヨネーズ」「そこの見て光り輝く」。

私達の映画の話は邦画が多い。そしてそれはドクドクと血が流れていて、途中で観るのを止めると、血管を切られるが如く血の吹き出すような、そんなもの。女性にしかない臓器が熱を持ち、存在を主張しはじめるような作品。エロくて、熱くて、焦がれる。

わたしとゆめちゃんは背筋を伸ばしてワインを飲みながら、ゲスいところにポイントを絞ってキャッキャウフフと笑いながら健康になる。

各映画の本当の大切な所は充分にわかっているから、そこを話すことは無かった。ゲスい話をする事こそ、至上だと少し思っている。

10歳年下のゆめちゃんとのえろゲスい話はいつだって私の酔いを健康的なものに変えてくれる。笑いがとまらない。雨もやまない。ゆめちゃんが「あー!恋したいなあ!コシノヒロコの恋みくじをひきに行きましょうよ!」と言う。若いので雨なんてへっちゃらなのだ。

いいよ、行こう行こう、わたしは既婚だけどね、と笑う。既婚で、もうやめてしまったこと、諦めてしまったことに、ゆめちゃんはどんどん引っ張ってくれる。些細なことにもハッとする。恋みくじなんて。

のどを流れ一瞬にして胃で熱くなるワイン。あの男との夜の出来事を思い出して、少し胸がぎゅっとなる。

お気に入りのフレンチは上の裏通り。また早くいきたいな。スパークリングワインに合うお料理が沢山。
ゆめちゃんは結婚して県外へ。寂しい。頑張っている姿をTwitterやLINEで。

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