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【最近は、こんな感じ】 心を動かすもの、場所、時間。

上海で生活する女の子たちの日常って?
ファッション、メイク、食べもの、よく行くお店。あと、普段考えていること。悩んでいること。そして目標。
そんなあれこれを、同じ目線で聞いてみた。
@mie_shanghai

26 アイリーン

<Profile>
アイリーン
生まれ年:1988年
出身:上海市
職業:ブランドディレクター
小紅書 @艾琳琳ailinnn
Ins @ailinnn

手づくりの素敵なもの、
センスがいいもののスペシャリスト。
お馴染み、アイリーンさんが
今年転職していた。
なぜに? どこに?
ついでにお勧めのカフェと
最近の上海についても教えて。


――ここのカフェ(『白鳥之歌』龍華路2618号)、素敵ですね。
アイリーン 先週オープンしたばかりみたいです。私、この近所に住んでいるんですが、2か月出張に行っていたら街並みがガラッと変わってしまった。隣りにはいい本屋さんもあるんですよ。生活がちょっと変わりました。

――出張は日本に? 今、どんな仕事をしてるんですか?
アイリーン 今年の4月から『D&DEPARTMENT黄山店』で働いています。都市計画や街づくりを考える会社なのですが、地域のデザインを発掘するプロジェクトの中国拠点が安徽省の碧山にあって。そこでブランドディレクターの仕事をしています。

安徽省黄山市の碧山に位置する『D&DEPARTMENT黄山店』

――以前は日本の雑貨や器とかを中国に紹介する仕事をしていましたよね?
アイリーン はい。でも、作品の良さがなかなか伝わらなかったり、コストが高かったりと、いろいろと苦労がありました。いいものがあっても、手にとってもらう場がない。でも、だったらそういう場所をつくればいいのではないかと。そういう場所をつくるには、まずは都市計画なんじゃないかなと思ったんです。そう思ったら、動かないとと思った。私、仕事人間だから(笑)。

――実現させちゃうのがすごい。
アイリーン 以前から日本の各都道府県のいいものや、ロングライフデザインを紹介していたナガオカケンメイさんの理念を尊敬していて。知人のつてで『D&DEPARTMENT』に面接してもらえることになったんです。今のボスもすごい人。安徽大学の副教授で文人なんです。中国の文人は、ビジネスではなく理想の実現を目標にする。そういう人。

“人とのつながりはコーヒーから”

――碧山、まだ行ったことがないのですが、どんな場所ですか?
アイリーン ノマドのライフスタイルに切り替えられる場所。スマホの電源をOFFにしても大丈夫な、癒される場所。道に迷ったら村の人が教えてくれるし、外国人が泊まれる民宿もあります。デザイナーの原研哉さんも来たことがあって、すごく気に入ってくれたみたい。

――ところで、アイリーンさんといえばカフェにもすごく詳しい。私のまわりでもいちばん詳しいと思います。『Ketchup.』の連載も読んでます。
アイリーン 今の仕事を紹介してくれた人ともコーヒーを通じて知り合ったんです。人とのつながりは、コーヒーから始まると思っていて。

――コーヒー好きになったきっかけは何ですか?
アイリーン ハンドドリップやスペシャルティコーヒーを知ったのは日本に留学してからです。それまではインスタントしか飲んだことがなかった。豆の品種、産地、淹れ方によっていろいろな風味があるんだと知って驚きました。一杯のコーヒーを淹れるために、こんなにストイックに頑張っている人たちがいるんだ、と。カフェをやっている人たちの精神を尊敬してしまった。

――上海のカフェ事情は、アイリーンさんから見てどうですか?
アイリーン この前、各国のコーヒーを飲む頻度ランキングというのを見たんですが、ヨーロッパは1日4杯、日本は2杯だったかな。で、中国は全土の平均が何と年4杯だったんです。上海はカフェの軒数が世界トップですが、平均値を取るとほとんどの人がコーヒーを飲んでいないし、本当にいいカフェはまだ少ないと思っています。

――流行りものについても聞きたいです。最近、上海のカフェではシナモンロール、ショップではルームフレグランス系の商品が流行ってますよね。なぜなんでしょう?
アイリーン シナモンロールは北欧ブームから来たのでは? 最近はベーグルのお店も増えてますよね。ルームフレグランスは、家具やインテリアを変えなくても手軽に気分を変えられるから、だと思います。

――あとは、景徳鎮ブーム。
アイリーン デジタルではなく、手でものづくりをしたいという人、手づくりに興味を持つ人が増えたからかも。デザイナーとして活躍していた人がゼロから景徳鎮に移住して陶磁器づくりを始めたり。最近は陶芸だけでなく金属やガラスの作家さんも景徳鎮市内に増えています。私も、ブランドよりもどんな人がつくったかが気になる。今日のこのアクセサリーも、ミャオ族の作家さんがつくったものなんですよ。

下がミャオ族の作家さん作の指輪。上はガラス作家のもの

“自分と向き合う時間が大事”

――では、お休みの日は何をしていますか?
アイリーン 新しい商業施設のプロダクトや空間デザインを見に行ったり。仕事ですね(笑)。あとは、飼っている猫といっしょにいること。出張中は会えないので、写真を見て泣いています。

自宅にて(写真はアイリーンさん提供)

――ファッションもいつもすごいかわいいですけど。
アイリーン そういう質問、されると思ってたんですけど服もコスメも何も考えていないです(笑)。コーヒーの品種や雑貨のブランドは覚えるのに、ファッションは全然わからない。今日着ているのは出張のときに新宿ルミネで買ったもの。多分『KBF』です。

――ルミネ、意外。
アイリーン そうですか(笑)。コスメは『天猫』で。アイシャドウとかは『TOM FORD』です。これも特に何も考えていなくて、同じものを6年くらい使っています。

――先ほど、「スマホの電源をOFFに」という話が出ましたが、そういうことって大事だと思いますか?
アイリーン 自分だけに関心を持つ時間は必要だと思います。スマホをOFFにすると、自分の健康状態、自分が何を求めているのかなどについて、自分自身と会話する時間ができる。

――なるほどー。
アイリーン それと、昨年サーフィンを始めたんです。スポーツも好きじゃなかったし、海に入るのも勇気が必要だったけど、コントロールができない“波”と向き合うと、心のコアの部分で自分で決定して行かなければならない。そこがサーフィンの魅力だと思いました。決まりがないこととどう向き合うか、という。そういう時間は大事だと思います。
(取材日:2023年11月6日 撮影地:『龍華会』※龍華寺エリアにオープンしたばかりの商業施設)


<彼女のお勧め>

『3½ 三又二分之一』(上海市徐匯区太原路305弄1号)
☆おいしい。すばらしい。

『ONIRII COFFEE』(上海市黄浦区長楽路366-1号0
☆コの字のカウンターの真ん中にバリスタがいる。お客さんにすぐ話しかけられる構造なので、コーヒーのおいしさに自信がある証拠。

『Coffee Spot』(上海市静安区北京西路838弄4号)
☆エスプレッソ、ラテ、シグネチャーコーヒーの3種を10分以内で提供するという、世界大会と同じ規格で提供しているカフェ。


text
萩原晶子
フリーライター。上海にて2007年頃よりガイドブック、ファッション誌、機内誌、ウェブなどの記事を手がけている。
カルチャー誌『Ketchup.』(上海と東京で販売)など。
ins:@hagiwara_akiko_
微博:Akiko06

photo
阿部ちづる
2006年にフォトグラファーとして独立。ファッション誌、ビューティー誌、週刊誌、写真誌等のグラビア、ポートレート写真を撮影。アイドルグループやグラビアモデルからのアーティスト写真撮影で指名されることも多く、女の子の新鮮な表情を切り取る。
佐々木希『ささきき』(集英社)、武田玲奈『Rena』(集英社)ほか多数。
ins:@chizuru0821
https://lov-able.com/photographer/chizuru-abe


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