見出し画像

LGBTQ+コミュニティとカミングアウトについて

なぜ”知る”ことが重要か

近年、「LGBT」や「LGBTQ+」という単語をよく聞くようになりました。

2020年の電通ダイバーシティ・ラボの調査によると、LGBTQ+層に該当すると回答した人は8.9%です。各民間団体によって結果は異なりますが、日本国内のLGBTQ+の割合は約8%から10%といわれています。また同じ2020年調査によると、「LGBT」という言葉の浸透率は80.1%といわれ、前回の2018年調査から11.6ptの上昇になりました。さらに2018年の調査では76%の人が「LGBT について正しい理解をしたい」という意向を持っています。しかしながら、「LGBT」以降の「Q+」については、認知度はまだ低く約80%の人は知らないと回答しています。

LGBTQ+コミュニティの方々は日々、見えないところで様々な問題に直面しています。正しく”知る”ことで私たちもサポートをする第一歩を踏み出すことができます。今回、基礎的な知識とともに日本の現状、LGBTQ+コミュニティが直面する問題について掘り下げていきます。

用語と定義

まず、基本的な用語について、LGBTとLGBTQ+の違いから説明します。両方ともセクシュアルマイノリティの総称ではありますが、LGBTのみだとそれら4つ以外にも多様なセクシュアルマイノリティがいることが認識されないことが多いため、近年はLGBTQ+という表現を使うことが多いです。また、LGBTQ+という単語は「人」を示すものですが、すべての人が持つ「属性」や「特徴」を示すSOGIという単語も近年広がりつつあります。SOGIにはすべての人が含まれる=みんなが当事者だといわれています。
以下が性の属性や特徴についての基本的な用語の定義です。

画像1
次に上記の単語に関連している重要な単語です。

画像2

日本の現状

※内容注意:差別発言について触れます。

初めに述べたように、日本にもLGBTQ+コミュニティの方が一定程度いるといわれています。しかし、2008年に国連から性自認・性的指向に基づく差別撤廃に関する勧告を受けているにもかかわらず、LGBTQ+に関する差別禁止の法律は未だ整備されていません。また、2020東京オリンピックまでの導入が目指されていたLGBT理解増進法は最終的に廃案となりました。2021年現在、G7で法整備が進んでいないのは日本だけです。

2019年、国連での長年にわたる議論を経て「BORN FREE AND EQUAL」という国際文章の改訂版が取りまとめられました。LGBTの基本的人権を守る道しるべとなるこの文章には、最低限、国がしなければならない義務として「差別の禁止・対処」が具体的に示されています。差別を予防するための意識啓発のみならず、性的指向や性自認などに基づく差別を法律で明確に禁止することが必要だとしているのです。 

出典
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60c00c86e4b0b449dc32ed21?utm_hp_ref=jp-lgbtq (2021/09/02)

国際的にも平等に向けた取り組みが主流となっているにもかかわらず、日本国内では「何も変わらない」状態が続いています。LGBTQ+コミュニティの方々は日常的に偏見や差別の対象にされています。LGBT関連法案が議論となった際、一部の自民党議員が「道徳的にLGBTは認められない」「LGBTは種の保存に反する」など差別的と捉えられる発言があったことも話題になりました。悲しいことに、LGBTQ+コミュニティの方々は日々このような発言に直面するだけでなく、いじめや誹謗中傷にも遭います。LGBTQ+の自殺率が高いことも目を背けてはいけない事実です。

また、LGBTQ+コミュニティが直面する問題には「アウティング」と呼ばれるものがあります。これには、「カミングアウト」が関連しています。LGBTQ+コミュニティの方が自分のセクシュアリティについて考え、自覚し、それを他人に伝え理解を得ようとする行為をさしますが、これを受け取る方は勝手に他人にカミングアウトされたこと、セクシュアルマイノリティであることを話す「アウティング」は、絶対に行われてはいけません。しかし、2015年にアウティングによって男子学生が自殺してしまうという事件がありました(一橋アウティング事件)。この事件は決して珍しいものではなく、多くのLGBTQ+コミュニティの方が同じようにアウティングの被害を受けています。

確かに、東京都・茨城県・三重県でLGBTQ+の差別禁止条例が施行され(秋田県では来年4月施行予定)、100以上の自治体で同性パートナーシップ制度が広まっています。三重県では、アウティングの禁止についても盛り込まれています・そのため、日本にも差別禁止に向けて様々な取り組みがなされていることも事実です。しかし、都道府県自治体の制度の話だけではなく、一人の人間としてどうLGBTQ+コミュニティをサポートするかも重要ではないでしょうか。

What We Can Do

私たちはどうLGBTQ+コミュニティをサポートできるのでしょうか?
一番簡単な方法はLGBTQ+コミュニティのアライになることです。

アライ(同盟者) ストレート・シスジェンダーの中でも、LGBTQ+コミュニティを支持、支援、サポートをして、SOGIに関係なくすべての人が平等であるべきだと考えている者

2020年の電通のLGBTQ+に関する調査で、課題意識が強く積極的に支援をする「アクティブサポーター層」が29.4%がいるとされており、LGBTQを知ってはいるものの自分事化できていない「知識ある他人事層」が34.1%います。この「知識ある他人事層」が「アクティブサポーター層」になれば、すべての人のSOGIが尊重される世の中に向かって一歩前進となるのではないでしょうか。

では、どうすればアライとなれるのか。
1.正しい知識を身につける 信頼できるソースを使い、日々自分の中の知識をアップデートすること、自分が差別的な言動をしないように注意すること
2.積極的に声を上げる 差別的な言動をする人に対して声を上げ、なぜ差別がいけないのか教え、すべての人のSOGIが尊重されるべきと声を上げること
3.当事者の声を聞く LGBTQ+コミュニティだけでなく、経験やアイデンティティは一人ひとり異なります。偏見を持たずに耳を傾け、話を聞き、理解し、尊重すること
先にも述べたように、LGBTQ+コミュニティのアライになることがすべての人のSOGIが尊重される世の中への第一歩です。

 まとめ

ここまでご覧いただき、ありがとうございます。

この記事では、LGBTQ+やSOGIなど、基本的な知識についてまとめてきましたが、すべての人のSOGIが尊重される世の中になるためには、正しく”知り”、アライになること、そして私たち全員が日々知識をアップデートしていくことが重要です。もちろん、すべての人のSOGIが尊重される世の中だけではなく、法整備もなされなければなりません。「何も変わらない」という日本の現状が変わるためにも、少しでも”知る”ことが必要なのではないでしょうか?

参考文献
・Huffpost -アムネスティ日本「LGBT差別禁止が必要な4つの理由」 
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60c00c86e4b0b449dc32ed21?utm_hp_ref=jp-lgbtq (2021/09/03)
・JobRainbow ‐JobRainbow編集部「【当事者監修】LGBTとは?【2021年度最新版】」(2021/09/03)
https://jobrainbow.jp/magazine/what-is-lgbt
・JobRainbow -JobRainbow編集部「カミングアウトとは?【LGBT カミングアウトストーリーまとめ】」(2021/09/03)
https://jobrainbow.jp/magazine/comingoutstory 
・Pride Japan 「秋田県がLGBTQ差別禁止条例を制定へ、来年4月の施行を目指します」(2021/09/03)
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/news/2021/7/30.html 
・Pride House東京「『差別禁止法』に関する世界各国の法整備」(2021/09/03)
https://pridehouse.jp/world/legislation/distinction/ 
・Jiji.com 「「アウティング」禁止条例成立 都道府県初、4月施行―三重県議会」(2021/09/03)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021032300166&g=pol
・Huffpost -坪池順「LGBTQ非当事者、「知っているけど自分事化できない」が最多 電通がマジョリティ層を分析」(2021/09/03)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60741020c5b6a74b3bde325a  
・JobRainbow -JobRainbow編集部 「LGBTの割合がバラつく理由【13人に1人? 100人に1人?】」(2021/09/16)
https://jobrainbow.jp/magazine/lgbt-percentage 

執筆:りな

ここから先は

53字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?