見出し画像

32歳、ラグビーを始める 3

以下の記事の続きです

練習初っ端から禅を感じる

不惑チームに交り、練習をスタートした。
最初はダイナミックストレッチだ。動きながら足上げをしたり、四股を踏んだりしながらグランドを往復していく。一つ一つの動きで自分の体が悲鳴をあげる。普段伸ばしていない筋肉の存在に気づく。数ヶ月放置した自転車にkure556を足していくような作業だ。自分の体がだんだんと動きがスムーズになっていく。
自分の体に神経を集中させる感覚、「禅してるな」と満悦感が充実する。

その後は、グリッドで仕切った空間でボールを動かす練習だ。すれ違う対面の人にボールをパスしたり、「ガット」という、ボールを相手に渡す動作を行ったりする。手先の感覚は、10年前ラグビーをやっていた頃そのままだった。筋力は衰えていても、神経的なところは衰えていないことが分かり嬉しい。
そうこうしながら、体を動かしていると、足元の何か引っかかる感覚に気づく。10年ぶりに履いたスパイクの底がつま先側からぱっくりと開いてパカパカしてしまっている状態になっていた。おそらく10年の時を経て加水分解が進んでしまったのだろう。急いで倉庫に戻って、スパイクを緑色のビニールテープでぐるぐる巻きにして応急処置した。(ビニールテープはなぜ緑色が多いのだろう?)

コンタクト練習の果てに・・・

最後にコンタクト練習に移った。コンタクトといっても生身の人間でやるのではなく、ダミーバッグを使った練習だ。

まずはボールを持ちながらヒットする練習である。
恐る恐る、パワーフットを1歩踏み出し、ダミーに当たる。ダミーからパコッという良い音が鳴る。自分が強くなったような気がした。

その次はオーバー練習だ。
倒れている人に覆いかぶさったように構えられているダミーバッグを、倒れている人の向こう側に持っていく動きである。
ヒットで爽快感を味わってしまった私は、前のめりに練習に参加した。
少ししゃがんだような体勢から一気に力を込めて、肩でダミーバッグに当たる。その瞬間、グギッ!といった音が鳴ったような気がし、腰に強烈な痛みが走った。いわゆるギックリ腰である。私はグランドから立ち上がれなくなってしまったのだった・・・
久しぶりの運動には十二分に気をつけなきゃいけないと頭では思っていたのに、楽しい気分に乗らされていまい、私は調子に乗ってしまった。

32歳で始めるラグビーの多難さを初日に味わってしまったが、それでも楽しかった気持ちは忘れられず、腰の痛さが残りながらも私は翌週の練習に参加したのだった。

(続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?