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ミッフィと朝の散歩に出ると2軒先に住んでいるジーナがごみを出すところだった。ジーナは2匹のグレートピレニー(ロジャーとメイプル)を飼っていて、いつものんびりしている2匹を見ると、なんともほのぼのした気分になるのだった。

ここ数日、いつも庭でのんびり寝ているメイプルを見かけなかったので、気になって尋ねた。

「メイプルは虹の橋を渡ったの。突然だった。」と言うと、みるみる彼女の顔が崩れていった。

メイプルとロジャーが一緒に散歩しているのを見ると、その大きさにびっくりする。まるで熊のように大きい。けれど性格はおとなしくて、おっとりしていてみんながGentle Giantと言っていた。メイプルは女の子で、雪が大好きで、我が家の雪かきでできた雪の壁を崩して遊ぶのが好きだった。

「今はただただ辛いの。ずっと一緒だったから。やっとこうして人に話せるようになったの。言葉にするのも悲しくて。。。」

ジーナは一息ついて、どれだけメイプルが家族に笑顔と喜びを与えてくれていたか、人生のさまざまな不条理な出来事を受け入れられるよう、寄り添ってくれていたか、遠くを見ながら話してくれた。

「NYがコロナで最悪の時、メイプルとロジャーを連れて家族4人で散歩によく出かけたの。家族以外とは誰とも会えなかったからね。でも私にとってあの時が最高に幸せだった。愛するものと共にいることの幸せをしみじみ味わった。。私たちはみんな一緒にいて生きている。。とても当たり前だけど特別。毎日がSimple Joyだった。。」

衝撃だった。なぜなら私も全く同じことを当時感じていたから。その時はまだミッフィは我が家にはいなかったけれど、家族で気晴らしの散歩に行ったり、一緒にパンを焼いたり、とにかく愛するものと共に生きていることが、これほどまでに喜びを与えてくれるとは驚くほどだった。完璧な幸せ、これ以上必要なものはないと思った。

Simple Joy その言葉を選んだことにとても納得したように、大きく頷いたジーナは、「聞いてくれてありがとう、人にこうやって話すことがこんなにも癒されるとは想像しなかったわ、しばらくは悲しいのは仕方ないよね。」と自分に言い聞かせるように言った。

私も悲しかった。彼女の気持ちが痛々しいくらいに分かる。

まだ私は一度もペットロスを経験したことがない。もしミッフィが虹の橋を渡ったら。。と思うだけで涙が出る。小さな暖かいモフモフを抱っこすると、嫌な気分が溶けていく。元気に飛びついてくる姿を毎朝見て、笑顔になる。。まだまだ私たち一緒にいようね、って思う。

なんとなく空を見上げてメイプルの形をした雲を探したけれど、夕空にちぎれ雲が浮かんでいた。失うことは悲しい。愛するものは特別に。


Dogs are not our whole life, but they make our lives whole.

Roger Caras



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