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ひとり社長の妊活と不妊治療

23年4月に第一子を出産、はじめての育児に奮闘しています。私が37歳で入籍し、妊活・不妊治療クリニックへの通院を経て、出産をしたため産後に「妊活や不妊治療について体験を教えてほしい」という声をいただく機会が増えました。

息子、生後3ヶ月くらいの時期

5組に1組が不妊の検査や治療を受ける

なお日本では、不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は約5.5組に1組(※1)、誕生する赤ちゃんの16.1人に1人(※2)が不妊治療により生まれてきているとのこと。
※1出典:2015 年国立社会保障・人口問題研究所「第 15 回出生動向基本調査(夫婦調査)」
※2出典:2018年日本産科婦人科学会

30歳を超えていたらコンディションを確認

そして、今すぐ妊娠を考えていなくても、妊娠できる状態なのか(どうすれば妊娠できるのか)を知っておくことが大切だと思います。状態によっては妊娠できるコンディションにするために時間がかかる場合もあり早い段階で自身の状態を知っておくのはプラスになると感じます。

画像出典:BELTA「年齢別の妊娠確率」
35歳から自然妊娠の確率はグッと下がる

なお、私は(入籍時に自身が35歳を超えていため)入籍後すぐにコンディションを把握しようと不妊治療専門のクリニックにいき一通りの検査しました。パートナーにも説明し当事者意識をもってもらい夫婦ともに検査を実施。検査の過程で、妻である私のコンディションが以下であることがわかりました。
・子宮に一部エラーがあり通常と比較すると、妊娠のチャンスが50%(通常を100とした場合)であること
・だが自然妊娠は可能であること
・適切なタイミングで回数を重ねても妊娠しない場合は子宮以外にエラーの可能性があること
結果、検査して3ヶ月目に自然妊娠。無事に第一子を23年4月に出産。

出産1週間前くらい


とはいえ私自身も、パートナーと子供をもつことを検討しはじめた時は、妊活と不妊治療の違い(※)もいまいちわかっていませんでした。不妊治療では何をするのか、そもそも妊娠できる状態とは何を指すのかほとんど把握できていなかったと感じます。そこで、妊活と不妊治療という一個人の体験をまとめてみたいと思います。

妊活と不妊治療の違い

妊活とは、当事者が自分たちのペースで行うもの。通常は医療が介入しない段階を指します。不妊治療は、医療的なサポートが必要な段階を指すため妊活の延長として不妊治療が発生するというイメージです。

不妊症の定義

一般的には、避妊をせず性生活を続けても1年以上妊娠しない場合を不妊症と定義される。以前は2年が一般的であったが晩婚化などの社会的背景から、現在は1年(日本産科婦人科学会)とされています。


このナレッジが役に立つかもしれない方

  • 妊活や不妊治療を検討しているもののプロセスや予算について具体的に把握できていない方

  • 30歳を超え仕事をつづけながらも子供持ちたいと考えている方

  • 妊活や不妊治療について調べてみたものの結局よくわからなくなっている方

  • 妊活やそこから続く育児について相談できる環境があまりない方

※なお、以下はあくまで一個人の体験談となります。不妊治療の個別具体的な方法については、医療機関にてご相談ください。

「妊活」の前にやっておきたい大事なこと

当事者としてひとつ痛感したのは、(妊活や不妊治療に関する)情報収集も必要ですが、その前にパートナーと以下をすり合わせしておくことがとても大事だということ。(逆に以下を把握できていないと、心身疲弊したりパートナーとの関係がギクシャクしてしまう可能性があります。)

1優先事項は何か

妊活や不妊治療は、妊娠することを目指すもののどのような結果になるかは誰にもわかりません。そもそも自分たちが一番優先したいものは何かを知っておくことで、(不妊治療を進めていく過程で)どの選択肢まで広げることが可能なのかが判断できます。
・(女性ならば)自分の体で妊娠/出産という経験をしたいのか
・自分の手で子供を育てることを経験したいのか
・今のパートナーの子供を産みたいのか
・今のパートナーと子育てを経験したいのか
・子育てという経験を通してパートナーと絆を深めたいのか

「妊娠、出産、育児」の中で自分たちは何をもっとも欲しているのか解像度をあげて把握しておくことが大切です。

例えば「自分の手で子供を育てること」を最も欲しているのならば、自分たちの体では妊娠出産が難しいという結果にぶつかった際、代理人出産・養子縁組・里親といったところまで検討する余地ができるかもしれません。
(実際にはどの選択をするのかは葛藤しながら模索するしかないものの、ここまでは検討できる、ここから先はそもそも選択しないと線引きができていると少し楽かなとは思います)

私の場合は、「夫(自分のパートナー)と人生を歩むこと」がもっとも大事なことでした。この夫となら子育てという未知のことでも乗り越えることができる。彼と一緒に取り組むことでより人生が豊かになると感じていました。不妊治療にトライするものの妊娠という結果に至らなくても彼と人生を歩んでいけるならそれはそれでいいのかと思っていました。

2予算と時間はどのくらいかけるのか

後述しますが不妊治療に取り組む場合、不妊の原因により治療方法が変わってきます。大きくは一般不妊治療(タイミング法・人工授精)と高度生殖医療(体外受精・顕微授精)の2つにわかれます。1回の受診で半日かかることもあり、検査だけでも数万円かかることもあります。さらに人工授精・体外受精・顕微授精に取り組む場合、自費診療となり経済的な負担は大きくなっていきます。(不育症※の場合はまた異なる治療が必要になります。)治療が数年にわたることもあり心身に負担がかかります。

※不妊治療の助成制度はあるものの費用負担は軽くはありません。
参考:不妊・不育の助成金について

※不育症とは
妊娠後流産、死産を2回以上繰り返す状態を指す。ただ不育症についてはまだ分かっていないことが多く原因が特定できないことも多い。毎年妊娠する人のうち、数万人が不育症の可能性があると考えられている。詳細はこちら

3いつから妊活/不妊治療をはじめるのか

不妊治療をスタートすると、検査の段階から指定された曜日にクリニックに通う必要があったり、検査の待ち時間もかかり半日ちかく病院に滞在することもあります。また不妊治療をスタートすると仕事よりも治療を最優先する必要があり、パートナーの協力も必要不可欠です。普段よりもスケジュール調整が厳しくなるため、いつからスタートするべきかは夫婦間で検討するほうがよいです。

4誰にどのタイミングで不妊治療を開示するのか

不妊治療を進めていく過程では、通院の関係で仕事を休む必要がでてきます。「明日の朝、病院にきてください」といった急なスケジュール調整も発生する可能性があります。体調は悪くないのに欠勤、早退、遅刻といった状況が発生するため、チームメンバーや上長へ治療の理解と協力が得ることがとても大事です。妊活から不妊治療は、「優先順位・予算・スタート時期・仕事場における協力者」などを調整しながらすすめていく必要があります。

不妊治療の具体的なプロセス

私も入籍前は、不妊治療ついてはなんとなく言語として知ってはいたものの実際にはどんな検査を実施し、どんな結果になったら、どのような順番で治療をすすめていくのかは把握できていませんでした。不妊治療の流れはシンプルに「検査(不妊の原因がどこにあるのか、可能性を特定していく)」「治療」の2ステップです。治療方法は主に4種類になりますが、不妊の原因によりどの方法が選択できるのか異なります。

検査について

不妊治療をスタートする前に、クリニックではまずはじめに妊娠できるコンディションかどうかを確認するために検査を行います。女性の方が検査項目が多く、人間ドックのようにその日にすべての検査ができるわけではありません。また生理の周期をベースに実施されていくためひとつの検査がうまくできなかった場合、次回取り組めるのは1ヶ月後というケースもあります。
不妊の原因は男女に可能性があるため、最初の段階で男性側の検査もしておくことが大事です。(参考記事:先端医療「不妊治療の流れと種類」

・男性の検査

男性はシンプルに精子の状態と性機能のチェックになります。1精子は作られているのか。その数や質はどうなのか(造精機能障害はないか)2勃起や射精が正常か(性機能障害がはないか)この2点のみです。

・女性の検査

女性は以下のように卵子や子宮などチェックする項目が男性よりも多くなります。

1排卵のコンディション :卵子を順調に発育して排卵する卵巣機能に問題はないか。

2卵管のコンディション :卵子が精子と出会う道に問題はないか・クラミジア感染症などにより卵子が精子と出合う卵管が詰まったり、子宮内膜症などで卵管周囲に癒着が起き、卵管が狭くなったり閉塞していると排卵されても精子と出会うことができない。

3子宮の中のコンディション :子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどはないか。子宮内膣の変化が原因で受精卵が着床しにく位状態にはなっていないか。

4子宮の入り口のコンディション:頸管、子宮の入り口の粘液量が少ないと射精された精子が卵子にたどり着きにくくなる。

5その他 :甲状腺の機能異常など、何らかの免疫異常などで精子の通過や受精を妨げていないか。
このように男女共に検査しどの治療なら妊娠する可能性が高いのかを特定していきます。

大枠の治療方法について

主に以下4つになります。検査の結果から可能性が高い方法から取り組んでいきます。

1タイミング法

妊娠しやすいと言われる排卵日の2日前から排卵日までに性交のタイミングを合わせる方法。検査の結果、自然に妊娠できる状態だと判断された場合は、まずこの方法に取り組みます。

2人工授精

動きのよい精子を取り出し子宮内に直接注入する方法。検査の過程で、自然に精子と卵子が出会うことが難しい、またはタイミング法を複数回重ねても妊娠に至らない場合は人工授精に取り組みます。1と2に取り組む過程で薬物療法(排卵誘発薬で卵巣を刺激し、排卵を起こさせる)や外科治療(子宮内膜症などに対する外科治療)を行うこともあります。

3体外受精

卵子と精子を培養液の中で受精し受精卵を子宮に戻す方法。

4顕微授精

精子を卵子の中に細い針で注入する方法。体外受精では受精が起こらない可能性が高い場合に行う。

治療法は大きく上記4つになるものの、機械的にこの方法と決め打ちできないこともあります。また気持ちの葛藤もあるため、相性のいい担当医を見つけておくことも大切です。お互いの体のコンディションや費用や夫婦の年齢などを考慮し、どんな治療を実施するのかパートナーと話し合える環境が最も大切だと思います。

パートナーとどんな人生を歩みたいのか

妊活と不妊治療の大枠について伝えしましたが、当たり前ですが子供がいる/いないかだけで人生の質は決定しません。(妊娠や育児によって人生のエンタメは増える可能性はありますが)ただ、30代で妊娠を検討するなら不妊治療は真摯に検討した方がよいですし、信頼できる専門医に出会うことがとても大切だと感じます。自分はどんな人生を送りたいのか、パートナーとどんな毎日を過ごしたいのか。その上で妊娠(とそこから続く出産育児)を真剣に考え、自分達が幸せになる選択する姿勢が大事なのかなと思っています。
私の体験があなたにとって今できるベストな選択の一助になれば嬉しく思います。

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